=エデゥアルド・ペソフ/ロシア通信撮影
7月17日のアナン特使とロシアのプーチン大統領との会談は1時間半におよんだが、その結果についての報道はかなり貧弱で、プーチン氏がアナン氏の停戦調停への支持を約束したことが報じられただけだった。
しかし、最近またもシリア問題をめぐる外交合戦が華々しく盛り上がっているなかでの、この双方の寡黙さは、必ずしも悪い兆しではあるまい。おそらく、露政府もアナン氏も、シリア正常化のための新たな計画をまだ練っている最中だということだろう。そして、その骨子は、国連に紛争の仲介役の機能を与える、ということだ。
十分な根回しを経て
アナン氏は、ロシア訪問に先立って、シリアのアサド大統領と、イランの指導部と会談している。イランは、シリアの同盟国なので、シリア問題にもろに巻き込まれているのだ。
会談ではこれといった前進は見られなかったが、これは当然で、前進があるとしたら、戦っている双方が話し合う場合にかぎられる。
一方、露政府は、いわば事態のキー・パーソンとして、シリアの反政府勢力の全国組織の一つ、「シリア国民評議会」(SNC)と7月11日に会談したばかりだ。
なるほど、双方の基本的立場は、まったく逆で、SNC側が不可欠だと考えているのは、第一に、平和が脅かされ侵略行為がなされた場合に経済制裁や軍事力行使を容認する、国連憲章第7章をシリアに適用することであり、第二に、アサド大統領の退陣だ。
とはいえ、この会談で、SNCとロシアの対話が始まったのは事実である。SNCは、紛争の主役でなくとも、影響力はある。
停戦の実現が問題
アナン・プーチン会談に話をもどすと、アナン氏は会談後、「シリア問題をめぐり、国連安保理常任理事国の間で妥協が成り立つことを確信している」と記者団に述べ、ロシアのラブロフ外相も妥協を支持すると述べた。
この記会見はあっという間に終わってしまったが、そこでの発言のトーンからして、露政府とアナン氏の間には、単に相互理解だけでなく、共に正常化を目指す意志が感じられた。
安保理理事国にとって問題なのは、単に、20日に迫った国連停戦監視団の活動期限を延長するかしないか、何日延長するか、といったことではない(ロシアは3ヶ月延長を、米英は45日間延長を提案している)。
真の問題は、いかに停戦を実現するかということだ。それなくしては、紛争当事者の政治対話はありえない。まさにそれを露政府もアナン氏も目指しているのだ。
露の新決議案
国連に政治的機能を与える
アナン・プーチン会談後、露政府は、自国の国連安保理決議案を修正した。この決議案は、国連停戦監視団の活動期限が切れた時点で、提出される予定だ。
アレクサンドル・パンキン第一国連副大使は、新決議案には「一連の新しい要素が盛り込まれている。人道上の問題、人権問題や局地的な停戦のメカニズムなども含まれている」と記者団に述べた。
以上のことを総合して考えると、ロシアは国連に対して、単なる情報の伝達役ではなく、紛争の仲介役としての政治的機能を与えることを提案していることになる。すなわち、停戦をめぐって紛争当事者と交渉する権限を与えることだ。これは根本的に新しい要素であり、シリアの正常化の道を開く可能性がある。
アナン氏も同意?
もし、アナン氏がこれに反対なら、ロシアがこんな新決議案を提出するはずはない。この点で了解し合ったことが、アナン・プーチン会談の主な成果だった。
今週末までにシリア問題に関する国連安保理の新決議が出てくるはずだ。それは、シリアへの軍事力行使とは別の選択肢になりうる。
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