Netflixで観るべきロシアの映画ベスト5

Alexander Mitta/ Marmot-Film, 2014
 ロシア・ビヨンドがストリーミングサービスを利用している人たちが観られるもっとも面白い映画を選んだ。メロドラマやコメディからロマンティックコメディや悲劇ものまで。

1.「ルサルカ(水の精の恋)」(2007年)

 今から13年前に、アメリカの「サンダンス映画祭」で話題を呼び、ワールドシネマ部門の最優秀監督賞を受賞したアンナ・メリキャンのドラマ。このあと、「ルサルカ」はベルリン、カルロヴィ・ヴァリ、ストックホルム、エレヴァンの映画祭でも受賞した。メリキャン監督も雑誌「ヴァラエティ」が選ぶもっとも将来性のある世界の映画監督の上位10位に選ばれた。 

 「ルサルカ」は、超能力を持つ(天災を操作することができる)少女と、彼女が自殺から救った若いビジネスマンとのロマンティックな恋愛映画。幻想的な筋書きと優しいユーモアとメロドラマが組み合わさった作品は、現在、ロシア映画では珍しいものになっているが、15年前、メリキャン監督の作品はブレークスルーとみなされた。正確なシナリオ、そしてメリキャン監督得意の手法である最後の予想外の展開。監督は「ルサルカ」以降、長編映画を数本製作している。ちょっと風変わりなアウトサイダーな女の子が裕福でシニカルな人々の世界に入り込み、彼らの人生観を完全に変えてしまうという映画である。しかし「ルサルカ」は、現在もメリキャン監督の最高傑作とされている。この作品では、若者のエネルギーと強力なストーリーが組み合わされ、恋するティーンエイジャーの映画が好きな人々にも、繊細で知的な映画が好きな人にも、同様に興味深いものとなっている。

2.「2日間」(2011年)

 インテリゲンツィア(知識人)と権力の関係はロシア文化にとって永遠のテーマである。2000年代の終わりから2010年の初頭にかけて、このテーマはロシア映画で積極的に取り上げられた。アヴォドチヤ・スミルノワ監督はこの問題をさまざまな視点で捉えたいくつかの作品を製作した。中でもこのテーマを扱った最初の作品で、もっともリリックなのがこの「2日間」である。

 モスクワの政府高官であるドロズノフが、地方都市にやってくる。彼の任務は、すでに忘れ去られつつある19世紀の作家の博物館を閉館し、その小さな屋敷が立つ場所に、豪華な政府官邸を建てることである。最初は熱心にこの任務に取り組むドロズノフだが、博物館の副館長として働く文学研究者のマリヤ・イリイニチナとの出会いがすべてを変えることになる。ドロズノフは彼女に恋をし、この恋のおかげで、ロシアの屋敷が救われる可能性が生まれる。

 スミルノワ監督の映画は、歴史的に対立する2者の間で妥協点を見いだせるかということをテーマにした牧歌的なストーリーでもある。監督は、インテリ層の代表と権力側との間にも議論や共感の余地はあると考えている。こうした確信は自身の経験から得たものだという。スミルノワ監督は、テレビジャーナリスト、映画監督として順調にキャリアを積み、数年前、1990年代初頭にキャリアをスタートさせた著名な政治家であるアナトーリー・チュバイスと結婚した。「2日間」はある意味で、スミルノワ監督の自叙伝的な内容となっている。しかし、同時にその雰囲気、風景、対話は、外国の観客に、ロシアの古典的な散文を思わせるものとなっている。

3.「8回のファースト・デート」(2012年)

 2020年秋、アンディ・サムバーグとクリスティン・ミリオティ主演の映画「パーム・スプリングス」がオンラインで公開され、大きな話題となった。これは「グラウンドホッグデー」のコンセプトとクラシカルなロマンティック・コメディが融合された作品である。

 作品の基になっているのは、アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが主役を演じた「50回目のファースト・キス」。マリウス・ワイズバーグ監督のコメディ「8回のファースト・デート」はどちらの作品にも似ている。この「8回のファースト・デイト」は、主人公の2人が、前の夜、別々の場所で寝ているのに、毎朝同じベッドで目覚めるというもので、ループにはまったことを理解した2人は互いについてよりよくしることになり、当然ながらロマンティック・コメディにつきものであるハッピーエンドで終わる。この映画の面白さはなんと言ってもキャストにある。というのも、2010年代に多くのロシア映画に出演していた現在のウクライナ大統領、ウラジーミル・ゼレンスキーが主役を演じているのである。

4.「シャガールとマレーヴィチ」(2014年)

 10月革命の後、マルク・シャガールは芸術人民委員になり、故郷ヴィテプスクに芸術家の共同体を創設するよう提案された。1918年にこの共同体に入ったのが、ロシアアヴァンギャルドの新星、カジミール・マレーヴィチであった。夢想がちで柔らかい人柄のシャガールと、野心的でわがままだったマレーヴィチとの関係はすぐにはうまくいかなかった。また時が経つにつれ、争いの原因は増えていった。ソ連映画の古典的監督、アレクサンドル・ミッタはこのロシア・アヴァンギャルドの2人の天才の対立を、若さがいつでも経験よりも勝り、暗い要素が明るい高揚に勝る戦いの場として描いた。

 コントラストを強調したこの作品は、芸術家たちが生まれたばかりの美学を作り出そうとする時代の雰囲気を感じさせる。これは、世界的に有名な画家たちの興味深い姿を知ることのできる作品の1つであろう。2010年公開作品。

5.「乗組員」(2016年)

 「シャガールとマレーヴィチ」のアレクサンドル・ミッタ監督が1979年に製作した、ソ連映画史初となる事故をテーマにした作品。飛行機事故を扱ったこの映画はソ連のヒット作となったが、ほぼ40年後にリメイク作品が公開された。製作したのは、もっとも大きな興行収入を記録していることで知られるニコライ・レベジェフ監督。若いながらも経験豊富なパイロットが、地面と衝突しそうになる飛行機を英雄的に救うというこの物語は、ハリウッド風に作られており、最後の最後まで息をつかせないものとなっている。珍しいアトラクション映画、いつまでも古びることがなく、公開から4年過ぎた今もなお、新しさを感じさせるものとなっている。

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