内容: 現代ロシアにおいてもっとも過酷な職業で働く人々を主人公にした物語。
カーチャとオレグ夫婦はともに医師として働いている。年齢は30歳前後。オレグは救急車に乗り込んで仕事をしており、自由な時間があれば酒を飲んでいる。一方カーチャは夫のオレグが救急車で運びこんでくる急患たちの命を救っている。家に帰るとカーチャはそんな生活に疲れ果て、離婚したいと考えている。
映画は、長年にわたって蓄積された「夫婦生活の疲れ」から生活が狂わされていく2人の複雑な姿と、人の命を助けるための自己犠牲というものを描き出している。
医療関係者の間で大ヒットとなったこの作品。これまで医師や救急隊員の世界をこれほど正確に表現した映画はなかった。ちなみにそれ以外の幅広い観客層の共感も得た。映画館では観客たちがある場面で一斉に泣き出すのだそうだ。
内容: 希望も太陽の光も少ない世界最北の街の様子を描いた物語。
ノリリスクは北極圏の都市で、ほぼすべての成人が地元の産業コンビナートで働いている。若者たちは暇があると工業廃水に汚染された湖の畔でウォトカを飲んでいる。ここではそれ以外にすることがない。ストーリーの核となっているのは、医療関係の仕事に就く若いナージャと「どこかに逃げ出すか、あるいはここに残るか」という心の葛藤。チケットを買うお金はない。そして親や友人は、「ここ以外にお前を必要としてくれる場所なんてない!」と言うのだが・・・。
メシャニノワ監督のこの作品はロッテルダム映画祭に出展された。またロシア国内では映画の中で俳優たちが現実の生活と同じようにセリフを言うようになったことで、映画に新たなステージを切り開く作品となった。文学的な要素のない民衆的ハードコア。
内容: 命ある人々の世界を旅する死者の物語
10人の登場人物それぞれが幸せの一歩手前にいるが、その幸せはあと少しのところで手に届かない。その誰もが、悲劇の偶然によって死と向き合わざるを得なくなる。死を受け入れる者、自分の悲しみと向き合う者・・・。
この映画で重要なのは「愛する人の死の後に人生はあるのか?もしあるのなら、どうやってそこに戻ればよいのか?」という問い。主人公たちの苦悩を観るのが辛くなるような場面も。
シガリョフ監督の寓話的な映画はヴィースバーデン映画評価連盟から権威あるFIPRESCIを受賞した。評論家らはこの映画の鑑賞を過激なスポーツを行うのと比較している。それは鑑賞中にもアドレナリンが出るからだ。
内容:“ゆっくりとした”映画のマジック
ロシアの片田舎にある農場主は妻と障害を持つ息子と共に暮らしている。彼らの生活はゆったりしていて、変化もない。あるとき、地元の刑務所から2人の女性を雇うのだが、その一人に恋をしてしまう。
非常にロマンティックに幕をあけるこの物語だが、ラブロマンスやウィットに富んだストーリーとはかけ離れたものである。上映時間2時間のこの映画の物語が大きく展開するのは80分を超えたあたりからだが、強い「後味」を残してくれる。映画評論家のエヴゲニー・グシャチンスキー氏によれば、バクラゼ監督はロシアの空間を紋切り型を使わずに撮影することのできる唯一の監督だという。
内容:光を見つけるために闇に向かう現代版シンデレラの物語。
ゲーリャは警察の少尉。彼女は職場で毎日、人々が他人のことに無関心で闇の中(隠喩的に)に暮らしているのを見ている。彼女は私生活において幸せではなく、孤独で、大恋愛を夢見ている。
しかしこのストーリーでは、ゲーリャが望むような優しい王子様は現れない。現代版のおとぎ話には別の道徳が語られる。それはそれぞれの人間には、たった一人の力でも、一寸先も見えない闇から抜け出すためのあらゆる能力が備わっているというもの。ただ必要なのは光を見つけたいという気持ちを貫くことである。
内容: 本格的社会派ドラマ
コンクリート板を作る工場に危機が訪れる。人間関係の危機である。地元のオリガルヒがすでに3ヶ月間給与の支払いが滞っている自分の工場を閉鎖するという。300人の職員が職を失うが、そのうちの6人がこの事態に立ち向かう。
ブィコフ監督が「革服を身につけ、ピストルを手にしたコルホーズ労働者たちの筋肉哲学的戦闘映画」と名付けたこの映画はこうして始まる。
内容: 失われた愛による苦悩
若い夫婦は離婚の危機にあり、しょっちゅう自分たちの子供を孤児院に入れようとしている。いつも喧嘩し、憎み合い、浮気をしていて、息子のアリョーシャがいなくなったことにすぐに気がつかない。こうして始まる家族をテーマにしたアポカリプトでは、皆、人ばかり責めて、自分のことは棚に上げている。
ズヴャギンツェフ監督のこれまでの作品同様、「ラブレス」もまた高い評価を受け、カンヌ映画祭では審査員賞を、そして最優秀外国語映画賞としてフランスのセザール賞を受賞、またアカデミー賞、ゴールデングローブス賞にもノミネートされた。評論家たちは、この映画は有名な監督のこれまでの作品の中でもっとも「文句のつけようのない」作品であり、冷静なカメラワーク、ミリ単位まで計算しつくされたディーテール、心をかき乱すストーリー、そして数えきれないほどの隠された意味など、彼ができうることのすべてが詰まった作品だと評している。
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