外国で話題になったソ連映画5作

 「アンドレイ・ルブリョフ」(1966年)=

「アンドレイ・ルブリョフ」(1966年)=

ロシア通信
 いまだに国内外で語られる、ソ連映画界繁栄の時代の作品を、ここで5作思い出す。

1.     「戦艦ポチョムキン」(1925年)

 ソ連の映画界だけでなく、世界の映画界でも認められたこの最高傑作が、イギリスで1950年代まで禁止され、1978年までカテゴリーX(ポルノ)扱いされていたことは驚きだ。セルゲイ・エイゼンシュテイン監督のこの映画を、ナチスドイツのヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相は、これまでに見た中で最強のプロパガンダ映画であり、見た後、共産主義者になりそうになったと言った。アメリカの「ニューヨーカー」誌は、この映画を「世界映画の初のモダニスト」と評した。

 イデオロギーの力と勇気に加えて、エイゼンシュテイン監督は当時の観客にとってとてもショッキングな暴力を映し、次の世代に革新的なモンタージュを残した。この原則はアメリカのフランシス・コッポラ監督の「ゴッドファーザー」、ブライアン・デ・パルマ監督の「アンタッチャブル」などで見られる。有名なオデッサの階段での銃撃シーンは、ほぼ再現されている。

この映画はしばしば史上最高作と呼ばれ、革新の同義語となり、センスの良さの尺度となった。

 

2.     「鶴は翔んでゆく(戦争と貞操)」(1957年)

 ミハイル・カラトーゾフ監督のこの作品は、ヨシフ・スターリンの死から4年後に制作された。カンヌ映画祭(1958年)でパルム・ドールを受賞した、唯一のソ連映画である。批評家を驚かせたのは、「地理的境界も政治的境界もない万人の戦争に対する嫌悪感、およびスターリンのプロパガンダの欠如」であった。

 確かに、愛していない夫から離れ、愛する男性の記憶を残すことを決めた主人公ヴェロニカの物語は、国際的であり、正直だった。現在でも、優れた戦争映画の上位に位置している。

この作品は映画言語に影響を与えた。オスカーを2度手にしているアメリカのカメラマンのハスケル・ウェクスラー氏は、セルゲイ・ウルセフスキー氏(この作品のカメラマン)からすべてを学び、20年経過した後もその手法を真似していると話していた。

 

3.     「アンドレイ・ルブリョフ」(1966年)

 アンドレイ・タルコフスキー監督が15世紀のイコン画家の困難な運命を描いた作品。1967年、カンヌ映画祭側から要請があったにもかかわらず、ソ連政府はこの映画を出品せず、「戦争と平和」に替えた。この映画がカンヌ映画祭で上映されたのは完成してから3年後のことで、しかも閉幕ぎりぎりの非コンペティション部門であったが、それでもFIPRESCI賞を受賞した。1971年、検閲版がソ連で公開された。最初の公開で約300万枚のチケットが売れた。アメリカのコロンビア社が商業的理由で20分カットした作品は、1973年にアメリカで公開された。カットは逆効果になり、辛口の批評ばかりだった。1990年代半ば、205分の完全版のDVDが発売され、映画はよみがえった。

 そのテーマ、場所、時代により、古さをまったく感じさせない。さまざまな世代、さまざまな好みの映画関係者がこの作品への愛を語っている。スウェーデンのイングマール・ベルイマン映画監督は、「タルコフスキーほど夢想の世界にとけこんでいる人はいない」と言っていた。

 

4.     「戦争と平和」(1966年)

 トルストイの長編小説「戦争と平和」の映画化。1959年にアメリカでキング・ヴィダー監督が「戦争と平和」を制作し、ソ連で上映されていなければ、生まれていなかった映画である。この後で映画の撮影が承認された。非公式には、史上最も高額な映画と考えられている。撮影期間5年、軍を投入した12万人の出演者を撮影できるハリウッドの映画スタジオはなかったであろう。

 2部構成になっている6時間のこの作品は、ソ連初のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品であり、ソ連で最も長時間の映画である。 

アメリカでは、この作品は1969年に公開された。影響力のある評論家ロジャー・イーバート氏は、セルゲイ・ボンダルチュク監督の映画がこのジャンルの最高作「風と共に去りぬ」よりも優れた、史上最高の大作になったと絶賛した。

 

5.     「霧につつまれたハリネズミ」(1975年)

 ハリネズミが友だちのクマのところに遊びに行く途中、霧の中で迷ってしまう、ユーリー・ノルシュタイン監督の10分間のこのアニメ映画は、ソ連で最も有名なアニメであろう。日本では、「チェブラーシカ」の方が良く知られており、人気も高い。宮崎駿監督が、この映画を最も好きな映画の一つと言っていることは有名だ。ノルシュタイン監督は2004年、日本で旭日章を受章している。

 この映画の哲学的な意味は、さまざまな言語の論文で論じられている。特定の時点で不気味な特徴を帯びる、実存的孤独と日常の事物の怖さ...。イギリスのテレグラフ紙が最近発表した「最優秀児童映画」ランキングで、この作品は19位になっている。現代のロシアの保護者が、子供たちが「残酷な」ハリウッドのアニメを見ている、と文句を言っていたら、欧米の子供たちはロシアのアニメを見ているよ、と答えてもいい。つまり、この作品には、独自の残酷さがあるのだ。

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