10冊のノンフィクション:ロシアについて外国人が書いた

Basic Books, Thomas Dunne Books, Weidenfeld & Nicholson, Yale University Press
 世界中のライターが、この広大で寒~い土地に関心をもち、ソ連とロシアのすべてをさまざまな角度から調べている。時にはとてもスリリングな読み物になることもある。

1. セルゲイ・プローヒー『チェルノブイリ』

(Serhii Plokhy – Chernobyl)

 HBOのテレビドラマ『チェルノブイリ』にハマった人なら、この本は必読だ。世界最悪となった破局的な原発事故の夜、実際に何が起きたのか?この本は、事件の時々刻々を再現している。

 プローヒーは、ウクライナ系アメリカ人の学者で、さまざまな歴史を扱ったノンフィクションを多数書いている。その中には、受賞歴のある『最後の帝国』も含まれる。これは、ソ連崩壊に関する作品だ。

2. マーク・ガレオッティ『泥棒たち:ロシアのスーパーマフィア』

(Mark Galeotti - The Vory: Russia’s Super Mafia)

 原題の「The Vory」は、ロシア語で「泥棒」を意味する「воры」の音訳。これは、外国人がロシアについて書き、ロシア語に翻訳された珍しい本の一つだ。イギリスの学者マーク・ガレオッティは、ロシアの治安機関とウラジーミル・プーチンについて長年研究してきた。

 この本は、20世紀初頭からワイルドな1990年代までのロシア・マフィアの歴史を探究している。そして現代の官僚もすべて泥棒だと書いている(この本を読むときは、ガレオッティはロシアの厳しい批判者であることを念頭に置いてほしい)。

 ところで、ガレオッティの次作は『プーチンについて話す必要がある We Need to Talk About Putin』。その中で彼は、「なぜ欧米は彼を誤解するのか、正しく理解するにはどうすればいいか」について語っている。

3. ウィリアム・タウブマン『ゴルバチョフ:その生活と時代』

(William Taubman - Gorbachev: His Life and Times)

 この本は批評家たちから傑作と評されている。ソ連の最初で最後の大統領ゴルバチョフに関する著作だ。ゴルバチョフは、グラスノスチ(情報公開)、ペレストロイカを始めた人物であり、その結果、ベルリンの壁が崩壊した。 

 著者は、多くの研究、調査と、ゴルバチョフとの何度かの非公式インタビューを経て、この本を書いた。元大統領は非常に誠実で、彼のかつての迷い、躊躇について率直に語ったという。この前の本は、別のソ連指導者、ニキータ・フルシチョフに関するものだ。

4. エリック・ハセルティン『モスクワ駅のスパイ:冷戦の致命的脅威と戦う二重スパイ』

(Eric Haseltine - The Spy in Moscow Station: A Counterspy's Hunt for a Deadly Cold War Threat)

 この本は、政治探偵小説と称されることも多い。1970年代の冷戦、そして米ソ間のスパイ合戦、陰謀、罠(トラップ)についての物語だが、そこには現代のテクノロジーはない。

 「もしあなたが、『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』(KGBのスリーパー・エージェントを描いたドラマ)がもうひとつ面白くないと思っても、この血沸き肉躍るノンフィクションスリラーは気に入るだろう」。アマゾンの本の紹介にはこう記されている。

5. サイモン・モリソン『ボリショイ劇場の内幕:帝政時代から今日までのロシア・バレエの秘密』

(Simon Morrison - Bolshoi Confidential: Secrets of the Russian Ballet from the Rule of the Tsars to Today

 ロシアの主なステレオタイプを3つ挙げるとすると、ウォッカ、トルストイ、バレエといったところか。サイモン・モリソンは、ロシアのバレエの殿堂「ボリショイ劇場」の舞台裏のあらゆる謎を明らかにしようと思い立った。

 セックススキャンダル、自殺、陰謀…。映画『ブラック・スワン』のファンなら、これらの興味津々の事実(そして噂)を夢中になって読みふけるだろう。

6. サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ『ロマノフ家:1613~1918』

(Simon Sebag Montefiore - The Romanovs: 1613-1918)

 このベストセラーは、ロマノフ朝を描いた叙事的な物語。ロマノフ朝は、1613年初めから1917年に倒れるまで、ロシアを支配した王朝だ。著者は、プライベートな問題にとくに注意を払い、あらゆる政治的決定の背後にあるのは非常に個人的な要素だと信じている。

 ただし、興味深い読み物ではあるものの、歴史の教科書に使うことはお勧めしない。ネットフリックスの『ラスト・ツァーリ: ロマノフ家の終焉』に、モンテフィオーリは専門家の一人として登場するが、数十に及ぶ事実誤認を犯したとして、こっぴどく批判された。 

 (この著作のほかに、モンテフィオーリは、ロシア史上のさまざまなエピソードについて多くの本を書いている。その中には、若きスターリンの物語、エカテリーナ大帝〈2世〉とポチョムキンの恋愛なども含まれる)。

7. ペトラ・クヴェ&ピーター・フィン『ジバゴ事件:クレムリンとCIAの発禁本をめぐる闘い』 

(Petra Couvée and Peter Finn - The Zhivago Affair: The Kremlin, the CIA, and the Battle Over a Forbidden Book)

 ジャーナリストで学者である二人のライターは、長い歳月を費やして驚くべき真実を明らかにした。すなわち、詩人ボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』が原語のロシア語で西側で出版された際に、米CIA(中央情報局)が関与していたという。

8. ジュリアン・バーンズ『時間のノイズ』

(Julian Barnes. The Noise of Time)

 純粋なノンフィクションではないが、この驚くべき本は無視できない。ソ連の作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチに関するこの伝記は、英国の才能ある小説家ジュリアン・バーンズによって書かれた。実はこの伝記は、未だに真贋論争が止んでいない、ソロモン・ヴォルコフ編『ショスタコーヴィチの証言』に基づいている。

 だから、この本は、『証言』の「事実」に触発されており、さらに、その主人公ショスタコーヴィチが日々何を感じていたかについての、ライターの想像も織り込まれている。

 例えば、この本はあなたに、この時代の恐るべき全体像を与えてくれるだろう。スターリン時代の1936年、人々がいかに連日連夜、警察に連行され収監されるのを恐れ、覚悟していたか。

9. ロバート・スティーブンソン『我々は資本主義を建設する!移行期のモスクワ1992~1997』

(Robert Stephenson - We Are Building Capitalism!: Moscow in Transition 1992-1997)

 著者は幸運なことに、1991年のソ連崩壊後の新しいロシアの初日を、自分の目で見ることができた。彼は1990年代初頭にモスクワで働いており、あちこちの通りや人々の写真を撮り、その驚くべき変化を目撃した。このフォトアルバムには、著者のコメントとストーリーが含まれているので、この激動の時代について理解を深め、実感することができる。

10. スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(三浦 みどりによる日本語訳がある)

 2017年、英語圏に、ベラルーシのノーベル賞作家、アレクシエーヴィチによる、第二次世界大戦に関するドキュメンタリーの待望の翻訳が現れた。原作は1985年に書かれている。作者は、前線にいた女性たちの言葉を書き留めた。

 このドキュメンタリーは、「女性の勇気」の記念碑だ。女性たちが克服しなければならなかった恐怖を実感し、涙腺崩壊に備えよう。

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