ウラジオストクまでの自由貿易圏

アレクセイ・マルガフコ撮影/ロシア通信

アレクセイ・マルガフコ撮影/ロシア通信

欧州連合(EU)との関係を緩和するため、ロシアは「リスボンからウラジオストクまでの」自由貿易圏の創設案について、再び話し合おうとしている。自由貿易圏の創設は、ロシアとEUのどちらに有利なのだろうか。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、EUとユーラシア経済連合(ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニア)の自由貿易圏の創設案に立ち戻った。今月中旬、ロシアの貿易の60%を占めるEUと、この案についての協議を続ける用意があることを示した。

 「リスボンからウラジオストクまでの」自由貿易圏(ウラジーミル・プーチン大統領の線引き)を創設する案は、クリミア編入および対ロシア制裁の前の今年1月に、ロシアとEUの間で協議されていた。

 自由貿易圏は国際的な統合の一種である。参加国の間で関税や他の税金、割当制が撤廃される。プーチン大統領は、ウクライナがEUとの連合協定の経済部分に調印した後の8月末、この案の協議再開への姿勢を示した。欧州委員会のホセ・マヌエル・バローゾ委員長はこの時、ロシアがEUとウクライナの連合協定を受け入れれば、自由貿易圏創設に近づくと話していた。

 

時は訪れた

 「制裁問題でぎくしゃくしている関係を和らげたいというロシアの思いが、このような動きになっているのではないか。ラブロフ外相の声明を歩み寄りととらえることができる。そこから互いの発言が和らぎ始める可能性がある」と、企業グループ「アロル」のセルゲイ・ヘスタノフ社長はロシアNOWに話した。

 「EUとの自由貿易圏が創設された場合、協議プロセスからアメリカなどの国が外れる」と、ロシアのFX会社「IFCマーケッツ」のアナリスト、ドミトリー・ルカショフ氏は話す。「ロシアはこれによって、自国の計画にEUとの経済関係の断絶は入っていないというシグナルを送っている。制限を適時に撤廃しながら、すべての制裁が過ちであることを認めることができる、というところを示している」

 

メリットとデメリット

 ロシアとEU諸国の自由貿易圏の創設は、関税の障壁をなくすため、外国でのロシア製の商品やサービスの競争力に良い影響を与える。そうなればロシア経済の成長や国民の収入増をうながす、と全ロシア社会組織「ロシア財務長クラブ」のタマーラ・カシヤノワ第1副理事は話す。

 一方で、国内市場で活動するロシア企業は、外国からの競合流入で厳しい立場に追い込まれる可能性がある。「ロシアの農業はヨーロッパの生産者との厳しい競争に直面する。国の補助金を受けない限り、勝つことは難しい」とヘスタノフ社長。

 EUにとって、ユーラシア経済連合(EAEU)との自由貿易圏は、より有利なものとなる。「大部分のEU諸国の経済は金融危機前の指標からほど遠い。この状況を打開する手段になり得るのが、ロシア市場での販売拡大による企業の取引高増」とカシヤノワ第1副理事。

 自由貿易圏によって、ロシアの生産者よりもヨーロッパの生産者が恩恵を受けると、ルカショフ氏は話す。第1に、国境の開放はロシアの輸入代替プロセスをすぐに遅らせる。第2に、ロシアの輸出の85%を占めているのが、炭化水素を含む鉱物資源で、世界市場におけるその需要は高い。EUはアジアやアメリカの商品と競争可能な完成品を、ロシアに供給できるようになる。

 「金融危機前までは、EUとの統合がロシアにとってより有利になっていただろう。ロシアの鉄鋼業界や石油化学業界は、関税によるEUへの輸出制限という問題にぶつかっていた」とヘスタノフ社長。今日、鉄鋼製品の価格は著しく下落しており、EUとの統合の意義はそれほど大きくなくなっている。

 

*参照記事