ブランドになる選手たち

アリョーナ・ザヴァルジナとその夫のヴィック・ワイルド=ロイター通信撮影

アリョーナ・ザヴァルジナとその夫のヴィック・ワイルド=ロイター通信撮影

スポーツ大会のメダルは、名声と賞金だけでなく、ブランディングの成功をも選手にもたらす。ソチ冬季オリンピックのメダリストの一部はすでに、ブランドになりつつある。

 ソチのメダリストの中でブランディングの道を歩み始めたのは、スノーボードのアリョーナ・ザヴァルジナとその夫のヴィック・ワイルド。アメリカ人のワイルドは、ザヴァルジナと結婚後、ロシア国籍を取得し、ロシア代表として今大会にのぞんだ。計3個のメダルをロシアにもたらした2人は、時計メーカー「ラケタ」の広告キャンペーンの顔になった。オリンピック前から老舗メーカー復活のため、無報酬で協力していた2人。ザヴァルジナは取締役会のメンバー、ワイルドは戦略部長になっていた。特に経営活動をしているわけではない。「『ラケタ』との提携とは、このブランドの支援と無報酬の友情協力」とザヴァルジナ。これは一種の慈善活動である。

 ソチの新しいスター、フィギュアスケートで金メダルを獲得したアデリナ・ソトニコワは、学校の名前になる。「アデリナ」というスポーツ学校が創設され、ブランドは商標登録される。ただ、商標はソトニコワ自身が直接保有するわけではない。登録を行うロシアの「第1特許会社」は、商標の申請者は明かせないとした上で、これは具体的にソトニコワを指す名称ではないと説明している。したがって、ソトニコワは直接的に収入を得られるわけではない。

 このような若きスターと同じようにさまざまな大会で成功している選手の中には、スポーツの成功を単なるアピールではなく、収入に変えている選手もいる。

 

エレーナ・イシンバエワ

=Corbis / Alloverpress撮影

棒高跳びの女王

 2度のオリンピックで金メダルを獲得しているエレーナ・イシンバエワは、棒高跳びだけでなく、広告の世界記録でも知られている。2009年、陸上選手としては過去最高額となる150万ドル(約1億5000万円)の5年契約を、中国のスポーツ用品メーカー「李寧」と結んだ。

 イシンバエワは2007年、日本の「東芝」とも契約を結んでいる。一説によれば、その額は100万ドル(約1億円)強だという。2007年はイシンバエワが大阪世界陸上で9度目の世界記録を更新して金メダルを獲得し、ローレウス世界スポーツ賞で年間最優秀女子選手に選ばれた年である。

 

 

フィギュアスケートの皇帝

 トリノの金メダリスト、ソルトレイクシティとバンクーバーの銀メダリストであるエフゲニー・プルシェンコは、ソチ冬季オリンピックの開催期間中、話題の的になっていた。団体戦では金メダルを手にしたが、個人戦は棄権。この決定は物議をかもし、批判の対象になった。だがプルシェンコの妻でプロデューサーであるヤナ・ルドコフスカヤは、このような世間の反応をものともせず、独自の商標「エフゲニー・プルシェンコ」の創設計画を発表した。プルシェンコにはいくつもの大型契約がある。もっとも話題となったのは、2009年に結ばれたスウェーデンの化粧品会社「オリフレーム・コスメティックス」との契約。その額は100万ユーロ(約1億4000万円)とも噂されている。

エフゲニー・プルシェンコ=タス通信撮影

また自動車メーカー「メルセデス」、時計メーカー「ユリス・ナルダン」、宝くじ会社「ビンゴ・ブーム」、アパレル会社「オドリ」、ソチの居住区画「サン・シティ」などの広告塔になっている。

 

お菓子の妖精

 ロシアのオリンピックのメダリストがどんな大型契約を結んでも、テニスのマリア・シャラポワには遠く及ばない。ここ5年の広告契約額は、1.5倍の2400万ドル(約24億円)に達している。最初の契約は2003年、ジャパン・オープンで優勝した後、日本の「NEC」と結ばれた。翌年にウィンブルドンで優勝すると、広告契約は10本、総額1500万ドル(約15億円)強に増えた。

現在は自動車から電話、アパレルまでの大手企業7社と契約している。シャラポワの活動はこれにとどまらず、2011年には自分のビジネス「シュガーポワ」を立ち上げた。これは飴やガムのブランドである。

 

有名な選手の広告

 有名なスポーツ選手を広告塔に起用することは、会社とその製品にプラスにもなり得るし、マイナスにもなり得る。

 国際的な広告代理店ネットワーク「BBDOモスクワ」顧客サービス部のクリスティーナ・タンチェル部長は、スポーツのスターがブランドの認知度を高め、会社のイメージを「近くてわかりやすい」ものにすると話す。

ロシアの広告代理店「TWIGA」のミハイル・エラギンECDはこう話す。「一方で、選手のイメージが強すぎると、宣伝するブランドの印象が薄れてしまい、選手は覚えられるが、ブランドは覚えられないということも起こり得る」。エラギンECDは、選手が重要な大会の前に、コマーシャルの撮影をしていると説明する。「大会で失敗した場合、視聴者は異なる感情を持って、そのきらびやかなコマーシャルを見てしまう。そうなるとブランドにマイナスになりかねない」