ウラジオの欧亜混在食文化

Lori/Legion Media撮影

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ウラジオストク市は太平洋側に位置しているというだけでなく、ヨーロッパとアジアが街の外観と住民の習慣の中で共存しているという点で、ロシアの他の街とは異なる。住民の食べ物の好みについてもそうだ。日本海やウスリー・タイガの資源、アジア諸国との距離の近さ(特に中国)などが影響している。

森で食材探し

 氷河期の一つの影響がこの地域に及ばなかったことで、沿海地方の森には他では見られない固有の動物や植物が生息している。

 地元住民はレモンではなく、チョウセンゴミシを入れた紅茶を好む。これは酸味と渋味のある赤い漿果(しょうか)。森のつる植物だ。動脈圧の安定に効くとされている。ミヤママタタビというつる植物もある。緑色の漿果は大きなぶどうのようだが、割るとキウイに似ている。

 他の森の恵みとしては、松の実とマンシュウグルミがある。ウスリー・タイガでより貴重な植物はチョウセンニンジン。ミハイル・プリシュヴィンやウラジーミル・アルセーニエフなどの優れた作家がこの植物について書いている。ウラジオストクのロック・スターであるイリヤ・ラグテンコが推奨するエゾウコギも、同じぐらい体に良い。太平洋生物有機化学研究所は、この薬用植物から薬やサプリメントをつくっている。

 地元住民が好きな森の中での活動は、広葉ニンニク集め。独特な香りと苦味のある葉がついている、野生のニンニクである。また山菜取り。シダ類はマリネにしたり、キノコと一緒に蒸し煮にしたりする。これらすべての森の食材は、ウラジオストク市内の「フトラヤ・レチカ(Vtoraya Rechka)」市場、「ストロイチェリ(Stroitel')」スタジアム付近の市場、「コマロフ通り(Ul. Komarova)」の市場で売られている。

 

釣りを楽しみつつ美食


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 ウラジオストクには釣り愛好家がたくさんいる。冬はニシキュウリウオやコマイ、春と夏はカレイとラッド、秋はニシン、夜はイカを釣る。海水が温まる頃は、貝類の釣りに群れをなす。一番おいしいと考えられているのはホタテ。ウラジオストクの食卓には欠かせないしょう油をかけて、生で食べることも多い。最近は浅瀬でホタテがあまり釣れなくなったため、多くの人がムール貝に切り替えた。またカキも釣れる。ヨーロッパのオイスターに負けない大きさだと、作家アントン・チェーホフは1890年、流刑地サハリン島の調査旅行から戻る際に伝えていた。ここではウニの身も食べる。男性の体には特に良い食べ物だ。ナマコも貴重だが、密漁も多い。調理法としては、ゆでたり、乾燥させたり、蜜酒にしたりする。

 

海の街で海産物を買う

 ウラジオストクはイクラが安いと、モスクワで言われているが、カニと同じでかなり前から値上がりしている。ここのイクラは新鮮で質が良いので、相応の価値がある。価格は1リットルあたり2000~2500ルーブル(約6000~7500円)。これは市内の「スポルチヴナヤ通り(Ul. Sportivnaya)」の市場や「ベリョスカ(Berezka)」市場の相場だ。

 多くの地元住民は密漁業者の電話番号を知っている。密漁は違法行為だから、警察が見せしめに逮捕したりしているが、見逃されている場合も多い。少なくとも、道路の路肩に止まっている車に、「海産物」という看板がついているのを見かける。ここで売られているのはイクラ、カニ、エビなど。いかなる書類もついていないのが普通。海産物はインターネットで購入することもできる。farpost.ruは人気のネット市だ。

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 ウラジオストクの魚市場は残念ながら、韓国の釜山や日本の築地などには及ばない。ウラジーミル・ミクルシェフスキー沿海地方知事は、隣国に劣らない魚市場を近い将来建設すると発表した。また沿海地方の優れた人々に贈る勲章にも、「海の星」すなわちヒトデをつけることを決定した。

 

アジアの食べ物

 中国料理店は今や珍しくない。だがウラジオストクには独自の中国食文化がある。例えば「チファンカ(Chifan'ka)」と呼ばれる小さな喫茶店だ。「チファン(吃飯)」とは中国語で食事をするという意味。「カ」はロシア語の愛称だ。価格は安く(ウラジオストクは総じて物価が高く、レストランも同様ではあるが)、店員は愛想が良い。チファンカには「逆チップ」の原則があり、店が客に割り引きをしたり、お印程度のプレゼントをくれたりする。ここではバイジュウ(白酒)を飲むこともできる。高粱からつくられた酒で、独特な味があるため、ウォッカ好きの誰もが好きになれるわけではない。

 中国ビール「ハルビン」の需要も高い。ロシアの商人ルブリョフスキーが1900年、中国ハルビン市に創設した工場のビールである。ハルビン市は当時、東清鉄道の中心地で、中国の街というより、ロシアの街と考えられていた。ウラジオストク市内でチファンカが集中する場所は「スポルチヴナヤ通り」の市場周辺だが、どの住宅地にもある。

 朝鮮料理については、韓国料理店と北朝鮮料理店(後者では例えばレストラン「平壌(Phen'yan)」)のどちらもある。美食学の観点からも、文化学の観点からもおもしろい。朝鮮料理を食べたい時は、レストラン以外の選択肢もある。

ウラジオストクでは野菜の朝鮮漬けや、香辛料のきいた乾燥海藻なども人気がある。=Lori/Legion Media撮影

 ウラジオストクで人気のピョンス(片水)という朝鮮肉まんは、バスの停留所付近で売られている。サハリンが日本領だった時代からそこに暮らしている朝鮮人が、ロシア人好みの味に仕上げたもの。ウラジオストクでは野菜の朝鮮漬けや、香辛料のきいた乾燥海藻なども人気がある。

 ウラジオストクの日本料理店は、ロシアの他の地域と大差ないだろう。その代わり中古車市場「ゼリョヌイ・ウゴル(Zelenyi Ugol)」では、日本のサントリーやニッカのウイスキーを購入することができる。日本で買ってきた物がそのまま売られているのだ。これ以外にもサッポロやキリンのビール、明治のチョコレートなどもある。

 

おみやげや郷土料理

 ウラジオストクならではの食べ物と言えば、「沿海製菓」工場(工場直営店所在地は52 Ul. Aleutskaya)が生産している、海藻と海塩が入っているチョコレート。観光客に人気がある。

 開業したばかりのレストラン「ポートカフェ(Portcafe)」(所在地は11 Ul. Komsomol'skaya)は、海、針葉樹林、アジアのアクセントが加えられた極東料理の専門店。地元の植物や海産物が入った浸酒も店で販売されている。