ロシアが登場する日本のアニメ5選

露日コーナー
アレクセイ・フィリッポフ
 ネットフリックスで配信されているアニメ「スプリガン」では、超古代人の遺産が眠る世界を舞台に、大国の軍部による争奪戦と、「悪しきもの」から遺産を守るべく戦う特殊工作員「スプリガン」の戦いが描かれる。ここでロシアが登場しないはずはない。そして、これは過去5年に制作された日本のアニメで、ロシアが登場する唯一の作品ではない。もっとも顕著な例を挙げてみよう。

1.「スプリガン」(2022   

 主人公は16歳の高校生、御神苗優。超古代文明の遺跡を守護する特殊機関「アーカム」のトップクラスエージェントである。異星の遺物を世界の軍事組織から守ることが彼女の使命である。第1シリーズでは、優の敵の中に、特別な血清によって、高い戦闘能力と強靭な生命力を持つロシア空挺部隊の大尉がいる。戦闘の中で、大尉は、ロシアの目的は世界政治におけるアメリカの覇権を奪い、ソ連崩壊と共に失われたパワーバランスを取り戻すことだと説明する。

 またエピソードの中ではCIAのエージェントや謎の極東のモロフ一族の人物などが登場する。モロフ家の人物は、かつて自分たちの民族のものだった古代の遺物を手に入れようとするロシアの対外諜報部員である。しかし、「アーカム」と名乗る日本の若いスプリガンは、その遺跡が権力を渇望する者の手に渡ることを阻止するのである。

2.「ダンス・ダンス・ダンスール」(2022

 ロシアのバレエは、アニメスタジオMappa(進撃の巨人、ファイナルシーズン)の最新作の大きなメインテーマとなった。

 幼い頃にバレエに魅了された村尾潤平は父の死をきっかけに、父が望んだ道である男らしい格闘技ジークンドーとサッカーへの道を歩まざるを得なくなる。しかし、成長した潤平はバレエスクールに通うようになり、ボリショイバレエかマリインスキーバレエのスターになるという新たな夢を持つようになる。

 アニメの制作者らは、ロシアのバレエ劇場の特別なオーラというものをうまく再現している。このアニメ「ダンス・ダンス・ダンスール」の中で、ロシアはまさしく「バレエの国」として描かれており、シーズン1を通して、ピョートル・チャイコフスキーの「白鳥の湖」がテーマとなっている。サマーフェスティヴァルでジークフリート王子を演じることになった潤平は、パートナーの五代都とともに、ロシア人が主役を演じる日本のバレエ団の「白鳥の湖」を見に行く。

 アニメでは、「D.ニコラエヴナ記念バレエアカデミー」(1789年に創設されたと設定されていることから、ワガノワバレエスクールを意図していると思われる)というスクールも登場する。

3.「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」(2022年)

  貴族はドラキュラの神話において、重要な部分を成す。日本のアニメでこの役に当てはまるのは、イギリス帝国かロシア帝国のどちらかである。「天狼 Sirius the Jaeger」(2018年)では、すべての吸血鬼に、エフグラフ、ミハイル、タマーラ、ユーリー、アレクセイなどロシア的な名前が付けられ、拠点はサハリンとなっていた。

 「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」の世界はもう少しデリケートではあるものの、ありふれたストーリーや文化的な仄めかしが玉に瑕となっている。一方で、真実性においては、ニコライ2生の娘を主人公にしたロシア史をテーマにしたファンタジーが描かれる有名なアニメ「アナスタシア」(1997年)に引けを取らない。これは人間とヴァンパイアの長年にわたる対立をテーマにした終末後の物語である。ヴァンパイアはロシア帝国の古びた世界に暮らし(そこには大量の本やサモワールもある)、人間は耳のついたロシア帽あるいは特徴的な上着を着て、「鉄のカーテン」時代のソ連を思わせる建築物が並ぶ愛想のない国に隠れている。

 戦争、不理解から逃れ、惹かれ合うヴァンパイア、フィーネとモモ(母親は軍組織の重要なポストに就いている)はアダムと呼ばれる国(風景から、フィンランドにあると思われる)に逃亡する。

4.「月とライカと吸血姫」(2021年)

 宇宙というテーマは、おそらくバレエの次いで世界的に有名なロシア文化の一つであろう。「月とライカと吸血姫」は、第二次世界大戦後、すべての土地が共和国(ソ連)と連合国(米国)に二分されるという、仮想の物語である。アニメシリーズのもう一つの名前は「宇宙飛行士の吸血鬼、イリーナ」。1960年、共和国は宇宙に吸血鬼のイリナ・ルミネスクを人間の代わりに宇宙に送ることを決める。

 制作者らは、吸血鬼を主人公とするコメディと宇宙戦争の話をうまくミックスさせ、そこにソ連の日常を加えている。作品には、伝説とも言える炭酸水の販売機や後部座席の下にバッテリーがついたバス、壁にソ連の象徴的なポスター(たとえば、「密告するべからず」という有名なものなど)が貼られたジャズクラブ「ズヴェズダー(星)」、そしてセルゲイ・コロリョフをイメージしたスラーヴァ・コロヴィンなどが登場する(コロヴィンは1960年に心臓発作を起こす)。

 もちろん、共和国のアルファベット文字はキリル文字とは程遠く(おそらく異星の文字)、人名やその他の名称はロシア人の視聴者には面白い響きとなっている。主人公のレフ・レプスは、人気のシャンソン歌手と同じ苗字で、宇宙飛行士たちの秘密の都市の名前「ライカ」は最初に宇宙飛行をした犬の名前にちなんでおり、また作中に出てくる湖の名前はもう1匹の宇宙犬の名前であるベールカが使われている。この平和的なファンタジーは驚くべき魅力を感じさせる。党の指導者フョードル・ゲルギエフが、「国ではすでに2000万人が粛清された」と嘆いている間に、レフとイリナは、人類は政治的な争いを美しい宇宙空間に持ち込むべきではないという結論に達する。

5.グラップラー刃牙」(2018年)

 若い殺人犯シコルスキーは地球上でもっとも凶暴な犯罪者の1人である。この犯罪者を社会から追放するために、ロシア政府はシコルスキーをシベリアと思われる地下の刑務所に収監するが、シコルスキーはミサイル発射口を通じてそこから脱出する。というのも、シコルスキーは驚異的なアスリートで、オリンピックの代表選手にもなれるほどだったが、犯罪者への道を選んだのである。シコルスキーは物凄い握力を持っており、わずかな場所を掴んだだけで、自分の身体を支えることができるのであった。

 そのシコルスキーがなぜ日本にやってきたのか?それは地球上で最強の若者、範馬刃牙と出会うためであった。彼と戦うために、アメリカ、イギリス、ロシア、日本の5人の死刑囚らが収監場所から脱出する。それぞれの犯罪者が、その民族の粗暴な力に関するグロテスクなステレオタイプ以上のものを表出しようとし、それが皮肉たっぷりに描かれている。しかし、国際的な犯罪者らは、この汚いやり方や殺害方法を実際に用いることはなく、全員、檻の中に逆戻りする(またはあの世に送られる)。

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