ヴァレーリイ・マチツィン撮影/タス通信
今年半ばから世界の原油価格が安値をつけている。主な油種(アメリカWTIおよび北海ブレント原油)の価格は1バレル105~110ドルから、2010年以来の安値となる80ドル以下まで下落した。このような下落(-30%)はロシア経済にとって、900億~1000億ドル(約9兆~10兆円)の損失を意味する可能性があると、アントン・シルアノフ財務相は24日に述べた。
ロシア政府は原油相場の維持について考えている。対策の一つとして、アレクサンドル・ノヴァク・エネルギー相は減産を提案。決定にはいたっていない。 「この問題には入念な調査が必要。国の予算は石油収入に大きく依存している。サウジアラビアのような、減産、増産を簡単にできる技術はロシアにはない」とノヴァク・エネルギー相。
ロシアは世界の石油大国の一国。1日の生産量はサウジアラビアおよびアメリカの生産量に匹敵する。昨年の1日あたりの生産量は、サウジアラビア1150万バレル、ロシア1080万バレル、アメリカ1000万バレル。他の石油生産国は1日310~420万バレルと、前述3ヶ国の数分の1の規模である。
しかしながらロシアはサウジアラビアとは異なり、国際舞台では独立した石油生産国。サウジアラビアは他の11ヶ国とカルテルを構成している。OPECの生産量は全体の43%。OPEC加盟国は意見を調整しながら活動し、値上げが必要になれば減産、またはその逆を行う。ロシアの生産量はOPECの3分の1ほどだ。
単独で活動
減産を望まないサウジアラビアに対抗してもロシアに勝ち目はないと考えるのは、エネルギー戦略研究所の専門家ニコライ・イサイン氏。ロシアは技術的に可能な量を最大限に生産しているが、サウジアラビアには少なくとも1日300万バレル増やせる空き能力がある。ロシアが世界の原油価格に影響を与えるためには、1日400万バレルすなわち3分の1ほど減らさなければならない。
理論的にはこのような動きで、1バレルあたり15~25ドル(約1500~2500円)の値上げが可能だと、ロシアのFX会社「フォレックス・クラブ」のヴァレリー・ポルホフスキー氏は考える。つまりロシアは来年度の予算に組み込まれている、1バレル100ドル(約1万円)の適正相場に戻すことができるということである。
しかしながら、これには痛みが伴う。減産は石油会社の収入を減らすため、国庫の歳入も減らしてしまう。ロシアはまた、従来の販売市場を失うリスクも背負う。「ロシアが市場から去ることは、イラン、サウジアラビア、その他の生産国にとって嬉しい話。価格が上昇し、その価格で輸出量も増やせる」とポルホフスキー氏。
石油は長期契約にもとづいて供給されるため、信頼できる供給者という評判にも傷がつく。さらに、市場にロシア産原油を戻すことは極めて難しくなる。
カルテルに対抗するには、他の生産国との連携が必要になる。
団結力を求めるなら
もっとも簡単なのは、CIS諸国(旧ソ連共和国)で連携することである。しかしながら、ロシアを除いた旧ソ連共和国の生産量はロシアの生産量の25%弱にすぎないため、世界市場にあまり影響をおよぼすことはできないと、イサイン氏。
OPECに代わる組織をつくろうとしたことは過去にあった。例えば、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、ロシアが加盟している上海協力機構。だがその生産量はやはりOPECにはおよばない。
結局世界の価格に影響をおよぼすには、OPECに加盟し、関係を構築するか、OPECの分裂を適時に正しく利用するかしかない。イラン、イラク、ナイジェリア、ベネズエラ、エクアドルなどの一部加盟国が早期減産を求めている一方で、アラブ首長国連邦とクウェートはそれに反対している。影響力の強いサウジアラビアの立場は今のところ、はっきりしていない。
投資会社「ウラルシブ」のアナリスト、アレクセイ・コキン氏はこう話す。「非公式な情報によると、ロシアとサウジアラビアは現在、価格引き上げに向けた連携活動に関する個別の協議を行っている」
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相によると、ロシアもサウジアラビアも、市場によって価格が決められるべきと考えている。「ロシアもサウジアラビアも、何らかの政治的な思惑が市場に影響をおよぼすことに反対している」と、21日のサウジアラビアのサウド・アル・ファイサル外相との会談後に述べた。
OPEC総会は27日に行われる予定。
*以下の記事を参照。
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