ロシアの冬用羊毛ブーツが履きたくなる、9の粋な事実

 ロシアのワーレンキは、冬に人々を暖かくするだけでなく、癒しの効能も備えている。

 ロシアのワーレンキ(ヴァレンキ)よりシンプルなものなどあり得ようか。この伝統的な冬の履物はマトリョーシカサモワール同様、長い間ロシアのシンボルであり続けている。今日、ウール製の温かいブーツは村だけでなく、都市でも履かれており、ロシアのデザイナーたちは刺繍や装飾の入った新しいモデルを提供している。しかし、ワーレンキが風邪の治療薬としても利用できるとはご存知だっただろうか? 9つの面白い事実をご紹介!

ワーレンキはキプチャク汗国起源

 歴史家の考えでは、フェルトは古代の遊牧民によって発明された。彼らはユルトを覆ったり帽子を作ったりするのにフェルトを使っていた。フェルト用のウールはキプチャク汗国の時代(13~14世紀)にロシアに伝来した。冬には人々はピムィと呼ばれるフェルトのブーツを着用していた。これは今日ではもっぱら北方の民族の間で毛皮のブーツとして知られるが、これがやがてワーレンキへと姿を変えたのだ。今日では、ワーレンキはロシアとCIS(独立国家共同体)の国々でのみ生産されている。

高価な冬の履物

 18世紀までワーレンキは手製で、シベリアと北方のいくつかの地域でしか生産されていなかった。そこでの手作業は長く過酷だった。ブーツの上部は個別に作られてから靴底に縫い付けられた。現在の姿のワーレンキは18世紀にニジニーノヴゴロド州で登場した。当時のワーレンキキは高価で、一家族が一足を共有しなければならなかった。19世紀にようやくワーレンキの大量生産が始まり、国内で最も人気のある冬のブーツとなった。

 すべてのワーレンキは似ている 

 左右のワーレンキに違いはない。履いたときに、履き手の足の形に合わせて変形する。ロシアでは、ワーレンキのサイズはふつうセンチメートルで表示される。しかしウールは縮むので2~3 cm大きめに見ておいたほうが良い。ワーレンキは、使用頻度にもよるが、10年かそれ以上履くことができる。

ワーレンキには療養効果がある

 天然の羊毛は湿気を吸収して気化させるので、足を乾燥した状態に保てる。このように、ワーレンキを履くことで風邪に対処できるのだ。またウールはラノリンを含むが、この成分は筋肉やリューマチの痛みを効果的に和らげ、傷を癒してくれる。昔は村の年長の住民らは夏でもワーレンキを脱がなかった。血行が良くなると考えていたのだ。

チーム・ロシアのユニフォームとしてのワーレンキ

 2002年にソルトレークシティーで行われた冬季オリンピックの開会式で、チーム・ロシアはワーレンキにガロッシュを重ね履きして入場し、記憶に残る行進をした。 

 ところで、ワーレンキは今日、石油・ガス産業の労働者や、それから鉄道作業員の冬のユニフォームの一部として着用されている。

 そしてもちろん、ジェド・マローズ(極寒爺さん)やスネグーロチカ(雪姫)がワーレンキ以外のブーツを履いている姿など想像もできない!

 ロシア人はワーレンキ投げで競う

 ワーレンキ投げ選手権はロシアのアルハンゲリスクやスィクティフカル、セヴェロドヴィンスクなどの北方の地域で定期的に開かれる。ロシア人は遠投の距離や精度を競い合う。

 

 世界記録

 ロシアのレコード・ブックに記録される最大のワーレンキは高さ168 cm、底の長さ110 cmで、キネシマという街(中央ロシア)で作られた。史上最小のワーレンキも同じ街で作られ、長さはたった6 mmしかない。

 ワーレンキをテーマにした博物館はモスクワ、キネシマ、ムイシキンで目にすることができる。ロシアのいろいろな種類の伝統的な冬の履物が展示されている。

 運勢占い

 ロシアの冬の履物は将来を占うのに広く用いられていた。例えば、スヴャトキ(正教のクリスマスイブから神現祭までの期間)の間、若い女性が塀の向こうにワーレンキを投げるという伝統があった。地面に着いたさいの向きで若い女性は自身の将来の結婚について推測することができた。もしブーツの爪先が家のほうを指したら、この先一年結婚式は望めない。だがもし爪先が反対のほうを指したら、家族は楽しいお祝いの準備をするのだった。もう一つ、新居への引っ越しに関わるこんな習慣も。ワーレンキには妖精が住むと考えられていたため、ワーレンキも新居に必ず持って行った。

いつまでも廃れない伝統の色

 ワーレンキはふつう茶色や黒、灰色、白のウールで作られる。長持ちさせるため、ワーレンキの上からガロッシュを履かなければならない。現代のロシアのデザイナーは、氷の上で滑らない耐久性のあるゴムの靴底を付けてワーレンキを作っている。ワーレンキを手に入れるのに特別な店を探す必要はない。このシンプルは冬の履物はだいたいどこでも売られているからだ。

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