安い肴とツケのウォッカ

友達と飲んでいるロシアの作家アレクサンドル・クプリン

友達と飲んでいるロシアの作家アレクサンドル・クプリン

=ロシア科学アカデミー ロシア文学研究所(プーシキン館)
 1908年1月、「ロシアの言葉」紙に、ロシアの作家とアルコールの関係の戯評が掲載された。1月31日はウォッカ誕生の日。昔の記事を通じて、当時の作家の飲み方を探ろう。

 フランスの雑誌「ラ・レヴュー」は、「フランスの作家は何をいかに飲んでいたのか」と題する興味深い調査を実施した。これにインスピレーションを受けたサンクトペテルブルクの新聞の一つも、ロシアの作家についての調査を行った。そして、フランスの作家も、ロシアの作家も、アルコールは口にせず、おいしい湧水のみを夢見ていたという結論がでた。

 フランスの作家について、これがどれほど正しいのかはわからないが、ロシアの作家について、「アウディアートゥル・エト・アルテラ・パルス(別の側の意見も聞くべし)」の方法に沿って、調査を行うことを決めた。「別の側」とはこの場合、ロシアの作家が通う飲食店の店員であるため、文学レストラン「ウィーン」の店員ということになる。このウィーンには、モスクワやサンクトペテルブルクの作家の多くが集まり、アレクサンドル・クプリン、ニコライ・グミリョフ、アルカディー・アヴェルチェンコ、アレクセイ・トルストイは常連客だった。

レストラン「ウィーン」の店員

 「ロシアの作家は大体浄水ウォッカを飲んでいるが、ビールも嫌っておらず、いつも脚付きグラスで頼んでくる。財布が許せば、良質だが高額な銘柄のコニャックも喜んで頼む。質の良くない安いワインをロシアの作家はあまり飲まない。飲むのはふるまわれた時だけ。リキュールについては、それほど好まれているとは感じない。リキュールでちゃんぽんするのではなく、コニャックだけおかわりすることを好んでいる」

 「肴については、ロシアの作家は価格の一番安くてボリュームの一番大きな肴をよく頼む。多くがまったくつままずに飲むか、またはウォッカのショットをビール一口で締める。ロシアの作家はミネラルウォーターを飲まず、クワスを頼む。しかも氷入りで」

 「ロシアの作家はツケで飲むが、現金払いや分割払いで飲む作家もいる。時に人を担保として残し、後で買い戻す。ロシアの作家の飲む量は商人の次。平均的なショットグラスの大きさは商人より少し小さくて、一般社会より少し大きい。ここでは作家グラスと呼んでいる。泥酔するまで飲む作家も一部いるが、ほとんどは上手に温まり、前後不覚にはならない。酔っぱらった作家はキスをしたり、口喧嘩をしたりする。芸術について語ったり、受け取ったまたは使い果たした、または受け取るつもりまたは使い果たすつもりの前払金について話したりする作家もいる。ちなみに、この前払金については、作家の多くがかなり誇張してることがわかる」

居酒屋「カペルナウム」で

 「ロシアの作家は何をどんな風に飲んでいた?」

 「ウォッカだよ。肴はあまり頼まない。ビールから始める人もいる」

 「ワインは?」

 「尊敬の念がないのさ。老いた作家はワインを頼んで評価していたが、現代の作家はウォッカ以外合わないとさ」

 「で、たくさん飲むの?」

 「ひどく飲むよ。作家よりひどいのは職人だけ」

 

「フョードロフ」の店員

 「ロシアの作家はカウンターで飲むことが多い。肴には安いオープンサンドの中から選んでる。一部の小説家はウォッカにエキスを入れてる。記者はいつも炎のごとく熱いピロシキを頼んでくる。いつも寒いところにいて外回りやってるからね。作家と俳優が一緒になるときは、円卓に座らせる。なんせ手のジェスチャーが派手なもんだから」

「キューバ」の店員

 (キューバは高いレストランで、興行師のディアギレフ、ダンサーのニジンスキー、オペラ歌手シャリャピン、パトロンのマモントフなどが来ていた。)

 「ロシアの作家はシャンペンをまったく頼まない。早い朝食でも、シャンペン以外に何も頼まない作家のグループもあるが。作家が頼むリキュールは、存在しないものばかり。味わって飲まずに一気する。チップを石油業界の人より多くくれる。作家よりチップが多いのは造船エンジニアだけ」

 

劇場クラブで

 「おお、ロシアの作家よ、ああ、ロシアの作家よ...ロシアの作家は何だって飲む!飲まないのはジンだけ、頼まないのはペール・エールだけ。だがそれも飲むようになるだろう!ロシアの作家はすべてを飲む、しっかりと飲む、たくさんのツケが必要だ、たくさん飲めるから」

 「ロシアの劇作家は飲む?」

 「鶏だって飲んでしまうさ。ロシアの劇作家が飲まないなんてことはない。だが飲む量では4番目。一番は時事評論家、次が小説家、その次が詩人、そして劇作家」 

 このような調査結果が出た。結論を出せるのは読者自身だ。

 ヴラド・アゾフ、「ロシアの言葉」、サンクトペテルブルク、1908年

*「アルザマス」の記事を抄訳

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