オバマ大統領はメドベージェフ大統領に対し、ミサイル防衛問題の解決を急がぬよう、プーチン次期大統領に伝えてくれと頼んだのである。=AP撮影
5月末、再選したプーチン次期大統領は、アメリカの大統領山荘キャンプ・デービッドで、オバマ大統領と初の首脳会談を行う。先日ソウルで行われた学生との対話の中で、オバマ大統領は米ロ会談の概要を明らかにした。また、漏れ聞こえたオバマ大統領とメドベージェフ大統領のプライベートな会話からは、5月の会談の雰囲気も垣間見ることが出来た。
オバマ大統領によると、まず軍縮問題について話し合いが行われる予定だ。ロシアが自国の安全にとって深刻な脅威としている、アメリカのミサイル防衛配備も例外ではない。
2010年12月、米上院は戦略兵器削減条約を批准し、戦術核兵器削減の必要性について声明を発表している。今年2月のアメリカの報道によると、オバマ政権は米ロ間の戦略兵器削減について、新たな提案を用意しているという。
プーチン首相はこの情報に対し、具体的な反応を示した。「(核安全分野における)今後の取り組みは複合的な性質をはらんだものとして、核保有国すべてが参加すべきだ。他の核保有国が軍拡を進める中で、削減ばかりを行ってはいられない。受け入れることはできない」。
つまり、核軍縮は、多国間協議となって初めて実現するということである。また、核軍縮により、他の種類の兵器開発の必要性を高めるべきではない、という考えもうかがわせている。「核兵器を放棄するのは、軍備に類似の装置が加わる時だ」と述べ、ロシアは精密兵器分野で、大量破壊に対抗できる同等の物を製造しなければならなくなる、と強調している。
核兵器の削減はアメリカのミサイル防衛問題と一体であることも、ロシアは主張している。
とはいえ、キャンプ・デービッドの会談が見送られるというわけではない。米ロ両大統領のプライベートな会話をマイクが拾ったことにより、思わぬ楽観論が広がることとなった。この会話の一部をアメリカのABCテレビが放送している。オバマ大統領はメドベージェフ大統領に対し、ミサイル防衛問題の解決を急がぬよう、プーチン次期大統領に伝えてくれと頼んだのである。その上で、「これらの問題、特にミサイル防衛は解決可能だ。ただし、彼(プーチン次期大統領)が作戦の時間を与えてくれることが重要だ。これは私の最後の大統領選挙。選挙後はもっと柔軟になれる」と述べていた。
大統領選でオバマ大統領の対抗馬となっている候補者にとっては、プレゼントを与えられたようなものだったかもしれない。
共和党のミット・ロムニー氏は、オバマ大統領の弱腰外交を批判し、ロシアを「アメリカの地政学的な敵」と称した。最新の調査によれば、ロムニー氏はオバマ大統領より10%ほど劣勢となっており、このような雄弁術が不可欠となっているのは明らかだ。
だが、ロムニー氏が「アメリカの敵」としてロシアをあげたことについて、アメリカ国民の多くは、オバマ大統領の核安全保障サミットでの非公式発言よりも問題があると考えているようだ。シカゴ・トリビューン紙とUSニュース紙がアメリカ国民に世論調査を行った結果、約72%の回答者が「ロムニー氏の発言はオバマ大統領のささやきよりも悪影響を与えるものである」と考えていることがわかった。
この密かなささやきのおかげで、アメリカの対話への姿勢を垣間見ることができた。信頼関係をうかがわせる語調が、最近の米ロ関係には欠けていた。明らかなのは、誰も対立を望んでいない、ということだ。
アンドレイ・イリヤシェンコ: ロシア国営ラジオ局「ロシアの声」解説員
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