ワーレンキが復活

アルタイ地方の村のワーレンキ製造の様子。数百年前と変わらず、手作りである。人々は過酷な労働環境の中働き、日当5ドル以上もらえないが、彼らにとっては、他に働き口はない。=アンドレイ・シャプラン、Focus Pictures撮影

アルタイ地方の村のワーレンキ製造の様子。数百年前と変わらず、手作りである。人々は過酷な労働環境の中働き、日当5ドル以上もらえないが、彼らにとっては、他に働き口はない。=アンドレイ・シャプラン、Focus Pictures撮影

ロシア人はもう何世紀も羊毛のフェルト製長靴「ワーレンキ」を履いてきた。ワーレンキは軽く安価で、保温性も最高だ。ただ、防水性に弱く、見た目もイマイチ。色は黒、白、灰色の3種しかない。ぬかるみではゴム製のオーバーシューズをかぶせるのだが、これがまたやぼったい、というわけで、20世紀中ごろには都市部で廃れてしまっていた。それが近年、新デザインで防水性もばっちりのワーレンキが売り出され、トレンドになっている。

ワーレンキ

ワーレンキは、大草原から襲来した遊牧民がもたらしたと言われるロシアの靴。大量生産が始まったのは200年ほど前のことで、それまで実に暖かいこの靴を履ける人は限られており、農民たちは菩提(ぼだい)樹の樹皮を編んで作ったラープチというわらじを履いていた。
ワーレンキは羊毛で作られる。ごく粗いフェルトを袋状にし、水蒸気で加工し、洗濯をするように熱湯で縮絨(しゅくじゅう)する。羊毛は縮まり、ブーツができる。とても暖かい靴である。
19世紀にゴムが発明されるとワーレンキ用のオーバーシューズが作られ、このゴムのカバーをつければどんな天候もワーレンキを履くことができるようになった。

軍隊、農村で必需品 

ワーレンキが街ではやなかった頃も、製造工場はたくさんあった。第一のお得意先は軍隊だ。今も昔も、厳冬期の行軍で兵士が履くのはワーレンキ。

理由は明らかで、保温性と軽さと安さだ。価格は靴底の有無や素材の種類などによって異なるが、1当たり600~1100ルーブル(約1500~2800円)で、軍が買い上げてくれる。

農村でも、ワーレンキは必需品だ。ロシアの農村人口は全体の27%を占めており、特に域では、経済事情とあいまって、ワーレンキが唯一の履物となる。

ロシア風デザイン

市部でも、ここ数年、ワーレンキが突如としてトレンドとなった。発端は、数年前に、ロシアのデザイナーであるデニス・セマチョフ氏がシアの伝統的デザインをファッションに使って世界的に評判になったこと。

スライドショーをご覧下さい:


ロシアのワーレンキ製造

ノスタルジー刺激

ホフロマ、グジェリなどの伝統工芸品の模様や、ソ連時代のアニメの主人公などをうまくあしらって、ロシア人のノスタルジーを刺激した。トロ調がトレンドとなって(価格はもはやソ連的ではなかったが)、ワーレンキもその波に乗ったという次第だ。

セマチョフ氏の分析では、ロシア人の心にはやり場のない愛国心がくすぶっており、ロシア風デザインがそのはけ口になったのだろう、という。

 最新型ワーレンキは、色もさまざまだし、多種多様なプリントはもちろん、人工石をあしらったり、ヒールがついているのもある。小売価格は平均3000ルーブル(約7800円)、原価は500ルーブル(約1300円)といったところだ。

あらゆる世代に人気

ットの通信販売「ウギ・ワーレンキのオーナーであるレフ・ラーリンよると、新型ワーレンキは、年齢や収入に関係なく人気があると言う。

はやだしたのは3~4年前で、今はもう完全なトレンドですね。昔は、煙突みたいに不格好したけど、今は格好よくてきれいだし、肝心なのはちゃんと靴底がついていることです。若い人にもお年寄りにも、金持ちにもそうでない人にも、等しく人気があります。いろなタイプがあって、長いのや短いのや、足の形に合わせて太いのや細いのもあるし、色もカラフルで、プリントも、綺麗な雪の結晶など、さまざまですよ」

 ロシアの靴メーカー「エルチェの販売部長であるデニス・デトコフスキーによると、最初に新型または都市型ワーレンキを売り出したのはルチェだという。

「3年前に作り始めました。当時は今のようなタイプは全然なかったですね。うちのデザイナーたちが新しいモデルを考案し、あちこちの見本市や展示即売会に出品したところ、興味をもってくれるようになったんです」

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