日本美術の至宝をプーシキン美術館で展示:「江戸時代の絵画と浮世絵の傑作」展始まる

Moskva Agency
 前例のない規模と内容の日本美術展「江戸時代の絵画と浮世絵の傑作」が、プーシキン美術館で始まった。

 「モスクワのような美術展慣れしている都市でさえ、これは前例のないユニークなプロジェクト。確かに、プーシキン美術館では、定期的に日本美術を展示してきたが、私たちが今日目にしているのは、類例のないプロジェクトであり、ただ夢見ることができるだけで、我々がそれを実現できるとは到底考えられなかった」。モスクワの美術の殿堂「プーシキン美術館」のマリーナ・ロシャク館長はこう語った。

 17~19世紀の日本の大画家、名匠の手になる135作品について、内外のキュレーターは、異口同音に日本美術の最高水準を示すものとしている。これは、日本の3つの美術館の所蔵品が一堂に会したからだけではない(東京国立美術館、千葉美術館、板橋区立美術館に、プーシキン美術館とモスクワの東洋美術館のコレクションも加わっている)。この展覧会では、初刷りに近く、保存状態も最良のものが選りすぐられている。日本の美術の教科書に載っているような名品ぞろいだ。二流の展示品はない。

 「要するに、この展覧会そのものが日本文化の教科書のようなもの」。田沢裕賀(たざわ・ひろよし)東京国立博物館学芸研究部調査研究課絵画・彫刻室長 は、「アガニョーク」誌にこう説明する

 田沢氏は、今回の展覧会のキュレーターの一人でもある。「江戸時代の名品ばかりが選りすぐられている。展覧会のカタログに載っているすべての作品が名のある傑作ばかり」

 2つの作品は国宝(渡辺崋山〈1793~1841〉「鷹見泉石像」と久隅守景〈1620–1690〉「納涼図屏風」)、9作品は「重要文化財」、さらに6作品は旧「重要美術品」だ。

 展覧会の「名刺」となっているのが、俵屋宗達「風神雷神図屏風」。酒井抱一「夏秋草図屏風」も展示される。

 他に、円山応挙、与謝蕪村、伊藤若冲、曽我蕭白などの大家の作品や、池大雅「酔李白図」も。また『伊勢物語』、『源氏物語』、『徒然草』を題材とした巻物も出品される。浮世絵は、18世紀の初期作品から江戸末期のものまで。

モスクワの美術館で日本の気候を再現

 プーシキン美術館の歴史の中で、日本の絵画展は、今回が初めてではなく、既に何度も開催されている。1960年代には、葛飾北斎の作品数十点を展示している。

 アイヌラ・ユスーポワ氏は、プーシキン美術館の版画の主要な専門家で、今回の展覧会「江戸時代の絵画と浮世絵の傑作」のキュレーターを務めるが、彼女によると、現在では日本国内でさえも、これほどの展覧会を開くのは無理だろうとのこと。というのは、最近20~30年で、展覧会開催の条件――気候と照明――に対する日本の美術館の要求が大変厳しくなっているから。

 「そう、確かにホールは薄暗い」と、ユスーポワ氏も認める。「でも、しかたがない。例えば、プーシキン美術館のホワイト・ホールや階段にはガラス張りの天井があるので、すべて覆ったうえで、照明をチェックする。また、一定の湿度をつくり出す必要もある――最大で60%の。日本は湿度が高いのに、ロシアはご存知の通り、その点あまり適さない…。我々は、日本で展示されているのとまったく同じ条件をつくるよう努めている」

 これと同じ理由により、展覧会は2回に分割される。作品の半分は、9月4日から30日まで、もう半分は、10月3日から28日まで展示される。日本で採られている基準によると、この種の作品は4週間以上展示することができないからだ。

美術を通じての交流

 この展覧会のプロジェクトは、露日交流年の主要行事の一つになる。

 「日本とロシアの関係が特別なものであることを示すために、こうした展覧会が必要だった。ここでは、領土の面積をどうするとか、何かの分野の成果がどうだとかいったことは話題にのぼらない。共通の人道的価値、両国民の精神性について語り合っている」。プーシキン美術館のマリーナ・ロシャク館長はこう指摘した。

 美術館は、展覧会のために特別な記念品のコレクションを用意した。その制作に参加したデザイナーたちは、江戸時代の芸術と美学を注意深く研究し、日本の巨匠の作品にインスパイアされて、作品を作った。そのなかには、ブローチ、ヘアアクセサリー、栞、Tシャツ、扇などの装飾品も含まれる。

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