露発展の4シナリオ

セルゲイ・ヨルキン

セルゲイ・ヨルキン

国際会議「ヴァルダイ」がロシアで開催され、原油価格などの経済の諸問題や、2030年までの露経済の発展のシナリオについて語られた。

国際ディスカッション・クラブ「ヴァルダイ」の第9回会議が、10月21日から10月25日にかけて、サンクトペテルブルクとモスクワで開催された。今年のテーマは「未来は今つくられる ロシア経済発展のシナリオ」。

このディスカッション・クラブは、ロシアと外国の研究者、政治家、ジャーナリストの対話を強化、発展させ、ロシアや世界の政治的、経済的、社会的な流れを科学的に分析することを目的として、2004年に創設されたものだ。

石油価格と経済改革のスピードをもとに発展を予測 

サンクトペテルブルクで行われたフォーラムに参加した経済学者の多くが、複数のシナリオをもとに、今後の見通しを発表した。シナリオは、石油価格と経済改革のスピードという、二つの指標にもとづいている。専門家らは、世界経済の現状をふまえ、最悪の事態を想定した場合に石油が1バレルあたり94ドル、楽観的に想定した場合に1バレルあたり140ドルと、最も現実的な数字を算出した。

2030年までの発展の4つのシナリオ 

また、2030年までのロシアの変化のシナリオ4本が、概略的に示された。まず、「サングヴィニク(快活)」と名付けられたシナリオでは、石油価格が最も高値で、しかもロシアで抜本的かつ包括的改革が行われることが想定されている。この場合、ロシアの経済成長率は世界の成長率を上回り、生活水準は2030年までに現在のスイスのそれに達する。

一番悲観的な「メランホリク(憂うつ)」というシナリオでは、石油価格は低く、ロシア政府は、現状を“凍結”する、つまり現状を維持しようとするだけで、改革を行わない。

3つ目のシナリオである「フレグマチク(不活発)」では、1バレル94ドルという比較的低い石油価格になっても、ロシア政府が積極的に改革を行う。

4つ目の「ホレリク(怒り)」では、1バレル140ドルという高い石油価格になっても、ロシア政府がまったく改革を行わないか、あるいは部分的にしか実施しない。それでも、2030年の国民の生活水準は、現在のフランスの水準と同等になるという。

「まずは戦略策定、そして改革を」 

「ロシアが何を行うかを決定し、国の発展戦略を定めるまで、経済政策について話をしても無意味だ」と、「ヴァルダイ」顧問会議のメンバーで、「国立高等経済大学院」世界経済・政治学部の学部長であるセルゲイ・カラガノフ氏は考える。

ロシア社会が改革を必要としていることは、社会学的調査の結果でも明らかになっている。国の平均給与を上回る収入のあるロシア人のうち、68%が自分の子供を外国で学ばせ、働かせたいと考えており、37%が自分の子供を外国に永住させたいと考えている。社会学者は、理由はそれぞれ異なるものの、中流層や、平均以下の暮らしをしている層の間に、隠れた不満があると指摘する。

ロシア政府は、製造業の衰退や才能ある若者の海外移住を防ぐために、今後数年以内に新たな楽観的目標を国民に示し、具体的な行動で実現の用意があることを証明しなければならない。この会議では、多くの専門家が、ロシアに活発に機能している研究所がほとんどないことや、イノベーションの予算不足、国内投資を促すビジネスへの刺激がないことなどを批判した。

「ユーラシア経済共同体を経済発展のテコに」 

ただ、司法、税金、政治といった制度改革の実施は、ロシア経済を活性化する上でのほんの一要因にすぎない。

経済学者であるセルゲイ・グラジエフ大統領補佐官は、ロシアを含めた旧ソ連共和国5カ国が加盟しているユーラシア経済共同体が、ロシアの発展の原動力となる可能性を表した数字を示した。それによると、共同体内部の総合協力プログラムにより、今後10年間で加盟国のGDPを10%から15%引き上げる可能性がある。これはロシア経済成長率を年7~8%まで伸ばし、国内の投資家にとって魅力的な国となる。

アジア市場が成長を助ける 

また、シベリアや極東など、アジア市場に焦点を当てたプロジェクトに投資をすることで、地域経済の成長が加速化すれば、成長の原動力となり、なかなか進まない改革を多少補うことができるる。

ロシアの前には、これからも、西か東か、ヨーロッパかアジアかの選択を強いられるだろう。ヨーロッパは、エネルギー輸出国に対して自分の規則を押しつけるが、安定したパートナーのように見える。一方で、アジアは、共通の規則は少ないが、それぞれ独自の国民性をもち、ロシアのビジネスのインフラは、ようやく整備されようとしているところだ。

ロシアはこれらの追加的な原動力により、改革が、「ヴァルダイ」の専門家が提案しているような抜本的かつ包括的なものにならなかったとしても、2030年までに、「フレグマチク(不活発)」のシナリオの指標には達することができよう。