空の鍵

トーポリM大陸間弾道ミサイルを偽装する戦略ロケット軍の兵士=ロイター通信/Vostock-Photo撮影

トーポリM大陸間弾道ミサイルを偽装する戦略ロケット軍の兵士=ロイター通信/Vostock-Photo撮影

セルジュコフ国防相は国防省で演説し、12月初めまでにロシアに新規の軍隊、航空宇宙防衛軍が創設されると述べた。同国防相によると、同軍の創設によって、対空・対ミサイル防衛、ミサイル攻撃の予知、宇宙空間監視の可能性を統合することができるという。

セルジュコフ国防相は、「こうしたシステム統合により、大気圏においても宇宙圏においても、極超音速にいたるまでの高速目標物をすべて把握することが可能になる」とし、「12月1日までに航空宇宙防衛軍の創設を完了させる必要がある」と強調した。

セルジュコフ氏は、極超音速目標物について語る際、米国が11月中旬に初めて実験に成功した(それ以前の2回の実験は失敗に終わっている)先進型極超音速兵器(AHW)滑空体を念頭に置いていることを明確に示唆した。米国国防省は、AHW計画の実現過程で得られたデータを、通常兵器型即時全地球攻撃(CPGS)システムの創設に利用する予定だと発表した。このCPGSシステムの一環として、指令を受けてから数時間以内に地球上のあらゆる場所へ攻撃可能な、非核兵器の開発が予定されている。

ロシアが航空宇宙防衛軍創設を急ぎ、まだ存在していない新規の軍隊により、米軍との間に想定される(やはりまだ存在していない)開発競争に挑む用意があると国防相が説明したことは、ロシア軍上層部が神経質になっていることを証明している。軍上層部は、米国と互角という外見を保とうと努め、自国軍隊の再編と生産力衰退の条件下においても、すさまじい勢いで変化する戦争技術に適応しようと努めているのだ。

現在の対空防衛は、最良状態からは程遠い。そのことは、ロシア領空の安全責任者の(あるいは責任者だった)将軍ら自身が語っている。2008年にゼーリン空軍総司令官は、ロシアの対空防衛を危機的状態だと述べた。また、2011年5月にも、ロシアの対空防衛が輝かしい潜在力を持つとはとても言えないことを、コルヌコフ前空軍総司令官は隠そうとしなかった。「わが軍の反撃能力は、戦闘機部隊とミサイル設備による限定的なものだ。ロシア領土を標的とする機動ミサイルについて言えば、防御できるかどうか疑問だ」と同氏は言う。

一方、現在の世界トップレベルの防衛ドクトリンは、宇宙軍規模のものだ。既に地球周辺空間には、多かれ少なかれ軍事プログラムと関わりをもつ衛星が何十機もある。近い将来、宇宙から地上の目標物を撃破できる兵器が現れるだろう。実際、米国が強行しようとしている迎撃ミサイルの大半は、宇宙への配備が予定されているのだ。

こうしたことからも、航空宇宙総合防衛システムの創設は、すでに目下喫緊の課題のように思われる。だが、ロシア指導部の計画によると、航空宇宙防衛軍の設置が最終的に完了するのは、2020年になるという。

プーチン大統領が効果的な航空宇宙防衛軍創設を目指し、2016年を達成目標に特別プログラムを決めたのは2006年だが、所轄官庁間の軋轢の克服だけで5年が過ぎてしまった。つまり、新組織の指揮が誰の手に移るかを決めるのに、5年を要したのだ。現在のところ、航空宇宙防衛軍は空軍の管轄だ。空軍は、将来の航空宇宙防衛軍のすべても、自分の傘下に置きたいと願うだろう。だが、問題はこのシステムの不可欠な主要部分が、ミサイル宇宙防衛だという点だ。上に述べた、新規の航空宇宙防衛軍創設に関するセルジュコフ国防相の声明が、「大気と宇宙」の単独指揮をねらう戦いに終止符を打つというのは、まったく事実ではない。

現在のところ、ロシアで唯一、限定的ながら弾道目標物を撃破する可能性を持っているのは、超長距離地対空ミサイルシステムS-400コンプレックスである。だが、それは配備準備が開始されたばかりで、これを装備するのは全国でもわずか数個の大隊にすぎない。それだけでなく、自前の電算システムやスーパーコンピュータ生産を軌道に乗せる難題が立ちはだかる。それなしには、現代的な航空宇宙防衛システムは機能しないのだ。軍事専門家の見解によれば、モバイル・システムを作ることによって、重要問題を解決できる見込みがあるかもしれない。だが、このシステムは、少しずつ軍隊に導入され始めたばかりで、そこで使用される技術はさらに改良が必要だ。

これらすべての点を考慮すると、新規の航空宇宙防衛軍の創設は、ロシアの航空宇宙の効果的防御システム形成への困難な道の出発点にすぎない、といえそうだ。