パスハは、キリストの復活を祝して食される伝統的な復活祭の料理の一つである。ケーキはキリストの墓を象徴するピラミッド型の上部を切り落とした形をしている。
わたしにとってこのケーキは特別なものである。というのも、1年に1度しか作らないものであり、1年に1度しか食べないものだからである。ケーキの名前であるパスハとは、ロシア語で復活大祭を意味するものであり、材料は文字通り厚く切ったバター、濃厚なトヴォーログ(カッテージチーズ)またはファーマーズチーズ、そして生クリームでできている。しかしそれらはすべて不可欠なものである。もしパスハを作りたいけれど、トヴォーログがないという場合は、クリームチーズとカッテージチーズを混ぜたもので作ることができる。ちなみにこれらすべての食材は、復活大祭前の厳しい精進期では食べることが禁じられているものだ。
味と食感からいえば、パスハはチーズケーキに似ているが、同一のものとはけして言えない。パスハはビスケットの土台がなく、中身はチーズケーキというよりもトヴォーログの感じが強いからだ。また作り方も、オーブンで焼くのではなく、冷蔵庫で冷やすのである。
わたしの家では、復活大祭の料理づくりにはいつも非常に気合いが入っていた。母は何十個ものクリーチ(甘いパンのようなケーキ)を焼き、そしてもちろん我が家のお気に入りのパスハ料理である濃厚なトヴォーログのパスハを作る。正教会の伝統によれば、パスハ、クリーチ、ゆで卵などのイースター料理は、復活大祭の日だけでなく、光明週間と呼ばれる復活大祭後の1週間にも作ることになっている。この期間、母は家族や友人たちにたっぷり楽しんでもらうため、少なくとも3回はパスハを作るのだが、それぞれ違ったパスハを作る。たとえばプレーンなバニラのパスハ、レーズンやナッツ、ドライフルーツ入りのパスハなどで、そして最後に一番おいしいチョコレートのパスハを作る。わたしはこの信頼できるレシピがとても気に入っている。それは時間もそれほどかからず、難しい技術も必要としないからである。実際、すべての材料を混ぜて、それを型に入れ、冷蔵庫で冷やし、濃厚でクリーミーになるまで忍耐強くだけでいいのである。
材料:
- 柔らかいトヴォーログ、またはファーマーズチーズ、またはカッテージチーズ、またはカード(脂肪分9%以上のもの) 500g
- 無塩バター 150g
- サワークリームまたは生クリーム(脂肪分20%以上のもの) 70g
- コンデンスミルク 130g
- 砂糖 50〜70g
- ココアパウダー 大さじ山盛り2
- バニラエッセンス 小さじ1
- 塩 小さじ1/4
作り方:
1. おいしいパスハを作るには、よいトヴォーログ(またはファーマーズチーズ、カードなど、近くの店で手に入るもの)を選ぶこと。ドライで柔らかく、粒がなく、水気が多すぎないものがよい。トヴォーログの柔らかさが足りない場合は、濾し器で、できれば2回濾すと、かなりなめらかになる。
2.トヴォーログが柔らかければ、この工程は飛ばして、材料を混ぜ合わせていく。大きめのボウルに室温に戻したバター、砂糖、塩、バニラ、ふるったココアパウダー、サワークリーム(または生クリーム)を入れる。ハンドミキサーを使って、なめらかでふわっとするまで数分混ぜる。
3. トヴォーログを加えて、スパチュラで、強すぎないように、十分に混ぜ続ける。
4. コンデンスミルクを加え、低速のハンドミキサーでなめらかになるまで混ぜる。コンデンスミルクがない場合は、砂糖で代用してもよいが、コンデンスミルクを使った方がよりクリーミーになり、よりおいしくできあがる。ペースト状にまでなめらかになったら、これでパスハのベースは出来上がり。
5. ペースト状にしたトヴォーログを型に入れる。パスハ用の型があれば一番よいが、なければピラミッド型をした型か濾し器を使う。そこに湿らせたガーゼか寒冷紗を2重に敷き(いずれも薬局で手に入る)、ゆっくりとトヴォーログペーストを注ぎ入れ、ガーゼの端を上で結ぶ。
6. トヴォーログから滲み出た乳清を受けるのに、型の下にボウルを置き、蓋をして、上に重石を置く。チーズの塊などでよい。これをそっと冷蔵庫に入れ、水気がなくなるまで置いておく(最低一晩)。
7. 急がず、十分に時間をとること。水分が十分に取り除けていないと、型から外したときに、崩れることがある。15時間ほどしたら、ボウルの中に乳清が溜まっていれば、余分な水分が取り除けている証拠。
8. 重石をはずし、ガーゼをほどき、型をお皿の上にそっとひっくり返す。パスハを取り出し、ガーゼを取り除く。
9. お好きなものでデコレーションする。ナッツ、ドライフルーツ、トッピングシュガーなどなんでもよい。おいしいパスハはかなり濃厚なので、薄くスライスしていただく。プリヤートナヴァ・アペチータ(どうぞ召し上がれ)、そして楽しい復活大祭を!