モスクワの斬新なアヴァンギャルド建築7選

Ludvig14/Wikipedia
 モスクワでは、建築の至宝はしばしば、クッキーをカットしたような一律のアパート群と醜悪な工業用建築物の間に、窮屈そうに隠れている。モスクワの建築の美と独創性を理解するためには、ソビエト時代初期の代表的傑作は必見だ。

  1. カウチュク工場付属クラブ

カウチュク工場付属クラブ。モスクワ、プリュシーハ通り、64。

 1920~1930年代にロシア構成主義は、モスクワにいくつもの極めて印象的な建築物をもたらしたが、プリューシハ通り64番地に現存するこの建物もその一つだ。

 1929年に完成した、化学工場の「カウチュク工場付属クラブ」は、正面玄関のホールが完全な円筒形で、メインホールと両サイド翼が四分の一の円筒形をなし、あたかも化合物の分子モデルに見えるように設計されている。

 しかし、この建築イノベーションに、技術は追いついていなかったので、構成主義の建築家コンスタンチン・メーリニコフの構想のすべてが実現できたわけではない。彼はもともと、壁を移動させてメインホールの面積を増やす方法を考えていたのだが、建築の初期段階でのミスで実現されなかった。

  1. ルサコフ公共事業従業員同盟クラブ(通称「ルサコフ労働者クラブ」)

ルサコフ公共事業従業員同盟クラブ(通称「ルサコフ労働者クラブ」)。

 メーリニコフの構成主義によるもう一つの例がこれ。3本の「歯」を備えた巨大な歯車のような外観をもっている。路面電車の車庫付近に、労働者のためのクラブとして、ソコーリニキ地区に建てられた。名前は、革命家イワン・ルサコフを記念したもの。

 内部から見れば、客席のアンフィシアターから3つの桟敷席が伸びており、外から見ると、ファサードにかぶさった形になっていて、まるで3本の巨大な歯が突き出ているかのようだ。ストロムィンカ通り6番地にある、このクラブの建物は最近修復されて、現在はロマン・ヴィルチュク・シアターの本拠地となっている。

  1. 「透かし彫りの家」

「透かし彫りの家」。

 レニングラード大通り25番地にある、この6階建ての実験的なアパートの構想が、もし大規模に実現していれば、モスクワの景観はずっと面白かっただろう。ソ連市民の典型的なアパートとして設計され、完成したのは1941年。ソ連が第二次世界大戦に突入したときだ。そのあおりで、この「透かし彫りの家」は単なる実験に終わった。

 その主な特徴は、ウラジーミル・ファヴォルスキーがデザインした建物の外壁だ。透かし模様とレリーフがほどこされており、ルネッサンス様式の要素がある。しかし、建築家らにはまた、建物の四角張った、あまり魅力的でない外観を隠すという、実用的な目的もあった。

  1. ル・コルビュジエの “巨大ムカデ”

ツェントロソユーズ(旧ソ連消費者協同組合中央同盟会館、ミャスニツカヤ通り39番地)

 次は、ツェントロソユーズ(旧ソ連消費者協同組合中央同盟会館、ミャスニツカヤ通り39番地)。これは、1930年代に、フランスの大建築家ル・コルビュジエの設計で建設された。彼が設計した、現存するソ連時代の建築はこれだけだ。モスクワっ子の間では、「ムカデ」のあだ名で知られる。支柱がムカデの足を思わせるからだ。

 1928年、ル・コルビュジエは、ソ連消費者協同組合中央同盟会館のコンペに参加し、優勝した。設計はその1年後には完成していたが、建築資材の不足のため、竣工は1936年にずれこんだ。

 近年でこそ、この建物もむしろスタンダードに見えるが、1930年代には、「足」の上に乗った建物、ガラスだけでできた壁面など、非常に革新的だった。しかし、その後数十年のうちに、モスクワには「ムカデ」がもう少し建てられた。そのうち最も有名なのは、地下鉄のVDNKh駅付近とベゴヴァヤ通りにそれぞれある。

  1. 「船の家」

 「船の家」あるいは「タイタニック」とも呼ばれるこの巨大建築は、ボリシャヤ・トゥーリスカヤ通り2番地にある。ソ連時代に建てられた最大のアパートの一つだろう。竣工は1980年で、14の入り口、980のフラットがあり、通りに沿って立つその全長は400㍍。強烈な印象を与えるが、あまり大きすぎて、怪物的な圧迫感がある。

 完成まで10年を要したこの建物は、近くのもっと小さな建物から思い切り目立っており、あたかも海を航海するクルーズ船のように見える。ニックネームの通りだ。

 噂によると、設計したのは原子力発電所建設の専門家で、核爆発に耐えられるようにできている。また別の噂によれば、窓はあるのにアクセスできない、未使用の部屋があるという。

  1. 「旗」ビル

 一定の角度から眺めると、プレスネンスキー・ヴァール36番地にある、このくさび形の住宅は、まるでファサードしかないように、平べったく見える(1910年に建設)。この錯覚は、建物の正面と側面が非常な鋭角をなすように作った「いたずら」から生まれる。ちなみに38 番地にある隣の建物も同様の形をしている。

  1. ゴスプラン(国家計画委員会)ガレージ

ゴスプラン(国家計画委員会)ガレージ。

 コンスタンチン・メーリニコフは、純粋に機能的な建築も避けなかった。その方面での最も知られた作品は、ゴスプラン・ガレージだ。モスクワの現代美術館「ガレージ」は、2011年までここにあり、その名を冠している。

 ゴスプラン(ソ連国家計画委員会)は、ソ連における生産計画を決定する組織で、その元ガレージは、アビアモトールナヤ通り63番地にある。

 かつては工業用建物では想像もつかなかったような、アバンギャルド・デザインが目を引く。例えば、巨大な円形の窓だ。現在このビルは、電力会社がある、落ち着いた工業地帯に突っ立っている。

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