ロイター通信撮影
トゥクタムィシェワが優勝
18歳のトゥクタムィシェワの成功は、長年の身を粉にした猛練習の成果というだけでなく、アレクセイ・ミシン・コーチの忍耐の結果でもある。トゥクタムィシェワがスランプに陥っていた2年前(これによってソチ五輪出場の夢も打ち砕かれた)、誰もがミシン・コーチに他の選手の指導に集中するよう勧めていた。だが昨秋、トゥクタムィシェワが戦える状態を取り戻すと、批評家は何も言えなくなった。
昨年12月にバルセロナのISUグランプリファイナルで優勝した直後、本人は筆者にこう話していた。「トリプルアクセルを飛ぶのは不安。トリプルアクセルの理論は良く知っているけど、それを実施するとなると。理論と実践は別物だから。重傷を負う大きなリスクがある」。2月中旬のババリアンオープンでは、ショートプログラムにこのエレメントを入れ、回り切ったものの、着地に失敗して転倒した。
今回の世界選手権ではすべてがうまくできていた。完璧なトリプルアクセルにより、他の選手を圧倒。ショートが終了した時点で、次点の選手に8点以上の差をつけた。フリープログラムでも大きな乱れなく堂々の演技を見せて優勝。マリア・ブッテルスカヤ、イリーナ・スルツカヤに次ぐ、世界選手権女子シングルで優勝した3人目のロシア人女子選手となった。
成長の苦しみ
16歳のアンナ・ポゴリラヤが1年前に初めての世界選手権に出場した時は、まだ恐れ知らずであった(埼玉で行われた世界選手権で好演技を見せ、4位になった)。だが上海で成長の苦しみを味わった。ショートでミス2つ、フリーではミスのオンパレードになってしまった。
同じくフリーでミスをたくさんしてしまったのが、16歳の「鋼鉄の少女」、エレーナ・ラジオノワ。ただ、ショートの結果が良かったため、2日間の合計点で銅メダルを獲得できた。
ペアは欧州勢トップ
世界選手権ペアの表彰台にロシア代表があがれなかったのは、2008年以来初めて。ただ、それには明確な理由がある。ソチ五輪団体戦、個人戦の金メダル獲得者であるタチアナ・ボロソジャルとマキシム・トラニコフ組は、ケガの治癒のため、大会を欠場した。ソチ五輪団体戦の金メダル獲得者、個人戦の銀メダル獲得者であるクセニヤ・ストルボワとフョードル・クリモフ組は、エレメント全体の難度をより早く上げることを追求するために、終了を待たずにシーズンを終えた。
ロシアを背負って立ったのは、タマラ・モスクヴィナの教え子であるベテランの川口悠子とアレクサンドル・スミルノフ組。銅メダルに一番近かったものの、フリーの最も重要なエレメントで3つのミスを犯し、手が届かなかった。それでも上海ではヨーロッパ勢のトップになった点を、“楽観主義者たち”は指摘するだろう。
ジュニアからシニアへあがったばかりの若きエヴゲニヤ・タラソワとウラジーミル・モロゾフ組は、川口・スミルノフ組に次ぐ成績で6位になり、上海のヨーロッパ勢の2位になった。
2人の失敗
男子シングルの演技はうまくいかなかった。マクシム・コフトゥンはショートの時点で16位に沈み、セルゲイ・ヴォロノフはショートで4位だったにもかかわらず、フリーでミスをくり返し、フリー単独では17位。次の世界選手権で3人の出場枠を確保することがロシアの課題だったが、それはかなわず、2人の出場枠にとどまった。2日間の合計でコフトゥンは7位、ヴォロノフは13位だった。
「今のロシアの男子シングルは、難度が重視されていた時代の遺産。そのことを今も忘れてはいけない。けれど、トップレベルの選手はさまざまな能力以外に、氷上で演技を楽しむことができている。ロシアの選手にはこの能力がない」と、ロシアの有名なコーチであるエヴゲニー・ルカヴィツィン氏は、ロシアNOWの取材に対して語った。
アイスダンスの残念な結果
アイスダンスも、2016年の世界選手権で3人(組)の出場枠を確保できなかった。ヨーロッパ選手権で銅メダルを獲得したアレクサンドラ・ステパノワとイヴァン・ブキン組は、ショートでステパノワがスケートのかかとを氷上のくぼみにひっかけて転倒してしまったことから、思うような結果を出すことができなかった。ショートの14位から9位までの浮上にとどまった。
エレーナ・イリイヌィフとルスラン・ジガンシン組は、ペア結成後間もないことから、練習量が足りず、大きな活躍をすることはできなかった。ショートでは、実力で5位に位置することができたが、フリーでは荒っぽさが見られ、結局7位にとどまった。
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