四旬節の最後の木曜日、チースティ・チェトヴェルク(清廉な木曜日)、にはロシアでは誰もが卵を色付けし、クリーチを焼く。土曜日になると、信者たちは教会に集まり、それらを祝福してもらい、ろうそくを灯す。土曜の夜には、聖なる十字行が行われ、その後に皆がお互いにお祝いを言いあい、おまつりが始まる。
わたしがまだ少女だったころは、いつも祖母の生まれ故郷であるルシノヴォ村を訪ねた。だからわたしは長い間、復活大祭というのは、旅行に行って、親戚に会い、ピクニックをすることだと思い込んでいた。そこで、お互いにクリーチの食べ比べ、味の秘密を探ろうとしたものだ。覚えているのは、祖母が果物の砂糖漬けを作っていたことだ。と言うのも、1980年代には、それを店で買うことはなかなか出来なかったからである。そしてその砂糖漬けが祖母のパンを特別なものにした。
わたしにとって、正しいクリーチを作ることは特別なセレモニーなようなものである。クリーチ作りには丸1日かかるのが普通で、場合によってはそれ以上になる。自分の家族に何か特別なものを出したいときや、友人達を驚かせたり、自分の腕を自慢したいときに作る。面白いのは、家族にクリーチを作るときは決まった作り方をしないということ。バター、卵、砂糖やスパイスの量をいろいろ変えてみるのだ。忘れてはならないのは、バランスである。甘くてしっとりしているがしつこかったり、あるいは、軽くてふわふわしてるが味が薄いといった風に。
イタリア人と結婚して、彼を驚かせるのは大変である。なぜなら、彼はクリーチをイタリアのパネトーネと比べるからだ。しかし、わたしはいつも、クリーチはまったく違うものだと言っている。クリーチは、もっと、固くて、しっとりしていて、味も濃い。そんなに軽くて口の中で溶けるようなものでないのだ。
ここに紹介するのは、歴史家ウィリアム・パフリョプキンが考案した伝統的なレシピである。わたしはこれをイタリア人家族に試して成功した。大切なのは、愛情とポジティヴな気持ちを込めて作ることである。
材料:
- 小麦粉 1キロ
- イースト 50グラム(生)または9グラム(ドライ)
- 牛乳 1または1.5カップ
- 卵黄 10個分
- 卵白 3個分
- 砂糖 250g
- バター 200g
- レーズン 100g
- コニャック 25g
- フルーツの砂糖漬け 25g
- レモンの皮 大さじ3
- ナツメグ 小さじ1/2
- サフラン抽出物 小さじ1
- バニラシュガー 小さじ4
- 塩 1g
作り方:
1. 予備発酵する。小麦粉100gに沸騰した牛乳1/2カップを入れ、木のスプーンで素早く混ぜ合わせ、柔らかくする。
2. イーストをぬるめの牛乳1/2に入れて溶かし、10分ほど置いておく。
3. 10分後
4. 1と2をボウルで合わせる。ボウルにふきんをかぶせ、1時間以上置く。
5. 1時間半後のイースト液
6. 卵液を用意する。卵黄、卵白、砂糖、塩を合わせ、白っぽくなるまで混ぜる。
7. 卵液の半量をイースト液に混ぜる。
8. 小麦粉250gを加え、なめらかになるまで生地をこね(ミキサーを使ってもよい)、1時間休ませる。
9. 1時間後の生地
10. 残りの卵液を加え、小麦粉500gを加える。
11. 生地が手にくっつかなくなるまでこねる。ミキサーを使った場合は15分ほどかかる。
12. 室温に戻したバターを少量ずつ生地に混ぜていく。
13. サフラン抽出物がなければドライサフランをスプーン1杯の水に浸す。
14. スパイスとコニャックを加える。
15. さらに15分こね、生地をふくらませる。
16. 生地が2倍くらいの大きさになったら、フルーツの砂糖漬けやレーズンを加える。
17. さらにふくらませる。
18. 生地を2等分し、型に入れ(16センチ)、ふきんで覆い、あたたかい場所で型の2/3くらいになるまでふくらませる。
19. 卵白を表面に塗り、180℃に予熱したオーブンに入れ、45分焼く。
20. クリーチをメレンゲまたはシュガーグレーズで飾る。