直径30〜40センチの丸または三角形をした、中に様々なフィリングが入ったオセチアのピローグは、北オセチアで宗教的または国民の祝日に焼かれる。慶事があると、主婦たちは3つのピローグを用意する。それは神、太陽、そして大地を象徴している。一方、葬儀の食卓用では2種類しか焼かない。死者はもう太陽を見ることはないからである。
もっとも一般的なオセチアのピローグは、ひき肉の入ったフィジン、ビーツの入ったツァハラジン、チーズの入ったウァリバフ、ジャガイモの入ったカルトフジンである。
油を引かないフライパンで焼かれるフィリング入りのパン、チュドゥはダゲスタン、イングーシ、チェチェン、カバルダ・バルカルでよく食べられる。チュドゥは円形か半円形をしている。生地はイースト菌を使うものと使わないものがあり、またアイランという乳酸菌飲料が加えられることもある。
チュドゥには肉入りもあり、もっとも一般的なものは羊肉か牛肉を入れたもの(エトチュドゥ)、カッテージチーズを入れたもの(ビシラク・チュドゥ)、カボチャを入れたもの(クアバク・チュドゥ)、サワーミルクを入れたもの(チー・チュドゥ)、加えて葉物野菜を入れたものには多くの種類があり、ネギ、イラクサ、ハマアカザ、スイバなどが使われている。
太陽の形をしたジューシーなパンは、カラチャイ・チェルケス、カバルダ・バルカル共和国の食事に欠かせないものである。バルカルのフィチンは薄くて平たく、カラチャイではたっぷりのフィリングを入れてふわふわに焼く。かつては宗教的な祝日に焼かれていたが、現在は家族の食卓にものぼる。
クラシカルなチーズ入りのフィチンはフムジュ・フィチンと呼ばれるものだが、肉入り、キャベツ入り、じゃがいも入りに劣らずおいしい。
トウモロコシの粉または小麦粉にケフィールまたはアイランを混ぜて作るこのパンは、チェチェンとイングーシの伝統料理である。その昔、子どもが初めて歩き出したときに、ちょうど1歳くらいの子どもの手の平から肘くらいまでの大きさのヒンガルシを焼き、親戚や隣人にふるまうという習慣があった。
ヒンガルシはカボチャとタマネギのフィリングを入れて作る。タマネギは苦みがあるものの、かなり甘めに作られ、香りのよいタイムが加えられる。
ロシアのチェブレキといえば、鉄道駅や地下鉄の駅周辺、チェブレキ・カフェなどで買うことができるとても一般的なストリート・フードである。しかし、この料理は昔からカフカスの多くの地域で焼かれてきたものだ。
イングーシではチェブレキを作るのに、新鮮な羊肉を用意し、そこにたっぷりのハーブ(パセリまたはコリアンダー)、そして炊いた米を加える。またお米を入れる代わりに熟したトマトを入れるチェブレキもある。
本物のカフカスのチェブレキは溶かした羊の脂身を使って、深いフライパンで焼かれる。チェブレキには、ケフィール、アイラン、牛乳など、冷たい乳製品がよく合う。
トウモロコシのピローグまたはタマネギ入りのパン、ミチャリは、北カフカスに住むテュルク系の民族、クムク人の伝統料理である。直径25センチの丸いピローグで、トウモロコシの粉にソーダと大量のケフィールを入れて作る。ピローグは高さのある、プツプツと穴の開いたもので、煮込んだタマネギが入っていることから、お腹をたっぷり満たしてくれるものになる。
地元には、ピローグの中のタマネギの量について、「ミチャリの半分と丸1個のタマネギは男性の食べる標準量だ」という表現がある。
これは、ダゲスタン南部に暮らすレズギ人が作るお祝いの肉入りピローグである。ピローグには、羊肉、ジャガイモ、タマネギ、クルミ、そしてスパイスが入っている。フィリングと薄い生地が交互に挟まれたもので、とても腹持ちのよいピローグになっている。一般的に寒い季節にかまどで焼かれる。
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