ロシアの名作SF映画7選

Zhzhenov Georgy/Russian Look
 ソ連は長い間サイエンス・フィクション(SF)に夢中だった。1920年代、エヴゲーニー・ザミャーチンの小説『われら』(原題:Мы)や、史上初のSF映画『アエリータ』(原題:Аэлита)は、その新しい未来観で世界中の観客を驚かせた。

 宇宙開発競争の間、ソ連の科学者らは人工衛星や宇宙飛行士、宇宙基地を打ち上げて数多くの「世界初」を成し遂げた。この偉業に後押しされるように作られた数多くのロシアのSF映画の中から、絶対に見るべき7本の映画をご紹介しよう。

 

1.『スプートニク』(原題:Спутник)(2020年)

 このスリル満点のSFホラー映画は最近公開されたもので、国際的に激賞されている。時は1983年、地球に帰還する2人の宇宙飛行士が原因不明の悲劇的な着陸事故を起こす。一人は死亡し、もう一人は激しい着陸についての一切の記憶を失ってしまう。

 何が起こったのかを突き止めるため、政府の調査機関は生還したコンスタンチン・ヴェシニャコフを監視下に置く。しかし、彼のうねるような精神状態に対処しきれず、彼らは外部の神経学者タチアナ・クリモワを呼ぶ。 

 間もなく、観客はコンスタンチンの体内で恐ろしいエイリアンが成長していることを知る。しかし、この寄生怪物が宿主の体から這い出して来る場面もさることながら、映画の本当の恐怖は、施設を担当する赤軍大佐同様、タチアナがコンスタンチンの内側の心理的ドラマにだんだんと気付いていくプロセスにある。

*本作はアマゾン・プライム・ビデオで視聴できる。 

 これでもまだスプートニクが見たくない? ならばこちらを読んで見るべき5つの理由を知ろう

 

2.『死者からの手紙』(原題:Письма мёртвого человека)(1986年) 

 『死者からの手紙』は、核戦争による終末の後の、激しく感情的な瞑想だ。映画の主人公は、人々の尊敬を集め、「教授」とあだ名される科学者で、彼は世界の終わりや妻と息子の死を受け止めている。博物館の地下室に隠れている彼は、打ち負かされ、死にゆく人々の悲劇に囲まれている。多くの者は、彼の妻と同じく、放射線汚染によって今にも息を引き取ろうとしている。中には病んだ子供たちもいる。しかし、健全な者たちが中央地下壕へと避難すべき時が来ると、教授は子供たちと残ることを決める。彼らに対する思いやりが、自分が生き延びる必要性に勝ったのだ。

 この美しく憂鬱な映画は、コンスタンチン・ロプシャンスキーの初監督作品だ。もしこのあらすじを聞いてソ連の有名なポスト・アポカリプス映画、アンドレイ・タルコフスキー監督の『ストーカー』を思い出したなら、それはあながち間違いではない。ロプシャンスキーは実際に『ストーカー』(原題:Сталкер)の制作補佐をしており、タルコフスキーの大ファンだった。したがって、もしあなたがタルコフスキー好きなら、『死者からの手紙』もきっと楽しめるはずだ。

*ロシアン・フィルム・ハブ(Russian Film Hub)で視聴できる

 

3.『火を噴く惑星』(原題:Планета бурь)(1962年)

 パーヴェル・クルシャンツェフ監督の映画『火を噴く惑星』は、世界の映画監督らに影響を与えてきたにもかかわらず、見逃されがちなSF傑作だ。実際、『スターウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカス監督が1988年に訪露した際、彼は自らが『スターウォーズ』シリーズのゴッドファーザーと見なすクルシャツェフに会いたいと請うたという。 

 クルシャンツェフはSF映画の視覚効果や舞台デザインのパイオニアと考えられている。『火を噴く惑星』の衣装や舞台装置と、より最近の数々のハリウッドSFヒット作のそれらとの間には、たくさんの類似点が見つかる。『火を噴く惑星』で宇宙飛行士が着ている宇宙服は、『プロメテウス』(原題:Prometheus)(2012年)や『オデッセイ』(原題:The Martian)(2015年)といった近年の大ヒット映画の登場人物が着ているものとほとんど瓜二つだ。また、『火を噴く惑星』の惑星周回用ポッドとC-3PO風のお助けロボットは、『スターウォーズ』からそのまま出てきたようである。『火を噴く惑星』を見れば、間違いなく、我々が今日スクリーンで目にする驚異のSF世界の源流がよりよく理解できるだろう。

*ロシアン・フィルム・ハブで視聴できる

 

4.『不思議惑星キン・ザ・ザ』(原題:Кин-дза-дза!)(1986年) 

 人間のよりグロテスクな側面を探求する『不思議惑星キン・ザ・ザ』は、カルト的な人気を誇るSF映画の傑作だ。主人公は、誤って宇宙人のテレポーテーション装置に触れてしまって遥か彼方の砂漠の惑星プリュクに漂着した2人のソ連人だ。地球へ帰る手助けをしてほしいという2人の請願にプリュク星人は最初耳を貸さないが、マッチ箱を見つけたことで事態は変わる。この惑星は天然資源がひどく枯渇しており、プリュク星人はマッチをこの上なく貴重な物と見なしていたのだ。

 ブラックコメディと鋭い社会批評に満ちた『不思議惑星キン・ザ・ザ』は、技術的に進歩しているが多くの点で道徳的に後退している社会を描き出している。プリュク星の社会は、特権階級のチャトル人と、無権利階級のパッツ人という、2つの集団に分かれる厳格なカースト制度を特徴とする。パッツ人は、儀式的なお辞儀をし、「クー」という言葉を繰り返すことでチャトル人に対する尊敬と服従を示さねばならない。一方で、惑星の節度のない資源利用により、飲み水は稀で貴重な物となっていた。本作は、暗くディストピア的な世界を描いている一方で常に爆笑することができ、記憶に残る馬鹿げたシーンに満ちている。

*『不思議惑星キン・ザ・ザ』を見て忘れ難い体験をしたいなら、ロシアン・フィルム・ハブのこちらのページをどうぞ

 

5.『惑星ソラリス』(原題:Солярис)(1972年) 

 『惑星ソラリス』は、『ストーカー』に次ぐ、不動の名監督アンドレイ・タルコフスキーの有名映画だ。ポーランド人作家スタニスワフ・レムの同名SF小説に基づく『惑星ソラリス』は、海洋惑星ソラリスを周回する宇宙基地に滞在するソ連人宇宙飛行士の調査に送られたクリス・ケルヴィンという心理学者の物語である。間もなく、説明不能な現象が宇宙基地にいる皆に幻覚を見せ、気を狂わせているということが明らかになる。

 惑星ソラリスを周回していると、現実は信用できなくなる。論理や理性は、こうした不可思議な出来事が起こる理由を解き明かせない。ところで、この映画は原作を書いたレムが思い描いたものではなかったらしい。レム曰く、タルコフスキーの創作は原作を裏切るものであり、映画のテーマは「宇宙における人々の性愛の問題」になってしまったという。この主張が正当かどうかは、視聴者それぞれが判断することだ。

*この素晴らしい映画は、ロシアン・フィルム・ハブアマゾン・プライム・ビデオで視聴できる。

 

6.『イワン・ヴァシーリエヴィチ、転職する』(原題:Иван Васильевич меняет профессию)(1973年)

 『イワン・ヴァシーリエヴィチ、転職する』は、ロシア史上最も人気のある監督レオニード・ガイダイが生み出した愉快なタイムトラベル映画だ。実に驚くべき映画で、ロシア・ビヨンドの選ぶソビエト名作映画10選にもランクインしている。ガイダイは『作戦コード「ウィー」』(原題:Операция «Ы»)、『ダイアモンド・アーム』(原題:Бриллиантовая рука)、『コーカサスの女虜、もしくはシューリクの新しい冒険』(原題:Кавказская пленница, или Новые приключения Шурика)などのロシアの大ヒット映画を多数世に送り出した。彼の作品には同じ役者らが繰り返し出ており、彼の映画世界をいっそう愉快で魅力的にしている。 

 『イワン・ヴァシーリエヴィチ、転職する』では、ある発明家がタイムマシンを作り、1970年代のモスクワと16世紀のモスクワとをつなぐ入口を開く。そして彼は偶然自分の騒がしいアパートの管理人を過去に送ってしまい、管理人と瓜二つのイワン雷帝が入れ替わってしまう。その後はひたすら冗談のような滑稽なシーンが続く。例えば、イワン雷帝は有名なイリヤ・レーピンの絵――雷帝が我が子を殴り殺した場面を描いた絵――の写しを見て困惑する。

*この愉快な名作歴史SF映画はロシアン・フィルム・ハブで視聴できる。

 

7.『両棲人間』(原題:Человек-амфибия)(1962年)

 『両棲人間』は人魚姫風の心を強く打つストーリーを持つ大人気ソビエト映画だ。舞台はアルゼンチン、主人公はサメの鰓を持つ青年イフチアンドルだ。鰓は、型破りな父親が彼の命を救うために移植したものだ。イフチアンドルは乾燥した土地で長い間生きられないため、人生の大部分を海中で過ごしている。しかし、溺れた地元の美女を助けて恋をしたことで、間もなく海上の世界に関わるようになる。騒動が起こり、イフチアンドルは残酷で搾取的な現地の真珠採りたちと争わなければならない。悲しいことに、観客が望むイフチアンドルの恋は成就しない。 

 旧ソ連の外で『両棲人間』を楽しむ機会に恵まれた者は少なかったが、これが傑作だということを示すハリウッドの証拠が2つある。第一に、『パルプ・フィクション』などのヒット作を生んだクエンティン・タランティーノ監督は、1970年代に吹き替え版を見て楽しんだと言い、これをロシア映画のお気に入りの一つと呼んでいる。第二に、多くの評論家らが、ギレルモ・デル・トロがオスカーを手にした『シェイプ・オブ・ウォーター』を『両棲人間』の模倣と評している。どちらの映画もあらすじが似ており、主人公は同じく「両棲人間」と呼ばれている。さらに、『シェイプ・オブ・ウォーター』の時代設定は1962年だが、これは『両棲人間』が公開された年だ。実際のところ、こうした類似点には、偉大な監督による偉大なソビエト映画に対する単なるオマージュという以上の意味がありそうだ。

*『両棲人間』はロシアン・フィルム・ハブで視聴できる

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