神戸牛がロシアへ

ロシアの食肉市場でおもしろいのは、高級セグメントだけではない。ロシア人のいわゆる「赤肉」つまり牛肉の生産は、鶏肉と豚肉が増えているのに、尻すぼみだ。=Reuters/Vostock Photo

ロシアの食肉市場でおもしろいのは、高級セグメントだけではない。ロシア人のいわゆる「赤肉」つまり牛肉の生産は、鶏肉と豚肉が増えているのに、尻すぼみだ。=Reuters/Vostock Photo

ロシアは、日本の名高い霜降り肉に市場を解禁する可能性がある。しかし専門家は、これがロシアの牛肉の価格低下につながることはないとみている。

露日が年末にモスクワで協議

  年末にモスクワで、日本側のイニシアチブで、ロシア農業監督局のニコライ・ヴラソフ副長官と、日本の川島俊郎・農林水産省消費・安全局動物衛生課長との間で協議が行われた。その席で日本側は、関税同盟加盟国への牛肉輸出に興味を示した。一方、ロシア側は、ロシア産の鶏肉と鹿肉の加工品、熱処理を加えた豚肉、牛肉、羊肉に対する、日本での輸入制限の撤廃に関心を見せた。ロシア農業監督局が公式に伝えた。  

 露日双方は、日本からロシアへの輸出牛肉に対して発行される動物衛生証明書について意見を調整し、輸出に関心をもつ企業に対し検査を行うことで、合意した。ロシア農業監督局と関税同盟加盟国の動物衛生担当省庁は、早くも、今年の晩春から初夏にかけて査察を実施する可能性があるという。

 また、露日両国が動物衛生監督の分野で協力するため、露日作業部会を立ち上げること、製品の追跡と証明書発行のため、電子化されたシステムを構築することでも合意した。

 

焦点は神戸牛  

 ロシア農業監督局に対して、ロシアNOWが聞いたところによると、焦点となっているのは、神戸ビーフとして知られる霜降り肉に対して、露市場を開放するかどうかという問題だ。「露日双方とも関心を示しているが、協議が年末だったこともあり、まだ具体的な行動は何もとられていない」。こうロシア農業監督局のアレクセイ・アレクセーエンコ氏は、1月14日にロシアNOWに語った。

 モスクワのレストランの、このニュースへの反応は「控えめ」だった。例えば、和食レストラン「MISATO(美郷)」を経営するワジム・ドリャビン氏は、露市場に和牛が登場しても、牛肉の市場価格にはまったく影響しないだろうと言う。「ロシアでは、これまでも下がったためしがない」と同氏は強調する。

 現在、和食を提供するモスクワのレストランは、日本の技術で生産されたオーストラリア産牛肉を主に使っている。

 露市場への輸出が解禁された場合、和牛がうまく食い込むには何が必要だろうか。記者がこの質問をドリャビン氏にぶつけると、氏は首をひねった。「日本人は、我々が何か言うまでもなく、自分の製品を売り込むためにあらゆる手を打っている。ロシア人が和食に慣れるように、できることはすべてやっている…。本物の和食というのは、すべての食材を日本の技で調理しなければできるものではない。米だって、日本米でなければならない――それも上等の」

 しかし、ドリャビン氏によると、和食を出しているチェーン店は、この原則に従わないことがあるという。例えば、中国製の生姜を使うことがあるが、「人工の着色料と香料を添加しているので、日本人にはすぐに分かってしまう。日本人が本当のボルシチを作れないのと同じことで、ロシア人には本物の和食は作れない」

 

「チャンスは極東食肉市場に」 

 とはいえ、ロシアの食肉市場でおもしろいのは、高級セグメントだけではない。ロシア人のいわゆる「赤肉」つまり牛肉の生産は、鶏肉と豚肉が増えているのに、尻すぼみだ。これは、現在の露食肉市場が、ソ連の“伝統”を受け継いでいるからで、酪農と肉用牛生産が、それぞれ別々に並行して発展せず、一緒に行われてきたからだ。その結果、牛乳も牛肉も、他の食肉の生産に比べると少なめであり、現在は、牛肉の生産増のしわ寄せとして、乳牛が減っている。

 とはいえ、業界紙「ミート・インフォ・ル」(meatinfo.ru)の情報分析部長、アンナ・エヴァンゲレエワ氏のデータによると、昨年初めから、食肉用の純血種の家畜頭数は、20%増えている。現在、畜産は、全体として発展傾向にあり、2013~2020年の農業発展計画が効果を上げているという。この計画では、とくに食肉用の畜産に重点が置かれている。

 エヴァンゲレエワ氏によれば、地域別に見ると、最も問題なのは、極東連邦管区の市場で、2013年の最初の9ヶ月で食肉用に屠殺された家畜は、あらゆる種類を含めて、計11万5300トンにとどまった(屠殺前の重量)。これはロシア全体のわずか1%にすぎない。

 食肉の自給率で見ても、極東連邦管区は31%どまりで、全国で最低レベルだった。内訳は、牛肉が33%、豚肉が27%、鶏肉が35%。

 こうした状況を踏まえて、エヴァンゲレエワ氏は、日本には極東の食肉市場に食い込むチャンスが十分あるだろうと言う。日本のライバルは、2013年の食肉生産世界ランキングでトップ30に入っているオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカなどの食肉とその加工品の大生産国になる。