人生をかけたヴルーベリの絵

2013年12月24日 ヤン・シェンクマン
画家のミハイル・ヴルーベリ(1856~1910)は、「悪魔」シリーズや、ロシア絵画でもっとも悲劇的なヒロインの一人である「白鳥の王女」の作者。
ナタリア・ミハイレンコ
ナタリア・ミハイレンコ

 ヴルーベリは悪魔に魂を売ったと言われていた。さまざまな不幸に襲われたのは、「倒された悪魔」を描いていた時だ。ヴルーベリの悪魔は、神域まで果て しなく高く飛び、倒される人間のシンボル。絵は「冒涜的」であり、自分でもそれを弁えていた。「キャンバスで官能性、美や洗練への情熱など、人々がキリスト教の立場から否定することを義務と心得るもののすべてを表現」したいと考えていた。表現し、倒れた。

 

絵から現れたものは

 ほとんど睡眠をとらずに117時間作業した。たくさん酒を読むようになり、友人の芸術家とは口論の日々。この時に息子が生まれたが、口唇裂があった。 ヴルーベリは幻覚を見るようになり、病院に収容される。絵にもおかしなことが起きていた。ヴルーベリはキャンバスの一部に銅粉で絵を描いていたが、これが まぶしいほど美しかった。ところが時間の経過とともに銅粉の色は変わり、美しい悪魔の顔が、悪意に満ちた、陰鬱な重苦しい顔になってしまった。悪魔が正体を現したのだ。収集家や博物館は怖がって購入を拒んだ。

「倒された悪魔」

不可解な画家の変容

 ヴルーベリにも悪魔と同様の変容があった。知的で、愛想がよく、落ち着いた人物だったが、悪魔の申し子になってしまった。まわりの人を苦しめ、怒鳴り、うわごとを言い、酒を要求した。

 不幸は続き、息子も死去してしまう。その1年後にはヴルーベリ自身が失明。最後の作品は手探りで描かれた。世界は暗闇に包まれて消え、耳からは声が聞こえてくる。「お前はすべてに対する俺の報復を受けた!」

 ヴルーベリは肺疾患でこの世を去った。自殺だったのか。服を脱いで裸になり、冬なのに窓を開けたままにして、何時間も立ち続け、体調を崩した。亡くなった場所は精神病院。

 

ニーチェ的飛翔の代償

 この時代、「神は死んだ」と宣言した、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェも、同じような運命をたどっていた。ニーチェは精神病院で苦しみながら生涯をとじた。ヴルーベリもニーチェの本を読んでいただろう。ニーチェはロシアのボヘミアン芸術家の間で大人気だったからだ。ファンには詩人、音楽家、画家などがいたが、ヴルーベリほど大胆な飛躍をした者は少なかった。ヴルーベリの絵は、人間がどれほど高く飛ぶことができ、そしてその高さから落ちることがどれほどの痛みかを教えてくれる。

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