衛星放送ヒストリーチャンネルのドラマ「ヴァイキング」で世界的に知られるようになった俳優のダニーラ・コズロフスキーが、監督としての野心を燃やし、20世紀最大の事故をテーマに長編映画の製作に臨んだ。チェルノブイリ原子力発電所の事故というテーマは、HBOのドラマが成功して以来、世界の評論家や観客の間で高く評価されている。
一方ロシアでは、チェルノブイリをテーマにした作品といえば、アレクサンドル・ミンダゼによるアートハウス系の映画「土曜日に」くらいしかない。コズロフスキーとプロデューサーのアレクサンドル・ロドニャンスキーは、米国のドラマとも、ロシアの作品とも比較されたくないとし、作品はまったく異なるジャンルのまったく異なる規模のものだとしている。とりわけ作品は、大規模なヒーロー系アクション映画になると述べている。
ストーリーは、消防士、技師、ダイバーの3人の登場人物を軸に展開する。3人は命を危険にさらしながら、原発の事故処理に当たる。ヒロイン役のオクサナ・アキニシナは、スパイ映画「ボーン・スプレマシー」とホラー映画「スプートニク」で知られる女優である。公開は2020年秋に予定されていたが、コロナウイルスのため、2021年4月に延期された。
今から3年前に、ドイツの捕虜収容所から逃亡するソ連の戦車兵を描いた映画「T–34」がセンセーションを巻き起こしたが、チムール・ベクマンべコフ監督の「V–2」はこの「T–34」路線を引き継ぐものとなっている。作品は、捕虜になった飛行士のミハイル・デヴャタエフがナチスドイツ軍の秘密兵器であるV2ロケットを盗むというストーリーである。
ベクマンベトフ監督が得意とする大規模なアクションシーンに加え、新作では同ジャンルの他の作品にはない新たな技術が用いられている。とりわけ、作品は、スマホで縦で見られるようになっているほか、複数のフォーマットでの再生が可能となっている。近年、製作費のかからないホラー映画「アンフレンデッド」、「サーチ」(ポータブル機器のスクリーン上でストーリーが展開する)などを製作し、世界の舞台で成功を収める監督とプロデューサーは、こうした手法によって、戦争ものの映画を若い人たちにも分かりやすく、より興味深いものにしている。
ロシア・ビヨンドの調べでは、キリル・セレブレニコフ監督のこの作品は、コロナウイルスの感染拡大で開催されなかった2020年のカンヌ映画祭のコンペ部門に出品されるはずだった。プロデューサーらはこの作品を公開せず、来年まで待って、主要な国際映画祭で初公開することにした。しかも、この不条理な悲喜劇は、まさに今の時代にぴったりな内容である。
映画は、ウイルスに感染し、高熱を出して倒れた地方都市に暮らす自動車工、ペトロフ一家を主人公にした物語。病に苦しむ登場人物たちは現実と作り話に恐れおののき、馬鹿馬鹿しい想像の世界に入り込んで行く。
映画の基になっているのは、アレクセイ・サリニコフの小説「インフルエンザに罹ったペトロフ一家と周辺の人々」。小説はジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」などの20世紀初頭の斬新な小説に類似点を持っている。アンドレイ・ズヴャギンツェフ監督に次いで国際映画祭で受賞の多いセレブレニコフ監督の作品は、モダニズム的な美学を映画で表現しようとするものである。
ロシアで、古典的なハリウッド的喜劇を作るという試みはすでに行われている。しかし、数年前に公開された、「アベンジャーズ」に対抗して作ったと言われるサリク・アンドレアシアン監督の「ガーディアンズ」はロシアでは失敗に終わった。今回、別のプロデューサーらは、この失敗を繰り返さないよう、質の良い文献―バブル出版社から出ているサンクトペテルブルクの警察で働く少佐を主人公にした漫画シリーズから作品づくりを開始した。漫画シリーズは2012年から2017年にかけて出版され、批評家と読者から高い評価を得たものである。
映画は「ペスト医師」を映画化したような作品。その本とは、腐敗した医師やビジネスマン、権力者を厳しく強制しようとする秘密の人物を追うシリーズものの第1巻である。漫画でもっとも悪い人物と描かれているのは、百万長者で、巨大なソーシャルネットワークを所有する人物。サディスティックな性質を隠して生きている。
興味深く作られたトレイラーを見れば、製作者らが、クリストファー・ノーランのDCコミックの美学を取り入れようとしたことが分かる。作品には陰鬱なフィルム・ノワールとペーソス、それに大々的な複雑なエピソードが組み合わされている。2021年の作品の中で、もっとも高額な製作費が費やされたもので、もっとも興味深いものの一つである。
2019年、ロシアの映画界では、キリル・ソコロフ監督のデビュー作品である血みどろのブラックコメディ「とっととくたばれ」が非常に大きく注目された。父親と子供の異なる世代間の不理解をテーマにした不条理作品である。2020年、映画は西側のストリーミングメディアで公開されると、英語圏の主要な批評家らが一同に話題にするようになった。映画は、ガイ・リッチー、クウェンティン・タランティーノ、セルジオ・レオーネなどの作品と比較されており、ソコロフ監督の次の作品に大きな注目が集まっているのは当然のことだと言える。
あらゆることから判断して、「破いて、捨てろ」は「とっととくたばれ」の続編となると見られる。ソコロフ監督のデビュー作は、男性同士の戦い(父親と若い娘のボーイフレンド)であったが、新作では女性間の争いがテーマとなっている。
ストーリーはある一族の3代にわたる女性たちの紛争を中心に展開される。ポスターには、傷だらけ、青あざだらけの2本の手が描かれていることから、この争いも犠牲者なしには終わらないようだ。
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