メドベージェフ首相は今月3日、極東連邦管区の視察の一環として、南千島諸島を訪問した。=タス通信撮影
4月末に民主党幹部の前原誠司氏が非公式にロシアを訪れ、6月にはセルゲイ・ナルイシキン下院議長が日本を訪問し、野田佳彦首相や玄葉光一郎外務大臣と会談した。実務者レベルの交流はにわかに活発になり、ロスカボスで開催されたG20(主要20カ国・地域首脳会議)では、日ロ首脳会談が個別に実施され、今後も密に連絡を取り合っていくことや、今年9月のロシア・ウラジオストクAPEC(アジア太平洋経済協力)サミットで会談を行うことで合意した。
国内での点数稼ぎに便利
ユーリー・ウシャコフ大統領補佐官は、首脳会談の結果を報告した際、「今後の交渉は、とかく気短になりがちな公的発言で損なわないように、落ち着いて、建設的に進めなければならない」と述べた。
領土問題は極めてセンシティブな問題だ。景気のいい発言をして国内で点数を稼ぐのは簡単だし、これまでもそうであったように、それで交渉を頓挫させるのはもっと簡単だ。両国はこの点をよく理解している。
一転して非難の応酬へ
ところが、この「落ち着いた」状況は、わずか1週間しかもたなかった。
6月24日、藤村修内閣官房長官が記者団に対し、メドベージェフ首相が“島”を訪れる可能性があると、サハリンのマスコミが報道したことについて、「日本の立場と相容れない」とけん制した。
ロシア外務省はすぐさま「南千島諸島はロシアの不可分の領土だ。ロシアの指導者が自国の領土を訪問する計画に、外国が口を挟むのは不適切だ」と応酬した。
メドベージェフ首相は今月3日、極東連邦管区の視察の一環として、南千島諸島を訪問した。玄葉外務大臣は直ちに「メドベージェフ首相が国後島を訪問したことは、日ロ関係に水を差すものだ」と述べ、日本外務省は公式に抗議した。玄葉氏は今月末にロシアを訪問する予定だが、この状況では実現が危ぶまれる。
島はさておき
とはいえ、客観的に見て、日本もロシアも、より近い関係となることに関心を抱いている。エネルギー問題も北東アジア安全保障問題も、両国の緊密な協力を必要とする。北朝鮮核問題一つをとってもそうだ。
野田首相とプーチン大統領には、9月のウラジオストクAPECで話し合うべきことがらがある。
セルゲイ・ラブロフ外相の発言をみれば、露政府が今回の問題を長引かせるつもりがないことは明らかだ。
「きっかけの有無にかかわらず毎回くり返される論争はさておき、首脳レベルで合意した、『二国間関係および国際関係のあらゆる分野における協力の発展』を実現していくことで、平和条約の締結に向けて前進しなければならない」と、ラブロフ外相は7月3日にモスクワでの記者会見で述べた。
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