ウリツカヤは、最も傑出した現代ロシア人作家の一人だ。彼女は19世紀ロシア古典小説の伝統の真の継承者であり、歴史事件を背景として、一家族の人生を数世代にわたって追う。加えて、政治と国家体制が人の運命にどのような影響を及ぼすかということも彼女の関心事である。
特に一読をお薦めするのが、『クコツキーの事例』(Казус Кукоцкого)、『緑の天幕』(Зеленый шатер)、『通訳ダニエル・シュタイン』(Переводчик Даниэль Штайн)だ。ウリツカヤがなぜノーベル文学賞に相応しい作家なのか、詳しく知るにはこちら。
彼女の小説を読めば、タシュケントやイェルサレムの東洋の色彩に浸り、灼熱のスペインを駆け抜け、ペテルブルクやモスクワを散歩することができる。時には戦後ウクライナのユダヤ人村落に行き着くこともある。
諜報員、画家、詐欺師――ルービナの小説の登場人物は常に非凡だ。話の筋はいつもひねりが効いている。ルービナの語りは音楽的で、色彩豊かな描写に富んでいる。彼女の小説で見逃してはならないのは、『通りの日向』(На солнечной стороне улицы)、『上マスロフカ通りで』(На Верхней Масловке)、『メシアが行く』(Вот идет Мессия)、『コルドバの白鳩』(Белая Голубка Кордовы)、『ロシアのカナリア』(Русская Канарейка)だ。
彼女は人間オーケストラだ。ペトルシェフスカヤはすでに80代だが、自身のキャバレーで歌って踊り、エキセントリックな帽子をかぶり、物語や劇のシナリオも書いている。
彼女の小説で最も有名なのが、『時と夜』(Время ночь)だ。これは日常生活の恐怖、初めてのセックスの恥じらいの記憶、私的空間の完全な欠如など、ソビエト時代後期の女性の暮らしをありのままに描写したものだ。
その他、ペトルシェフスカヤは家族をテーマにした恐ろしくかつ愉快な短編集をいくつか著している。ソ連での子供時代の記憶を綴った興味深い自伝『メトロポールの少女』(Маленькая девочка из ‘Метрополя’)もお薦めだ。
ペトルシェフスカヤの日本語に翻訳された『私のいた場所』について詳しくはこちら。
あのレフ・トルストイの遠戚が最初に著した小説は大成功を収めた。ディストピア小説『クィシ』(Кысь)は、かつての姿を失った人間と奇妙な動物が暮らす終末後の世界を描いている。この世界の人間は言葉さえもほとんど忘れてしまったようだ。
その後トルスタヤは長編小説を書いていないが、いくつかのエッセー・中編・短編集がヒットし、多くの言語に訳されている。短編は一つ一つが人生そのもので、戦争や恋愛の記憶が非常に生彩のある、隠喩に満ちた言葉で描写されている。
タタール系作家が2015年に発表したデビュー作、『ズレイハは目を開ける』(Зулейха открывает глаза)は、ロシアの文壇でセンセーションを巻き起こした。同作はいくつかの賞を受賞し、驚異的な部数を売り上げた。これは家族が土地や資産を没収されたムスリム少女の切ない物語だ。少女はスターリン期の強制収容所へと護送される。この小説を基にすでにドラマも撮影されている。
最近出た彼女の第二作『私の子供たち』(Дети мои)はヴォルガ・ドイツ人を扱ったもので、これも舞台はスターリン時代だ。まだ原作が出版されていないうちから、いくつかの外国の出版社が翻訳権を買いたいと手を挙げた。というわけで、鮮やかでエスニックな色彩と魅力的で感動的なプロットを求めるなら、読むべきはヤーヒナだ。
ダゲスタン共和国出身の若手作家が書くのは、コーカサスの現代と伝統との結合を描く全く女性らしくない小説だ。若者の生活様式、結婚式や媒酌――これらすべてが鮮やかな民族的色彩で描き出されている。
ガニエワは、「グラ・ヒラチェフ」という男性風のペンネームでデビューした。その中編『サラーム、ダルガート!』(Салам тебе, Далгат!)は、マハチカラの一人の若者の一日を描いたものだ。若い女性がこれほど真実味ある力強い男性世界の作品を書けるとは誰も想像できなかった。以来、ガニエワの著作はいくつか外国語に翻訳され、彼女はロシア代表の一人として世界中の書籍見本市の常連となっている。
彼女は、現代ロシア文学には珍しいジャンル、未成年向けの中編とホラーを結合させたことで、「ロシアのスティーヴン・キング」「ホラーの女王」と呼ばれている。
例えば、中編『むずかしい年ごろ』(Переходный возраст)は、世界征服を目論む女王アリに脳と体を奴隷化された少年の物語だ。スタロビネツのホラーは、神話やSF、未来的ディストピアの様相さえ呈している。「国民的ベストセラー」賞の最終候補リストに入った長編『生きる者』(Живущий)が好例だ。
オリガ・スラヴニコワの小説は、作風が一つ一つ違っており、ジャンルさえも異なっているようである。長編『2017』は、終末後の世界の生態系の壊滅や無意味な流血内戦を描くディストピア小説としてロシアの作家らの間で好評を博した。他の作品にはマジックリアリズムの要素が見られる。『不死身』(Бессмертный)という作品では、体が麻痺した男の妻と娘が、彼のため、ソ連が崩壊したことを隠して新しい現実を作り出す。最新の長編『走り幅跳び』(Прыжок в длину)は、消えて宙を舞うことのできる陸上選手の物語だ。
チジョワの小説『女の時代』(Время женщин)のドイツ語訳の題は『女の物言わぬ力』だが、これは本質を突いている。女性らは(よぼよぼの老女でさえ)多くのことができるが、彼女らが集まってみれば、皆男性ではとても対処できないような数々の不幸を経験してやり過ごしてきたことが分かる。しかし彼女らは黙って自分の十字架を背負っているのだ。
女性像はチジョワの多くの小説で見事に描き出されている。作家が特に注意を払うのがソビエト時代だ。彼女は革命期、内戦期、第二次大戦期、戦後の平和な時代の生活を描く。『ちびのツァヘス』(Крошка Цахес)がその一例だ。また彼女の作品においては、彼女が生まれ育った街レニングラード(現サンクトペテルブルク)が実に絵画的に描かれている。チジョワの最新の長編『記憶で書かれた街』(Город, написанный по памяти)はまさにレニングラードをテーマとした作品で、自分の家族に起きた出来事やこの街で過ごした子供時代の記憶が語られている。
おそらくHBOやネットフリックスは、マリアム・ペトロシャンの小説『ある家の出来事』(Дом, в котором...)を基に大ヒット作品を作ることができるだろう。想像してほしい。身体障害を持つ子供たちの閉鎖的な施設。そこでは現実と神話世界との境界が薄れている……。実質的に新たなホグワーツだ!
この物語は、作者が学校時代にノートに綴っていた短編の空想小説から生まれたものだ。『ある家の出来事』は今では数十ヶ国語に訳されたベストセラーで、彼女はこれでいくつかの文学賞を受賞した。
ちなみにスティーヴン・フライは、ペトロシャンを「プーチン時代」の最も興味深い作家の一人に挙げている。
医学専攻のステプノワは、有名な先人、アントン・チェーホフやミハイル・ブルガーコフに負けず劣らず、人間の魂を巧みに「プレパラートに載せて」みせる。彼女の最初の作品『外科医』(Хирург)は、ジュースキントの『香水』に例えられる。
ステプノワの最も有名な作品『ラザロの女たち』(Женщины Лазаря)は、ある男の、世代も運命も異なる3人の女への愛と、この包括的な愛のために彼がどんな手段に出得るかを描いている。
自身の最も有名な小説『自由工場』(Завод ‘Свобода’)でブクシャは、多くの若手作家と同様、ソ連時代に目を向けている。2014年、30歳になったばかりの作家は、この作品で権威ある「国民的ベストセラー」賞を受賞した。最近英訳版が出た。
この小説においてブクシャは、ソビエト政権成立期の最初の数年間をペトログラードのある工場のごく普通の労働者らの独白という形で描き出している。作家は腕の立つ名文家でもあり、当時の実際の話し言葉やいわゆる「産業小説」の形式を忠実に再現している。
ブクシャは詩や短編も書いており、人気シリーズ『偉人伝』(Жизнь замечательных людей)では伝説的なアバンギャルド芸術家のカジミール・マレーヴィチの伝記を著している。
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