APECで注目してほしいシベリアと極東

ニヤズ・カリム

ニヤズ・カリム

アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議のウラジオストク開催と、ロシア連邦極東発展省の創設で、シベリア・極東地域にロシア社会や財界エリートの熱い視線が注がれている。遠方の「前哨地」や「地方」ではなく、可能性を秘めた、新たな発展の要というイメージに変わりつつあるのだ。

ジリ貧傾向をいかに止めるか

ロシアでは今、この地域の経済が盛んに研究されているが、専ら批判的な観点から語られている。専門家らは、停滞、産業の空洞化、人口の減少などの問題を指摘し、国内のさまざまな資源や投資の活用、また中国、日本、韓国などの資本や技術を含む、環太平洋地域の先進・新興国の予備資源の活用の二点を政府にすすめている。

こういう考えは正しいだろうが、話し合いだけでは現状を打開できない。ここ数年、APECに向けた準備やシベリア極東発展プログラムの実現計画などで、政府が奮闘しているにもかかわらず、この地域のジリ貧傾向には何の変化も見られないどころか、一部の問題は悪化の一途をたどっている。

ロシアのGDPに占めるシベリア連邦管区と極東連邦管区の割合は、16.4%(2001)から16%(2011年)に減り、人口も19.2%から17.9%と減少に歯止めがかからない状態だ。

全ロシア世論調査センターのデータによると、この地域の住人の実に40%が別の場所に移住したいと考えている。

アジアの外資導入、国策会社… 

一部のロシアの実業家は、外資、すなわちアジアの資本、資源を活用して、シベリアを発展させようと大々的に呼びかけている。

新興財閥「ロシア・アルミニウム」(ルサル)社長のオレグ・デリパスカ氏は、今年6月に開かれたサンクトペテルブルク経済フォーラムで、シベリアと極東のGDPが二倍に成長する可能性があると発言した。アジアのエネルギーやインフラ分野と協力すれば、そんな成長も夢ではないという。

今年初めには、国策会社「シベリア・極東発展国営会社」を創設する構想がぶち上げられた。有用鉱物や石油・ガスの開発またライセンシングの権利を中央政府から移管して、外国(アジア)からの投資の規定や条件を決める権限などをもたせるというものだった。

ただし、専門家の意見では、この新たな法的枠組みは、ロシアの独占禁止法にも税法にも準拠せず、ウラルからウラジオストクまでの領域がオフショア(租税回避地)になるのが落ちということで、結局、実現にはいたらなかった。

極東発展省創設

この代案として極東発展省を創設する案が浮上し、こちらは実現にこぎつけて、ロシアの領土の36.3%、GDP(国内総生産)の5.4%を占める極東連邦管区を管轄下に収めた。

国策会社は物議を醸したが、極東発展省のほうは現実的なアイデアだ。同省の権限は、専らこの地域の利益となるように設定されている。特に極東経済への外国投資に対する保証や好条件の整備の面でそうである。

中国の複数の大企業はすでに、同省と直接提携をしようと意気込んでいる。その内容は、極東のインフラやエネルギー設備に、数百億ドル規模の投資をするというものだ。

特別手当の復活を 

新しい極東発展省のおかげで、効力を失いつつあるシベリアと極東の発展プログラムが息を吹き返し、人口の大量流出を止められるかもしれない。ソ連時代、政府は厳しい気候条件で生活する住人を留まらせるように、特別手当の支給という有効な対策を取っていたが、それが復活したら効果はあるだろう。

当時シベリアや極東に移住した人の多くは、針葉樹林の香りを嗅ぎに行ったわけではなく、手当を目的としていたのだから。

さらに時代をさかのぼると、19世紀の東シベリア総督、ニコライ・ムラビヨフ=アムールスキー、その他の指導者の好例もある。彼らは中央政府から権限を分かたれ、その権限を活用して祖国に利益をもたらした。

APECでプレゼンテーション 

こうしたシベリア・極東の問題は、極めて特殊な国内問題だが、外国の資本、資源なしには解決できない。APECは、こういう「お家の事情」を外国にうまく「プレゼンテーション」するには打ってつけの舞台になり得る。

プーチン大統領の新たなシベリア・極東政策は、ハバロフスクとウラジオストク、すなわちアムール川と太平洋の沿岸で芽吹いて行くはずだ。