新しいボーイング787-10型機は8月初め、ロールスロイス社製トレント100エンジンの耐久試験で、アメリカ上空に雲を描いた。ボーイングはアメリカの企業であるため、その航空機の機能の多くがモスクワで、ロシアのエンジニアによって、開発されていることは、ほとんど知られていない。
たとえば、787型機では、機首部分、機内コンポーネント、システム(環境制御系統、燃料系統、電気系統、油圧系統など)、パイロン、翼と胴体のジョイント、操縦翼面が、ロシアのボーイング設計センター(BDC)で設計された。ここには1200人の航空機エンジニアがいる。
ヴァージン・オービットの修正されたボーイング747-400=Bob Riha, Jr.,/Getty Images
他の航空機もここで開発されている。ロシアのBDCは、アメリカ国外最大の航空宇宙構造コンピュータ支援設計センターで、次のような数多くのプロジェクトに関わっている。
・ 767-200SF
・ 747-400BCF
・ 737-900ER
・ 777-300ER/200LR
・ 747-400LCF
・ 747-8F/-8I
・ 787-8/9/10ドリームライナー
747-400BCF型機、777-200LR型機の機体、内装、システム設計、747LCF型機の設計も、ロシアの主な貢献部分である。
BDCは現在、機体の一次構造だけでなく、777Xシリーズの翼の前縁と後縁の開発にも取り組んでいる。
ボーイング以外にも、ヨーロッパのエアバスがモスクワに設計センターを構えている。エアバス、ロシアの複合企業「システマ」および「カスコル」の合弁企業「エンジニアリング・センター・エアバス・イン・ロシア」(ECAR)は、2003年に創設された。EU(欧州連合)域外としては初めての開発組織である。
外国企業はなぜロシア人を採用するのだろうか。そこにはいくつもの理由があると、ECARのアレクサンドル・キレイツェフ社長は話す。
「ロシアの工科学校は世界中で広く認められており、専門家には優れた資格がある。また、当時(2003年)、エアバスはロシアの製造業者との関係を築くことを強く望んでいた。エンジニアリング・センターの設置は一つの手段であった。最終的な決定は、エアバス機のコンポーネントのいくつもの部分をロシアでつくるということで、以来、とても順調に行われている」
エアバスは確かに、ロシアの航空機メーカー「イルクト」、航空機部品メーカー「ギドロマシ」、チタン総合メーカー「VSMPO-AVISMA」などと提携している。
「ボーイング」と「VSMPO-AVISMA」の合弁事業ウラル・ボーイング・マニュファクチャリング(UBM)、スヴェルドロフスク州=パーヴェル・リシツィン/ロシア通信
VSMPO-AVISMAはボーイングとも提携しており、ウラル地方にある合弁企業は737、777、787シリーズの型鍛造を行っている。2016年12月には、スヴェルドロフスク州の経済特区「チタン・バレー」に2ヶ所目の工場を建設することが決まった。開業は2018年の予定。
「当センターがエアバスの最終製品にどれほど貢献したかを評価するのは難しいが、一つだけ言えることは、ここで設計された飛行機4000機以上が今日、空を飛んでいるということ。また、原子力産業、鉄道産業、機械産業などの他の産業企業のプロジェクトもたくさん行っている」とキレイツェフ氏。
ECARのロシアの専門家はここ数年で、エアバスのすべてのシリーズに関わった。中には、次のようなものがある。
・ A320/A319/A321
・ A320/A319/A321シャークレット
・ A320/A319/A321ネオ
・ A321キャビン・フレックス
・ A330-200/300
・ A330-200GMF
・ A330ネオ
・ A350XWB-900
・ A350XWB-1000
・ A380
実施されたプロジェクトは120を超える。キレイツェフ氏によれば、新しいA330-200GMF型機の構造工学作業の8割が、ECARのエンジニアによって行われたという。
ボーイングのドリームライナーの主要な競合である新しいA350 XWB型機にも、プロジェクト初期からECARが関わった。
エアバスA350 XWB=ウラジーミル・ペスニャ/ロシア通信
「機体の後部の統合に取り組み、固定システムのモジュールおよび荷物棚、内装、その他の小型機能を開発した」とキレイツェフ氏。
ロシアのチームはこのプロジェクトに取り組んでいた際に、いくつもの発明を行い、エアバスの経営陣から称賛され、賞を授与された。ロシアの航空業界にとっては残念なことであるが、すべての特許がエアバスに登録された。
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