簡単に食べられないチュクチの主要な料理

 その料理は買うことも売ることもできないが、地元の人がみんな知っているものである。その料理とは、マンタクと呼ばれるクジラのサーロ(脂身)である。

 「サーロ」と名前のついた食べものにガッカリさせられることはないというのは正しいことではない。北方の先住民族には、過激とも言っても過言ではないかなり変わった料理がある(コパルヒンを食べると死ぬことさえ可能である)。チュコトカ半島のサーロはかなり変わったもので、それはクジラの脂身である。見た目もかなりエキゾチックだ。

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マンタクは一体なんなのだろうか?

 クジラのサーロ、あるいはマンタク(ときにマクタクと表記されていることもある)は、チュコトカ半島の先住民族であるチュクチやエスキモーの伝統料理で、クジラの本皮を皮下脂肪のついた状態で小さく切ったものである。生のまま食べるという人もいるが、まず冷凍させるという人も、煮るという人もいる。

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 しかし、極圏で一般的な食べ方はしょう油に漬け込むというものである。しょう油の故郷はチュコトカからはかなり離れているが、ソ連崩壊後、この地域にしょう油が大々的に運ばれるようになり、マンタクにはしょう油が一番合うということが分かったのである。一方、燻製のマンタクというものはあまり見られない。ツンドラ地帯では木は黄金のように貴重なものだからである。

なぜこれを食べるのか? 

 チュコトカの先住民たちは、世界でも数少ない、クジラの捕獲が認められている民族の一つである。商業的な目的を持つ捕獲は許されないが、自分たちで食するのは良いとされている。とはいえ、もちろん、割当量は決められている。

 というのも、この辺鄙な地域の生活はきわめて厳しいもので、半島には街は三つしかなく(一番大きなのはアナディル、人口1万5000人)、それにチュクチ海とベーリング海の沿岸に点在する居住区がいくつかあるだけだ。あとは、数百キロにわたって熊が生息しているツンドラが広がる。店はあるが、食料品は1年に数回しか運ばれてこないため、クジラなどの海の動物の肉はチュコトカで手に入る唯一の新鮮な肉なのである。歴史的にそのような状況となったのである。鶏肉や牛肉も食べられているが、これらは冷凍されて運ばれてくるもので、中央ロシアで買うより3〜4倍高い。

 地元の人々はマンタクはとても体に良いと考えている。何より、脂身にはビタミンCとD(北方の住民たちに不足しているもの)が豊富に含まれているからだ。そこで、主に前菜としてかなり好んで食べられている。

どんな味?

 味は調理方法によって異なる。人にはそれぞれのおいしいもののイメージがある。よいマンタクはピンク色をしている。脂身の色が黄身がかっているということは、鮮度が低い可能性が高い。しょう油に漬けたマンタクはしょう油味のチップスを思わせる味で、ただそれを柔らかくしたような感じである。

 それ以外の調理法は、好みが大きく分かれるところである。ブロガーのドミトリー・ペトロフさんは、「わたしが食べたのは塩漬けのものか、乾燥したものか、よく分かりませんでした。とても硬くて、なかなか切れませんでした。噛むのも大変で、ほとんどカリカリの状態で、油が多い。加えて、筋が多く、なかなか嚙み切れません。出された小さな一切れをかなり時間をかけてなんとか噛んで飲み込みましたが、おかわりは欲しいと思いませんでした」と打ち明けている

なぜ買えないのか?

 漁業者らがクジラを捕まえたときには、それを岸で切り分け、地元の人々と分け合う。誰もが好きなだけクジラの肉とマンタクを持ち帰ってよい。クジラのどの部分も無駄にしてはいけないのである。皮はすぐに薄く切り、冷凍庫に入れる。冷蔵庫はクジラを保存するには温かすぎ、腐らせてしまう。冷凍したものは、食べたい日に調理する。 

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 重要なことは、クジラの肉を売ることは禁じられているということである。クジラの肉は地元でもっとも主要でもっとも有名な料理であるにもかかわらず、どの店にも、レストランにも売っていない。食べることができるとすれば、それは地元の人々がご馳走してくれるときだけである。そのためには地元の人々を訪れるしかない。そんなわけで、皆さん、ぜひ、チュコトカへ

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