ソ連時代におけるドストエフスキー作品の実写化TOP5

カルチャー
アレクサンドラ・グゼワ
ロシアの新しい連ドラ『罪と罰』が10月に公開される。主人公ラスコーリニコフを演じるのは、『少年の言葉』のスター、イワン・ヤンコフスキーだ。映画の歴史を通じて、ドストエフスキーの小説は――長編のみならず短編も――何百回も映画化されてきた。ベルトルッチから黒澤明に至るまで、世界的に有名な監督たちも、この天才にインスパイアされている。では、ロシア本国ではどのように映像化されたのだろうか?

1.『白痴』(イワン・プイリエフ監督、1958年)

 若くて異常なほど純粋な心をもったムイシュキン公爵は、かつて心を病み、ヨーロッパで数年間治療を受けた後、ロシアに帰って来た。故国で彼は、「運命の女」となる美女ナスターシャ・フィリッポヴナに恋する…。

 この映画は、スターリンのお気に入りだったイワン・プイリエフ監督によって撮影された。しかし、そのプロットは小説全体をカバーしていなかった。続編が計画されたが、実現していない。1958年、映画は3千万人以上の観客を動員し、雑誌『ソビエト・スクリーン』は『白痴』を同年最高の映画と認めた。 

2. 『おとなしい女』(アレクサンドル・ボリソフ監督、1960年)

 貧困ゆえに不幸な少女は、嫌悪していた質屋と結婚する…。ドストエフスキー晩年のこの短編は、彼の長編群の栄光の陰に隠れているが、それでも芸術に大きな影響を与えた。たとえば、この作品は、ノルウェーの有名な「表現主義」の画家、エドヴァルド・ムンクが愛読していた。

 不幸な少女の物語は、俳優アレクサンドル・ボリソフの監督デビュー作のインスピレーションとなった。彼の映画は、細部に至るまで入念な注意を払い、ドストエフスキーのサンクトペテルブルクの雰囲気を伝えた。「おとなしい女」の役は、イヤ・サヴィナが演じている。彼女にとっては、初期の映画出演の一つであり、批評家らから激賞された。 

3.『カラマーゾフの兄弟』(イワン・プイリエフ監督、1968年)

 フョードル・カラマーゾフには3人の息子がいるが、父子の関係は決して良好ではなかった。そして今、そのうちの一人が女と金のために父を殺した疑いをかけられている。しかし、真犯人は誰なのか?

 これも、プイリエフ監督によるドストエフスキー作品の映画化だ。しかし、監督の最後の作品となり、完成させる暇がなかった。主要な役は、名優、キリル・ラヴロフとミハイル・ウリヤノフが演じた。巨匠の作品を完成させたのは彼らだった。映画は大成功を収め、翌年にはオスカー外国語映画賞にノミネートされた。

4.『罪と罰』(レフ・クリジャノフ監督、1969年)

 貧しい元学生のロジオン・ラスコーリニコフは、自分が「震えおののく虫けら」にすぎないのか、それとも「権利をもつ」人間なのか、散々思いまどった挙句、質屋の老婆を殺そうと決意する。しかし、彼は犯した犯罪によってひどく苦しむ。そして、聡明な捜査官が真相に肉薄してくる…。

 主役は、俳優ユーリ・タラトキン。彼の初期の、そして主要な作品の1つになった。捜査官はすでに有名だったイノケンティ・スモクトゥノフスキーが演じた。レフ・クリジャノフの映画は、表現主義的で極めて先鋭なものであり、小説のリズムに合っている。この映画は1971年に映画の国家賞を獲得した。

5. 『未成年』(エヴゲニー・タシコフ監督、1983年)

 19歳の「未成年」は、ギムナジウムを終えるや、サンクトペテルブルクにやって来た。誇り高い若者は、自分の社会的立場を苦にしている。彼は非嫡出子であり、父親との関係が複雑だ。青年はまだ己の人生の道を見出せず、強い人間になることを夢見ている。

 6話からなる連ドラで、エヴゲニー・タシコフが監督した。彼は、映画『閣下の副官』で知られる。批評家らは、原作に対する彼の慎重なアプローチを称賛した。また、「矛盾に苛まれる」神経質な青年の全体像を見事に表現したことも、大いに評価した。

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