アメリカ流“ブレジネフ・ドクトリン”:人道的介入という名の制限主権論

ニヤズ・カリム

ニヤズ・カリム

ロシアと中国は、シリア国内の停戦を目的とする、外国の介入を定めた、国連安全保障理事会の西側諸国の決議案に対し、ここ9カ月で3度目となる拒否権を発動した。この国連内での恒常的な対決は、明らかに、シリア問題の枠を超えた、もっと根本的なものだ。世界秩序維持の原則において、露中と、米国およびその同盟国との間の隔たりは、いよいよはっきりしてきた。

民主主義を標榜するあらゆる革命運動を支持

国連安保理での採決に先立ち、ロシアのプーチン大統領と、アメリカのオバマ大統領は電話会談を行い、オバマ大統領は、今の立場を変えて西側の考えを支持するよう、プーチン大統領を説得した。

アメリカは、民主主義を標榜するあらゆる革命運動を、ここ10年変わらず支持してきた。東欧の「ビロード革命」も、旧ソ連圏の「オレンジ革命」や現在の「アラブの春」も、これに含まれる。

こういった立場は、アメリカ建国の基本原則にも、同国の世論にも合う。米国政府は最近まで、平和のためとうたい、民主化とはほど遠い強権政権と協力する理由を、国民に説明しなければならなかった。軍人出身のホスニー・ムバラク氏(空軍元帥)率いる、軍事政権が支配していたエジプトなどの旧親米国家がその例だ。

人道的介入のメカニズム

しかし、こういう革命支持は、論理必然的に、人道主義の名の下に介入するドクトリン、いわゆる「人道的介入」となる。このドクトリンにしたがえば、非民主的な国家で、多少なりとも反体制運動が活発であれば、民主主義を強制されてしまうことになる。

だが、リビアのカダフィ大佐の運命が示すように、この手の革命が起きたときに指導者を待ち構えているのは、私刑もしくは終身刑だ。こういう状況が続く限りは、「アラブの春」に襲われた政権が何らかの妥協に応じる可能性は、ほぼゼロだろう。

したがって、いきおい、経済制裁または外交制裁でむりやり問題を“解決”したくなるのは当然で、それでうまくいかない場合には、軍事的行使に発展する、という次第だ。

民主主義の結末への恐怖

だが「人道的介入」は、アメリカなど成熟した民主主義国家以外では、明らかに人気がない。世界のほとんどの国では、民主主義の基盤が弱いか存在していないかのどちらかで、そういう国はすぐに民主主義が自国にもたらす結末を想像してしまうため、大きな魅力を感じないようだ。

そこで、西側諸国は国連、特に常任理事国がわずか5カ国しかない安保理を通じて、世界の意見をつぶそうとする。

シリア情勢は、問題がこのような発展を見せた、今日の一番わかりやすい例だ。

拒否権があるロシアと中国は、国連安保理常任理事国として、NATO軍が人口650万人のリビアを攻撃した状況をくり返したくないと考えている。

ソ連の武力介入とダブる

1990年代に外務大臣を務めた経験のある、ロシア外交のベテラン、エフゲニー・プリマコフ元首相は、回想録の中でこうつづっている。

「物事ははっきり区別して考える必要がある。ある国の国内情勢を、世界とその安全に対する脅威という観点から考えることはできる。しかし、このことと、特定の国家や社会のモデルを他国に押し付けようとすることとは、まったく違う話だ」。

言い換えれば、ロシアや中国、その他のBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国の新興4カ国)は、主権国家への内政不干渉の原則を守っている。

やや逆説的に聞こえてしまうが、1950年代から1960年代のソ連政府が適用していた、イデオロギーを維持するために、ハンガリーやチェコスロバキアにソ連軍が武力介入するようなやり方に、ロシアは反対している。

国連・アラブ連盟の合同特使を務めるアナン前国連事務総長は、シリアでの停戦のために、常任理事国同士が歩み寄らなかったことに対し、遺憾の意を表明した。シリア問題を解決するために必要なのは、常任理事国が合意して共同で行動することだ。それ以外に解決の道はない。