「ヴォランド」
ミハイル・ロクシン監督
ミハイル・ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」を「シルバー・スケート」のミハイル・ロクシンが新たに映画化した。プロデューサーたちはこの作品について、悪魔がスターリン時代のモスクワに公式訪問してその世界を垣間見るという新たな切り口の映画であり、古典的な文章を再解釈したものだと紹介している。
主要なキャストには、ロシア映画界の今をときめくスターたちが顔をそろえる。マルガリータ役にはユリヤ・スニギル(「ダイハード5」)、巨匠役にはエヴゲーニー・ツィガノフ(ホラー映画「ストレイ悲しみの化身」、ドラマ「グローズヌィ」)がそれぞれ抜擢された。ヴォランド役を演じるのは、ドイツの俳優アヴグスト・ディール。
しかし映画は何より、ロシア映画史において、もっとも製作費のかかった映画の一つである。発表されている製作費は110億ルーブル(およそ2000万ドル)を超えている。
「バタフライ・ジャム」
カンテミール・バラゴフ監督
カンヌ映画祭で賞を授与されたカンテミール・バラゴフ監督(「Closeness」、「戦争と女の顔」)は当初、カバルダ・バルカル共和国で、マリヤ・ステプノワのシナリオで映画を撮影する計画だった。北カフカスにあるアレクサンドル・ソクーロフ映画学校を卒業したバラゴフ監督は、作品に「モニカ」というタイトルをつけ、父と子の関係についての作品を作ることにしていた。
しかし、のちにバラゴフ監督は、HBOのドラマ版「ラスト・オヴ・アス」の撮影のオファーを受けたが、その後、「戦争と女の顔」のプロデューサー、アレクサンドル・ロドニャンスキーがロシアを去った。結局、バラゴフ監督の「ラスト・オヴ・アス」は実現しなかったが、「モニカ」のシナリオはアメリカで使われることになった。ストーリーは、アメリカに住むカバルダ・バルカルからの移民たちの間で展開する。2023年5月のカンヌ映画祭で初公開される。
「鳥を探すかご」
マリカ・ムサエワ監督
もう1人のアレクサンドル・ソクーロフ映画学校の卒業生であるムサエワ監督の新作は、昨年5月のカンヌ映画祭での初公開が期待されていた。「鳥を探すかご」は「監督週間」の選考で最後の最後まで残っていたのである。しかし、結局、作品はベルリン映画祭の「エンカウンターズ」部門で初公開されることとなった。
作品はチェチェンを舞台にしたもので、チェチェン語で撮影されている。作品の内容はまだほとんど明らかにされていないが、伝統的なイスラム社会での女性解放がテーマとなっており、イスラム社会にはかなり厳しい判決が下される。
「ある小さな夜の秘密」
ナタリヤ・メシャニノワ監督
2017年、メシャニノワ監督は自伝的短編小説集を発表した。その中でもっとも話題となったのは、義父からの性的暴力を経験した未成年の少女の話である。
この後、メシャニノワ監督は、10以上の作品を制作した。「不整脈」(脚本)、シリーズドラマ「普通の女性」(シーズン1の脚本、シーズん2の監督)などである。メシャニノワ監督は6年間でロシアを代表する監督の一人となった。しかし、2018年以降、長編映画は撮影していない。
「ある小さな夜の秘密」はその注目を集めた自伝的短編小説をもとにしたものである。おそらく、彼女は、これほど複雑なテーマで、力強い作品を生み出すことができる、現在の唯一のロシアの女性監督であろう。映画は今年、ロッテルダム映画祭で初めて公開された。
「ケンタウルス」
キリル・ケムニツ監督
「ケンタウルス」は、大きな話題を呼んだハリウッドのアクション映画「Mr.ノーバディ」のイリヤ・ナイシューレル監督と共同プロデュースされたネオノワール映画。明らかにニコラス・ウィンディング・レフン監督の「ドライヴ」にインスパイアされた作品で、自動車がまるで自分の身体の一部のように感じる、テクニックのあるタクシー運転手を描いたものである。
売春せざるを得なくなったリーザが重要な役どころとなっている。主人公は、苦境に立たされたリーザを無視することができず、その出会いは彼の人生を大きく変える。主人公役はユーラ・ボリソフ(「コンパートメントNo.6」、「シルバー・スケート」)が演じている。