ニヤズ・カリム
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエネルギーの需要は2035年までに33%以上増加する見込みである。
ドイツが2020年までに原発を廃止するため、2030年には欧州の電力コストは米国より1・5倍高くなると同機関は見ている。世界最大規模の石油生産国サウジアラビアは、近い将来に二つの原発を建設する。
ロスアトム(ロシア国営原子力企業)が主要株主となっている「アトムストロイエクスポルト」が露中協力に積極的だ。2011年9月には、中国江蘇省の田湾原子力発電所の2基の発電炉の運転開始に貢献した。同原発は露中経済協力の最大プロジェクト。原子炉建屋の下に溶融ゾーンの維持・冷却用の「キャッチャー」が設置された。万一事故が発生しても、溶融した物質は「キャッチャー」に収まり、原子炉建屋を破壊することがないという。露中協力の下で、全部で8基の発電炉が建造される見通しだ。
これらの事実は、エネルギーの将来と、将来のエネルギー選択に関する新たな疑問を提起する。
太陽光などの再生可能エネルギー、石油などの化石エネルギー、シェールガス、原子力、またはそれ以外の方法があるのか。大幅な需要の増加に直面した時、需要に見合うエネルギーの配合を考えるだけではなく、環境問題(汚染、CO2排出量と地球温暖化)と安全性を考慮した解決方法を探さなければいけない。
原子力産業の将来を検討してみよう。実際、福島第1原発事故は、原子力産業の注目を集め、潜在的なリスクに目を向けさせた。
しかし、福島で何が起こったかの否定的な観点からの分析によると、原発の技術的な問題ではなく、命令の連鎖の中でエラーが発生し、人的ミスに加え、津波リスクの過小評価が今回の結果につながったということを強調すべきである。
しかし、これらの結論は原発に伴うリスクを甘く見ることを正当化しない。
実際、どこで起ころうと、原発の事故は、世界中の原子力業界に影響を及ぼす。
原子力エネルギーはCO2を排出しないので環境に優しいという論理は、現在では原子力開発を正当化するに十分でない。
このため、福島の事故後、ヨーロッパとロシアを中心とするすべての核保有国が、原発でストレステストを行い、特にロシアでは、テロ事態を想定したテストも行った。
テストの結果は公開され、セキュリティー・ルールを完了するために全ての原子力事業者は数百万㌦を投資しなければならなかった。
一つ確かなことは、福島原発で起きた事故は低コスト原子力エネルギーの終結を意味するということだ。
福島の事故は原発を稼働させている全ての国にとって、安全性とセキュリティーポリシーを強化するきっかけとなった。それでもおそらく不十分であろう。
世界共通の原子力安全基準及びそれを管理する団体が必要である。それゆえ、例えばフランスが欧州規模で推進しようとしているものでは十分でない。
エネルギーは「旧世界」に限定されない課題であり、「新世界」と、内部成長をしようとしている全ての国々が直面する問題である。
伝統的な化石エネルギーの生産者が原子力や再生可能エネルギーなどの新エネルギー資源に関わることは、さまざまな種類のエネルギー資源がお互いに補い合うものであることを示しているのである。
エマヌエール・
グット、エネルギー・アナリスト
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