地名からイメージするもの

「スウェーデンの食卓」は食べ放題バイキング、「スウェーデンの壁」は肋木、「スウェーデンの家族」は三人婚など、名詞にスウェーデンがついただけで、特定の熟語に変わる。ロシア語にはこんな風に、何かをイメージしてしまう国名や都市名がたくさんある。
ニヤズ・カリム
ニヤズ・カリム

 スペインやフランスでジェットコースターは「ロシアの山」と呼ばれているが、ロシアでこれは「アメリカの山」と呼ばれている。「ロンドンの霧」とは世界の一部の言語で当地のスモッグのことを意味するが、「アルメニア放送」が何かを知っているのは、きっと旧ソ連諸国の人だけだろう。ソ連時代、「アルメニア放送」というジョークのジャンルがあった。架空の「アルメニア放送」にラジオの聴取者が”ボケ”の質問を投げかけると、マジメかつ滑稽な答えが返ってくるという一連のやり取りである。

 

正確さとポルノ 

 中国については、めまいがするほど難しいもののことを「中国の難題」、多数の脅しがくりかえされるだけで実際には行われないことを「中国の最後の警告」と言う。スペインについては、「スペインのブーツ」(中世の拷問道具)がある。

 文芸作品から生まれた熟語もある。政府機構の陰謀を意味する「マドリッド宮廷の秘密」は、19世紀のドイツの作家ゲオルグ・ボルンが書いた同じ題名の小説から生まれた。「モスクワ郊外」というと、モスクワ郊外の夕べという歌がイメージされる。

 「スイス」というと正確性(時計のおかげで)、「ドイツ」というと時間厳守や几帳面という意味がある。ただしドイツには近年、ポルノのイメージもある。「アルゼンチン」はタンゴ、「チリ」は唐辛子である。食べ物と言えば、最近人気の「朝鮮ニンジン」もある。

 

一国社会主義とフランス・パン 

 サンドイッチが食べたくなったら「フランス・パン」(1940年代末、反国際化によって「街のパン」と改名されたが)を切って、「オランダ・チーズ」か「クラクフ・ソーセージ」をはさんではどうだろう。この国際的なメニューには、東ヨーロッパ生まれの「チェコ・ビール」や「リガ・バルサム」などの飲み物を添えてもいい。ソ連時代は「モスクワ・ウォッカ」または「首都ウォッカ」という選択肢もあったが、現在この商品はほとんど流通していない。

 温めた牛乳を入れる「ワルシャワ風コーヒー」には、東ヨーロッパ生まれのスイーツ「ベルリン・クッキー」、「トゥーリスキー・プリャニク」(トゥーラのスパイス入り糖蜜焼き菓子)、「キエフ・ケーキ」や「レニングラード・アイス」がぴったりだ。

 ロシア東部の「シベリア」は、世界で極寒の地、”常冬”の地というイメージになっている。だがロシアでは、「シベリア」にそんな怖いイメージはない。実際にはシベリアの大部分が、とても住み心地の良い場所であるため。

 

学校の中のカムチャツカ 

 国内ではコルィマやカムチャツカに、寒い収容所などの負のイメージがある。1960年代のソ連のコメディー映画「ダイアモンド・アーム」にはこんな場面がある。主人公に偶然知り合った人が「わがコルィマにぜひ遊びに来てください!」と言う。すると主人公はむせながら、「いや、あなたこそ、うちに来てくださいよ!」と答える。これはとても人気のフレーズになった。「カムチャツカ」とは、学校の教室で机の最後列を意味する。

 だがここから地理的に近いアメリカの「アラスカ」とは、毛皮の縁取りフードがついた暖かいダウンパーカーを意味する。「カナダ」とは、アイスホッケーのスケート靴である。夏の「パナマ帽」という名称は、中米が発祥地である。「バミューダ・パンツ」は、夏の丈の短いズボン。アメリカ製の本物のジーンズがなかったソ連時代の1950~1960年代、国産または東ヨーロッパ産のジーンズは「テキサス」と呼ばれていた。

 

上海のヒョウ 

 服のテーマを続けてみよう。イリヤ・イリフとエヴゲニー・ペトロフの人気の長編小説に登場する主人公オスタップ・ベンデルは、ロシアの田舎でペテン行為をしながら、皆が白いズボンをはいている伝説のリオデジャネイロに行くことを夢見ていた。いつものごとくペテンにかけようとしながら、淑女の着ている偽の毛皮をほめる。「あなたはだまされたんですよ。もっと良い毛皮をいただいてるでしょう。これはメキシコのカンガルーねずみではなくて、上海のヒョウですよ!」以来、「上海のヒョウ」とは、安い偽物のことを意味するようになった。ロシアの地名がブランドになっている例として、「ヴォログダ・レース」、「オレンブルク・ショール」、「ホフロマ」、「パレフ」、「グジェリ」などの、当地の伝統工芸品がある。

 ロシアで田舎の代表格となっているのは、ロシア・ヨーロッパの中心部に位置する「タンボフ」。機知に富んだジョークの中心地となっているのはオデッサ南部(現在ここはウクライナ)で、「オデッサのユーモア」はいまだに健在だ。

 ロシア語で「南」とはリラックスした休息の場所で、「北」とは厳しい労働の場所であると言える。北に出稼ぎに行き、南に行ってそのお金を使っていた。

 他の2つの方向にも特徴がある。「西」とは文明と進歩であり、「東」とは保守的な伝統と秘密めいた謎である。1960年代の映画「砂漠の白い太陽」のセリフ「東とは繊細な問題」も、大人気となった。

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