=ロシア通信撮影
5月に活動を開始した国連停戦監視団の任務には、停戦の監視やシリア情勢の情報収集が含まれていた。監視団の報告は、シリア情勢正常化のための接点を探ることのできる、先入観のない唯一の情報源だったようだ。
任務の終了は、監視団を組織していたコフィー・アナン国連特使(前国連事務総長)が、辞任の意向を表明したことを考えれば、自然な流れである。アナン国連特使は、辞任の理由について、名指しはしなかったが、自身の平和的解決策が支持されていないことを挙げた。
反政府勢力の軍事的な手詰まり
「頼りはアルカイダ」
シリア情勢は明らかに行き詰まっている。まとまりのないシリアの反政府勢力は、シリア政府軍に勝利できる状態になく、シリア情勢が行き詰ってきていることは一目瞭然だ。
政府軍に対して、重装備なしに大規模な軍事作戦を展開することは、今も将来的にも、自滅を意味する。ただ、このような状態にあっても、西側諸国は軍事支援を急いではいない。
理由は明白だ。AFP通信は、アレッポ市の反政府指導者であるアブ・アンマル氏の次の声明を伝えた。
「『アルカイダ』がシリアに関与するのは避けたいが、我々への支援がない場合は、『アルカイダ』と結束するだろう」。
まるでゆすりのようであるが、化学兵器を保有するシリアで、「アルカイダ」が活動することは、誰も望んでいない。
紛争の長期化とテロ
このような状況下で、シリアの主だった反体制武装組織、「自由シリア軍」は、現在の活動を、ゲリラ活動に変えていかなければならなくなっている。そうなると、政府軍は苦しくなる。
すでに1年半続いている紛争は、トルコ、サウジアラビア、カタールなどの外国からの反体制派への支援がなければ、ここまで長期化はしなかったはずだ。アメリカのオバマ大統領が、CIAに反体制派支援を調整させる決定を行ったことも明らかになっている。ただ、こちらは軽装備に限られている。
情勢は、被害を拡大させ、中東全域を不安定化させながら、沈静化と激化をくり返していくだろう。
だが、西側諸国は、アメリカの軍事力を借りて事態を正常化するつもりはない。イギリスもフランスも、ヨーロッパの深刻な経済状況が落ち着かない限り、リビアのシナリオをくり返すことはできない。
また、純粋に技術的な観点から言っても、アメリカ抜きで軍事介入はできないが、その当の米国は、イラクやアフガニスタンでの政治的敗北を経験した後で、中東でまた新たな戦争を始めようとはしないだろうし、大統領選挙を控えている大切な時期だから、軍事的冒険には不向きだ。
残るは外交
「まだ最悪の事態は回避できる」
残るはバシャール・アサド大統領の退任を実現することだ。そのためには、外交圧力、経済制裁、反対キャンペーン、投降者への報奨、テロなどの手段があるが、最良の手段となるのは、国連が承認して、外国が軍事介入するという脅威だろう。
しかしながら、ロシアと中国は国連安保理で、すでに3回も拒否権を発動している。これは客観的に見れば、シリアの大統領を支援していることになるが、最終的に反体制派と対話をしなければならない義務から、大統領を解放するものではない。
当面のロシアの提案は、国連で国連大使級の会議を行うことだ。その席で、シリアの両方の当事者に対して、停戦と平和的対話の開始時期を決めるよう提案する。また、ロシアはシリア政府への働きかけも行っていく。
シリアのカドゥリー・ジャミール副首相、アリー・ハイダル国民和解問題担当国家大臣の訪露は、この文脈で理解すべきだ。
また、ロシアは西側諸国に対して、シリアの反体制派に停戦と政治対話への移行をうながすよう、何度も要請している。ロシア政府は、アナン氏が「ファイナンシャル・タイムス」紙に掲載した記事で強調した見解を共有しているようだ。
「シリアは、まだ最悪の状態を回避できるところにいる。しかしながら、これには、米露を含む国連安保理の常任理事国が勇気ある決断をし、指導者としての資質を発揮することが必要となる」。
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