ウォッカの代わりにウイスキー

=Lori/Legion-Media撮影

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ロシアの高度数アルコール市場は大きく変化している。ウォッカの物品税が上がり、安いウォッカの市場部門が縮小しているため、ロシア人は輸入された強いアルコール飲料をより多く飲むようになってきている。外国の酒造会社にとっては、可能性のある市場だ。

昨年の販売の伸び率は、ウイスキー66%、ラム酒57%、ウォッカに似たテキーラで58%だった。イギリスの酒類調査会社IWSRの専門家は、ロシアのテキーラ市場が近い将来、世界有数の大きさになると考えている。ここ数年、外国産の高度数アルコール飲料の人気は目に見えて高まってきており、ロシアのメーカーも自社ブランドでの人気酒の生産を検討し始めている。

「スコッチウイスキーをどうぞ!」 

スコットランドのウイスキー・メーカー、ウィームズ・モルツ(Wemyss Malts)のウィリアム・ウィームズ社長は、かつてロシアに来たことはなかった。だがモスクワに雪が降って地元の人間が冬支度を始めた昨年11月末、初めてこの街に出張することになった。毎年恒例の「ウイスキー・ライブ・モスクワ」見本市に参加し、自社のウイスキーを販売することにしたのだ。ウィームズ社長自ら伝統的なタータンチェックのズボンをはいて自社コーナーに立ち、来場者にウイスキーをふるまいながら、何世代にも渡って受け継がれてきたウイスキーのつくり方について説明した。ロシアの状況を考えれば、同社長の決断は正しかったと言えるだろう。

ロシア連邦税関庁のデータによると、2012年上半期高度数アルコール輸入量は、25.78%の伸びを示している。中でもウイスキーの人気は高く、市場占有率は25%で、2011年には人気ランキングで史上初めてウォッカを抜いた。

ここ10年輸入飲料の競争が激化したことで、全体的な伸び率は鈍っているものの、高度数アルコール市場の高い潜在性は変わらない。連邦・地域アルコール市場研究センターのワジム・ドロビズ所長はこう話す。「今世紀に入ってからの12年という期間で見ると、ウォッカを除いた高度数アルコールの輸入量は、だいたい50倍から60倍に伸びている」。

物品税が急激に上がり、中価格帯ウォッカの価格が他の高度数アルコール飲料の価格に近づいているため、外国の企業がロシア市場でビジネスを展開できる可能性は今後さらに高まる。

「2012年から2014年の物品税年平均増額率は30%で、2015年にようやく20%まで下がる。この増額により、ウォッカと他の多くの高度数アルコール飲料は、同じ価格帯に位置するようになる」とドロビズ所長。これを機に、外国企業はロシア人の味の好みを変えることができるかもしれない。

立ちはだかるウォッカ 

ただ、ウォッカは数世紀の消費文化がある伝統的な飲み物だから、どのアナリストもそういった根本的な変化を予測するわけではない。

外国の新参者が困難に遭遇する可能性だってある。外国企業にとって主なロビイスト集団となる、アルコール製品製造者委員会のアレクサンドル・ロマノフ会長はこう考える。「まず官僚主義の壁が主な問題になってくる。またこの市場にはロシアの強い競合がいる上、アルコール飲料の宣伝が完全に禁止されていることも理解しておく必要がある」。

さまざまな障壁があるものの、実際に成功事例があることも無視できない。2011年にIWSRが世界最速の発展を遂げていると認めたバカルディ(Bacardi)は、自社ブランドのウィリアム・ローソンズでここ2年、ロシア市場に独自の革命を起こしている。発展したのは他ならぬロシアでの売り上げによるもので、1ビン16ドル(約1400円)の安いウィリアム・ローソンズは、市場のウイスキー部門で最大となる、15%の占有率を現在誇っている。

ロシアの大手ウォッカ・メーカーは、こういった成功例に刺激されて、自社ブランドのウイスキー製造を検討し始めている。例えば有名なウォッカであるベルーガを製造しているシネルギヤ社は、幅広い層の消費者をターゲットとした、フォックス・アンド・ドッグス(Fox & Dogs)というウイスキーを販売しようと準備を進めている。