ロシア代表のW杯出場が決定

　ロシアがW杯への出場を決めたところで、それほどの偉業を成し遂げたようには思えないが、最後に出場したのが2002年の日韓大会だったことを考えれば、その重みが伝わってこようというものだ。当時の代表選手で現在残っているのは、「ゼニト・サンクトペテルブルク」のFWアレクサンドル・ケルジャコフ（30）のみ。

　ロマン・シロコフ、セルゲイ・イグナシェヴィッチ、イーゴリ・アキンフェエフといった残りの選手にとって、これは初めてのW杯となる。

名将カペッロの地道な努力実る 

　2008年UEFA欧州選手権で3位に入賞した世代にとって、このチャンスを逃がすことは悲劇以外の何物でもない。しかも現ロシア代表を率いているのは、数多くのタイトルを獲得し、世界でも有数の年棒を誇る、イタリア人のファビオ・カペッロ監督だ。カペッロ監督は就任1年で、外国人監督に対するロシア人のイメージをガラリと変えた。

　これまでのオランダ人監督（フース・ヒディンク監督2006～2010年、ディック・アドフォカート監督2010～2012年）とは異なり、カペッロ監督は多くの時間をロシアで過ごし、プレミアリーグの各節で3～4試合観戦している。また就任後、10人の新しい選手を代表入りさせた。うち6人はスカウトしか知らなかったディフェンダーである。

シロコフ新主将がムードメーカーに 

　2012年UEFA欧州選手権で敗退した後、代表にはムードメーカーが現れた。ゼニトのMFロマン・シロコフは、メンバーを前進させ、ゴールし、素早い攻撃の際にゲームのリズムを決め、止まった時には守備位置に移動する。15日のアゼルバイジャン戦では相手のキーパーと1対1になり、“無慈悲に”ゴールを決めた。

　そんなシロコフ新主将は、なかなかの問題児でもある。サポーターとの関係は悪く、サッカーの専門家とは戦い、積極的に社会的立場を取っている。ロシアにとって、ただのサッカー選手にとどまらない。シロコフはさまざまな雑誌の表紙を飾り、インタビュー記事では政治欄を設け、ツイッターでは20万人以上の フォロワーを抱える。

　昨年10月のロシア対ポルトガル戦でシロコフが見せた見事なアシストによって、グループFでポルトガルを超えられるという自信がわいた。そして対アゼルバイジャン戦のゴールによって、ロシアが1番であることを確信させた。

カペッロ監督は契約延長に応じるか

　1972年ソ連最優秀選手賞を獲得しているエヴゲニー・ロフチェフ氏は、予選でのロシア代表のプレーを可もなく不可もなしと評価する。「カペッロ監督率 いるロシア代表の試合は、総じてあまり印象を残さなかった。ロシア対イスラエル戦（4-0）以外で思い出せる試合はない。対ポルトガル戦の勝利には時間をかけ過ぎていた。多くの選手が自分の力を出し切れていないし、本大会では必要とされなくなるかもしれない」。 

　カペッロ監督が自身に課せられた課題を見事に実現しているなか、ヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、2018年W杯ロシア大会までの同監督との契約延長をほのめかしている。今はそれを実行するに最適な時期ではあるが、W杯の本大会に出場することと、そこで活躍することは、別問題だ。

　監督はこれを十分に理解しているだろうから、2018年までの延長には応じないだろう。ロシアを”自分の国”にするのは簡単ではない。言語の障壁、長い冬、サッカー界の問題によって、カペッロ監督は他の監督と同様、多額の年棒のために働く一時的な指導者になってしまう可能性がある。

早くもラブコール 

　「CSKAモスクワ」のレオニド・スルツキー監督は、カペッロ監督がロシア代表に合っていると考える。「カペッロはトップ監督。今まで仕事をしてきたところで、自身の最高レベルを証明しているし、ロシア代表でも好結果を示している。2018年まで契約を延長するべきか否かという問題については、細かい契約内容を知らないから何とも言えないが、世界有数の監督にロシア代表を指導してほしいなら、カペッロは最適な選択。これ以上強力な人物は見つけられないと思う」。

　カッペロ監督にはあと半年の猶予がある。次の目標となる本大会のグループリーグ突破のため、この期間で欠点を修正しなければならない。最後にグループリーグを通過したのは1986年のことだ。これが実現できなければ、ロシア・サッカー連合やサポーターから、失格の烙印を押されてしまう。