ロシア・アニメ市場の行方は

「モスト・ヴ・ヌジュヌユ・ストロヌ」(行きたい場所への橋)、イワン・マキシモフ監督 写真提供:第18回アニメ・フェスティバル

「モスト・ヴ・ヌジュヌユ・ストロヌ」(行きたい場所への橋)、イワン・マキシモフ監督 写真提供:第18回アニメ・フェスティバル

古都スーズダリで、第18回アニメ・フェスティバルが行われた。ロシアのアニメ業界はよみがえり、世界のアニメ市場にも参入できたが、今後はどのような道を歩むべきなのだろうか。

復活の兆しはあるが 

 モスクワ市から北東220キロに位置するスーズダリ市では毎年、ロシアのアニメ業界最大の映画祭「アニメ映画オープン・フェスティバル」が開催されている。今年の第18回目は、20年続いたロシア・アニメ業界の不況が終焉しつつあることをうかがわせた。映画祭に出品されたアニメは、過去最高となる179作だった。

 映画祭では、潜在的な投資家に新作を紹介する、本格的な大会プログラムも用意された。長編映画が本格的な大会に出品されたこと(これほど多くの国内作品がロシアの配給会社に集まったことはない)、たくさんのアニメ・シリーズや、大会では放映とならなかったものの、「大人の」アニメが出品されたこと、そして著作物、商業アニメ、プレゼンテーションを審査する審査員が3人もそろったことは異例だ。国産アニメへの一般視聴者、国、商界の関心は、確実に高まっている。

 

今後の発展のシナリオ1:低予算、低レベルのコメディーで回収 

 ロシアのアニメの前には、3本の道がのびている。

 1本目は、ロシアの映画産業が踏み固めた道だ。構造は単純で、国の予算で長編映画を製作する。この興行成績はいつでも悲惨だ。収入は低予算、低レベルのコメディーから得る。こういう“発展”のシナリオになりそうな状況は確かにある。

「ジマ・プリシュラ」(冬が来た)、ワシリイ・チルチコフ監督 写真提供:第18回アニメ・フェスティバル

 今大会に出品された長編映画5作のうち、ロシアの配給会社が製作費を回収できていたのは、ロシアの童話をコメディー化した「イワン王子と灰色狼」だけだった。子供向けの大人気アニメ・シリーズを長編映画にリメイクした「スメシャーリキ(愉快な球体)、始め」と、「雪の女王」の興行収入は、必要な回収額の半分に満たなかった(「雪の女王」は外国で収入を得たが)。

 

シナリオ2:困難なアニメ先進国の道 

 2本目は、アメリカ、日本、韓国、フランス、中国などのアニメ市場が発展している国のような、利益のあるアニメ業界を築くという道だ。

 しかし、ソ連のアニメ製作が「業界」になったことはない。偉大なるアニメ監督のアレクサンドル・タタルスキー氏は、よくこう言っていた。「『ソユーズムリトフィルム』(ソ連のアニメ・スタジオ)は、工場制手工業のすべての長所と短所の集約だ」。

 アニメ評論家のマリヤ・テレシチェンコ氏によると、ソ連の全アニメ・スタジオが製作するアニメ作品は、年間30~40時間ほどだったという。現在でもそれはあまり変わっていないが、アニメ作品の数が今や数倍にも増加しているこの世界で、これは不十分だ。アニメ・シリーズの標準的なシーズンは、22分アニメ22本だ。これですでに8時間になる。アニメ業界が確立している国では、このようなシリーズが数百本とはいかないまでも、数十本製作されている。

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スメシャーリキ(愉快な球体)」シリーズ 写真提供:第18回アニメ・フェスティバル

資金不足と人不足がネックに 

 アニメ業界が発展し、資金も割り当てられたとしても、人材不足は変わらない。アニメ映画協会のイリヤ・ポポフ会長によると、協会には30ヶ所以上のスタジオが加盟しており、働いている人は700人以上になるという。また、アニメ組合には130人いる。

 だが、アジア太平洋アニメ協会のリュイ・ヴァン氏によると、中国ではプロのアニメ作家を目指して学ぶ学生だけで、10万人以上いるという。ロシアの年間2000分に対し、中国は年間25万分のアニメを製作している。ただ、中国の映画学校で教鞭をとっている有名な監督で、今大会に新作「万里の長城付近の小さな池」を出品したドミトリー・ゲレル氏は、中国のアニメ専門教育のレベルはそれほど高くないが、それでも中国の学生は習得が素早いという。

 アニメ映画協会のイリーナ・マスツソワ氏の意見では、ロシアのアニメは「単純に危機的状況」にある。「スメシャーリキ」の新3Dシリーズの場合、監督だけがロシア人で、製作は中国で行われているという驚きの事実もある。

 

シナリオ3ソ連時代のアニメ界に回帰 

 3本目は、ソ連時代のアニメ界に回帰する道だ。ロシアは長編傑作ではなく、短編映画に長けていたのだから、それにならって伝説の「ソユーズムリトフィルム」を復活させるのだ。この道の第一歩はすでに前に進んでいる。「ソユーズムリトフィルム」の社長の直接決定で、負債を全額帳消しにし、多額の資金を投じ、収益をスタジオが得られるようにクラシック映画のコレクションを取り戻した。

 ただ、ロシアの著作物が有名なフェスティバルで常に賞を受賞していた時代は、とっくに過ぎている。ロシアは完全に二流になりつつあるのだ。昨年行われた第14回広島国際アニメーションフェスティバルでは、ドミトリー・ゲレル監督のアニメ「ネコを埋葬するネズミを見た」がグランプリに輝き、ナタリア・ミルゾヤン監督のアニメ「チンティ」も国際審査員特別賞を受賞したが、これは恒例の受賞というよりも、センセーションだった。

 

儲からぬ傑作 

 もうひとつ重要な問題が残っている。短編傑作でどうやって回収するかだ。今大会ではリム・シャラフトジノフ氏の優れたアニメ「アルダルと灰色狼」が放映され、会場は爆笑の渦に包まれていた。だが、この13分の傑作を販売するのは、ほぼ不可能だ。

 シャラフトジノフ氏はウファ市の小さなスタジオで、ほぼ一人の状態で年間一本の映画を製作している。これは非常に手間をかけた作業で、テレビ向けにアニメをつくる時間はない。テレビ局にとっても、ロシア国内をかけずり回っておもしろいアニメを集めるよりも、長時間の古い輸入アニメを買う方が簡単だし、コストも3分の1に抑えられるのだ。

 

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