軌道で作業を行う能力のあるロボット宇宙飛行士「SAR-400」。=PressPhoto撮影
2008年にドミトリー・メドベージェフ大統領と挨拶したロボットの兄が、国際宇宙ステーションに向けて飛び立つ準備をしている。
軌道で作業を行う能力のあるロボット宇宙飛行士「SAR-400」がロシアで開発された。開発者によると、このロボットはオペレーターの動きを完全に模倣し、ネジをしめたり、チェスをしたり、パネル材の亀裂を点検したりと、自分で細かい機械的作業を行うことができる。
今後2年以内に国際宇宙ステーションにロボットを送る他、月、火星、その他の惑星も視野に入れている。だが、宇宙飛行士たちは、ロボットが人間の代わりになることはあり得えないと確信している。 「このロボットは操作されることが基本的特徴となっていて、他のメカニズムの動きをモデルにする必要はありません。人間がある条件下で行う動作と同じ動作をします。つまり、普通に行っている作業をするだけなので、細かく動きを計算する必要がないのです」とセルゲイ・アヴデーエフ宇宙飛行士は述べた。
昨年11月、スターシティの宇宙飛行士訓練センターでSAR-400の実験が行われた際、ロボットを使いながらオペレーターがネジを締めたり、国際宇宙ステーションの地上複製モジュールのハッチを開けたり、宇宙飛行士が宇宙に旅立つ際に使用する訓練施設『出口』で作業をしたりした。このようなロボットにとって、国際宇宙ステーションは中間的なステップにすぎない。「国際宇宙ステーションで宇宙飛行士の手伝いをすることよりも、今後さらに興味深い課題があるので、ステーションに行くこと自体はそのためのテストだと考えています」とアヴデーエフ宇宙飛行士は語る 。
ロシア連邦宇宙局中央機械建造研究所有人飛行プログラムの責任者、オレグ・サプルィキン氏は、SAR-400が20年ぶりのロシア製宇宙ロボットであるとし、次のように語った。 「『ブラン』宇宙船や『ミール』ステーション用としてマニピュレーターが作られていましたが、1台も宇宙に送られることはありませんでした。以来、開発が停止状態となっていました。これは我々にとって、ロボット宇宙飛行士への第一歩なのです」。 国際宇宙ステーションではすでにロボット化された機械を使用しているものの、物を動かすような標準的作業のみである。アメリカが先だって国際宇宙ステーションにロボット宇宙飛行士を送ったが、制御システムに欠陥が発見され、アメリカ・モジュールに「こもりっきり」で、ほとんど使われていない。
日本はAsimoを国際宇宙ステーションに送り、宇宙飛行士の相手をさせ、彼らの精神的負担を軽減させようとしている。ドイツはJustinを宇宙用に開発している。
ロシア連邦宇宙局から受注し、SAR-400を開発した科学製造共同体「アンドロイドナヤ・テフニカ」モスクワ支局のアンドレイ・ノソフ局長は、人間のオペレーターに伝達する能力について、画像や音のみならず、触覚などのあらゆる感覚を伝えることが出来る点で、ロシア製ロボットが西側諸国の開発品とは異なると説明し、次のように続けた。「表面からマニピュレーターのグローブに圧力を伝えるような、特別な技術がつかわれています。オペレーターはロボットを使いながら、表面を触ることができます。この感覚は言葉では表しがたいものです」。
この原則は、他の惑星を研究する際にも使用されている。オペレーターは特別なベストやマニピュレーターを使いながらロボットを操作し、ロボットはカメラ、マイク、その他のセンサーを使いながら、映像をビデオ眼鏡に、音をヘッドフォンに、触覚をグローブに伝達する。「信号の伝達はまだ開発できていません。月までは光速で5秒、火星までは15分ですから。でもこれについても取り組んでいます」。通信が難しくなる遠い場所での作業には、監督者技術のマイクロプログラムが使用される。ロボットが動作のベクトルの指示を受ける、または課題を課せられた際、ロボット自身がその作業についての決定を行う。それ以外にも、ロボットの脳にはさまざまなモードの自動作業プログラムが組み込まれる。
2008年12月、第1回ロシア青年革新会議の場で、メドベージェフ大統領は初めてSAR-400の弟と接した。その際、大統領は革新分野に数十億ルーブルを投じることを約束し、「その価値に見合う成果」を期待していると強調した。
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