=AP撮影
双方の役割の重要性は認識
会談後の発表から明らかとなったのは、双方の基本的立場がまったく逆であることだ。評議会(SNC)側が不可欠だと考えているのは、第一に、平和が脅かされ侵略行為がなされた場合に経済制裁や軍事力行使を容認する、国連憲章第7章をシリアに適用することであり、第二に、アサド大統領の退陣だ。
アブドルバセト・シーダ評議会議長はこう主張した。
「アサドが退陣しない限り、正常化などあり得ないことを、シリアのすべての反体制派を代表して伝えたい。ロシアは、これについて異なる意見を持っているが、新たな提案を提示した。今後の会合で、この露新提案について話し合っていく予定だ」。
今回の会談の実現は、シリア情勢を打開する上で、両者が互いの役割の重要性を認識していることの現れだ。反体制派がロシアの主導的な役割を認め、そしてロシアが評議会(SNC)を交渉の場に欠かせない重要な組織と考えている。このこと自体一つの成果だ。予想通り、会談で何ら前進はなかったとはいえ。
一枚岩でない反体制派
ラブロフ外相は、この席で、ロシアが「SNCと、その内部のグループ、特に内部の反対派との関係」に関心を持っていると述べた。
会談後のSNCメンバーの発言から判断すると、シリア国内の反体制派武装勢力は独立していて、SNCに対する報告義務も負っていない。
代表団のメンバーである、SNCのバスマ・コドマニ報道官によると、「自由シリア軍」は時々SNCに「政治的相談」をしに来る程度だという。
また、SNCのムンジル・マホス氏は次のように述べた。「SNCはこの革命で、政治的役割を果たし、武装勢力への国際支援をつのり、調整委員会を通じてそれを武装勢力に供与するように努めている。ただ、国内の主な革命勢力は、われわれには関係なく活動している」。
武器供給の減少
ここに注目すると、シーダ議長のロシア訪問に先立つ声明はとても興味深い。「ロシアがシリアに武器を納入していることは周知の事実だ。それについてこれから話し合いを行う」。
「ワシントン・ポスト」紙は、武装勢力に対する武器の供給が、ここ2週間鈍っていると伝えている。一時的な中断期間かもしれないが、16カ月続いているシリア騒乱に対して強まる懸念を反映している可能性もある。
複数の消息筋によると、ロシアもシリアへの武器供給を減らす可能性がある。7月にロシアは、高等練習機/軽攻撃機「Yak-130」36機の対シリア納入契約を、シリア情勢の正常化まで延期すると決定したが、これも上の文脈で捉えるべきかもしれない。
武器供与を規制するしかない
実質的に外国が干渉しないかぎり、反体制派武装勢力がアサド政権に勝利できないことは明らかだ。1年半の紛争で見えてきたことは、アサド大統領には、軍事力も政治的支持基盤もあるということだ。国民の大多数とまではいかなくとも、アラウィ派やキリスト教徒を始めとする、多くの国民がアサド大統領を支持している。
武装勢力は、いわばパルチザン闘争を行っているだけで、政府側も反体制派もいずれもはっきりした勝算はない。
その代わり、レバノン、イラク、チュニジアからイスラム過激派がシリアに流入すると予想されることは、これらの国が再三公式に認めているとおりだ。
こういう条件下では、SNCのような組織の政治的可能性は、低くなるばかりだ。これに対抗するには、武器納入の規制以外の手段は何もない。規制のみが紛争を鎮静化させ、情勢を政治的に収束させることができるし、そうなれば、反体制派は重要な政治勢力として残る。そのなかでもSNCが重要な地位につくことになるだろう。
*クリップ(編集部注)
シリア国民評議会
「シリア国民評議会」(SNC)はシリア 反体制派の全国組織。アラブや西欧諸国からの援助の窓口になっている。しかし、その指導部には亡命している人物が多く、国内で活動する反 体制派とのつながりが薄い。そのためもあって、評議会内では、路線などをめぐり内部対立が続いており、前任議長のガリユン氏は2012年5月に辞 任した。6月9日に後任に選ばれたシーダ氏は、北東部ハサケ県出身のクルド人で、スウェーデン在住。昨年の評議会結成に際し、幹部として 加わっていた。
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