東方へシフトするロシア

ウラジオストク市の中央広場 =ロシア通信撮影

ウラジオストク市の中央広場 =ロシア通信撮影

グローバルな政治経済活動の中心は、アジア太平洋地域へ移動した。ロシアのプーチン大統領は、ウラジオストクのアジア太平洋経済協力(APEC首脳会議)サミットで、新たな極めて野心的な協力の構想を欧州とアジアに提示するものと見られる。

プーチン大統領の哲学は、ロシアはその独自の文明にふさわしい役割を演じなくてはならない、というものだ。同氏によると、「ロシア文明の基礎はヨーロッパ文明だが、その一方で、東洋とも何世紀にもわたり協力の経験を積み重ねてきている。その東洋には、新たな経済的、政治的中心が現在さかんに形成されつつある」。

言い換えれば、ロシアは、大西洋から太平洋に至る単一の経済的かつ人的空間の創出を目指すことを欧州に提案する意向である。

「そうすれば、我々は何兆ユーロという規模の共通の大陸市場を手に入れることになる」とプーチン氏は自身の選挙綱領(マニフェスト)で述べている。

 プーチン大統領の考えによれば、これはロシアが「新生」アジアにシフトしていくなかで、ロシアの可能性と立場を強固なものにする。

 ロシアがオファーできるものは? 

ロシアがオファーできるものは、シベリアおよび極東を経由して欧州からアジア太平洋地域へ至る輸送回廊だ。そこでは東シベリアおよびサハリン産の天然ガスを輸出するためのインフラや石油パイプライン網がさかんに拡充されつつある。

シベリア鉄道およびバム鉄道は依然として欧州と太平洋を結ぶ最短ルートとしての重要性を保持している。また、中東における混乱によりスエズ運河やペルシャ湾を経由する海上輸送路の安全性が問題視されつつある。

 この点で、ロシアの石油・ガス、電力、鉱物、木材、海産物などの豊富な資源は、依然として、ロシアの強みであり続けている。

 輸送回廊と資源を活用するための自由貿易のフォーマットも整いつつある。2012年8月、ロシアは、18年間の交渉の末、ついに世界貿易機関(WTO)への加盟を果たした。

 また、今年、ベラルーシおよびカザフスタンとの関税同盟(共同市場)が発足してからは、ロシアの立場には変化が覗える。メドベージェフ首相が述べたように、今後ロシアは、関税同盟としてAPEC加盟国との自由貿易協定の締結に関する交渉を行う用意がある。

 さる2009年には、「2025年までの極東およびバイカル地域の社会的経済的発展の戦略」が採択された。これは同地域への巨額の投資を見込んでおり、2015年までの投資額は、国家によるものだけでも30億ルーブル(約74億円)となる。

欧州とアジアにまたがるロシアの戦略 

最重要課題は、極東と東シベリアにおいて、欧州およびアジアとの幅広い統合と協力に基づいて、同地域の経済発展を加速するだけでなく、極東の発展をロシア全体の経済発展の呼び水とすることだ。

 ロシアは、対外経済関係の比重をアジアへ移す意向で、イーゴリ・シュワロフ第一副首相は、「ロシアの発展の加速は、ロシアが欧州だけでなく、欧州とアジアという二本足でしっかり立つ場合に実現される」と述べている。

 ロシアとアジア太平洋地域の経済交流の活性化は、地域におけるロシアの政治的影響力の問題とも密接に関係している。

 セルゲイ・ラブロフ外相は、「この地域で紛争が起こる潜在的可能性は依然としてあるが、ロシアの安全が直接脅威にさらされることはない」と述べたが、しかし、地域において重要な政治的プレーヤーの役割を演じようとするロシアの野心が経済力によって裏づけられていない点に問題がある。アジア太平洋地域の貿易全体に占めるロシアの割合は1,5パーセント以下にすぎない。

プーチン大統領とメドベージェフ首相が口をそろえて唱道しているEU(欧州連合)とアジア太平洋地域の架け橋というロシアの理念は、現在クレムリンで活発に議論されており、太平洋地域におけるロシアの戦略の基礎となる可能性がある。