ソチ12日目「五輪の境界線」

ミハイル・モルダーソフ撮影

ミハイル・モルダーソフ撮影

五輪の良い点のひとつは、たくさんの人と交流できること。世界中のおもしろい人たちがいつでもまわりにいて、会話をしたり、何か新しいことを聞いたり、何かを教えてあげたり、助けてあげたりできる。

 さまざまな人が集まっている場所だから、開催期間も中盤に入ると、楽しそうに話をしている中央のテレビ局の有名なジャーナリストや、おなじみのスポーツ関連の写真を撮影している写真家などをバス停で見ても驚かなくなる。

 

バッジ・マニア 

 語学に堪能とはいえないボランティアでも、身振り手振りで示してみたり、知ってるあらゆる外国語の単語を混ぜてみたり、満面の笑みをうかべたりして、なんとか外国人の役に立てている(基礎的な英語力を備えていることがボランティアの条件だったし、1年間の無料の英語研修も受けることができたけど、多くのボランティアはいざ外国人を目の前にすると、結局英語の単語3つぐらいしか言えない)。

 外国の代表団やジャーナリストは、助けてくれたお礼にと、五輪の通貨とも言えるおみやげをくれる。それはバッジ。1週目が過ぎたころには、ボランティアの身分証明書のストラップが、さまざまな国や組織のバッジで覆われていた。珍しくて価値の高いバッジを求めてバッジの物々交換をしたり、「見て、見て、これ国際スキー連盟の正式なバッジ!」といった具合に自慢したり、バッジで重くなったストラップをさげて満足そうにしていたり…最初のころは「どこから来たの?」という質問が一番多かったけれど、途中からは「わあ!どこからそのバッジもらったの?何となら交換する?」に変わった。バッジの物々交換は五輪の古き伝統だ。そしてソチも例外なく、これが行われている。

 

規則違反で追放… 

 例外なく存在すると言えば、基本的な規則を守らないボランティア。一番大切な規則は、活動中の人のじゃまをしないこと。ある研修では、私たちの責任者がはっきりとこう言っていた。「競技ゾーンではいかなる個人的関係も許されない」。これは道理にかなっているし、わかりきっていることだ。競技ゾーンやその周辺は、五輪の聖なる聖地。選手の夢がかなう場所、運命が決まる場所。選手の気をそらせるようなことがあってはいけない。だが実際には、規則にまったく違反しないようにするのはかなり難しい。

 ここにきてとうとう、違反でボランティアの資格を剥奪された人がでてしまった。ボランティア活動に私情をからめるのが一番やってはいけないことで、即追いだされてしまう。クロスカントリースキー・バイアスロン用複合施設「ラウラ」で、ある世界レベルのスター選手が、責任者にクレームをつけた。ボランティアが競技ゾーンで、サインと一緒の写真撮影をおねだりしたんだとか。何人かのボランティアは、航空券の帰りの日を即日に変更して、荷物をまとめて去って行った。

 こんなことがバイアスロンで起こってしまうなら、アイスホッケーはどうなるのだろう。想像するだけで恐ろしくなってくる。だがロシアの有名な歌にはこんな一節がある。「意気地なしはアイスホッケーをしない」と。きっとこの競技と同じように、強固な意志を持ったボランティアが選ばれているに違いない。それを期待するしかない。