国内の大型インフラ・プロジェクトへの投資のために政府の発意に基づいて創設されたロシア直接投資基金(RDIF)は、2016年6月、異例の投資を行った。
同基金は、国際ベンチャー企業のシェルパ・ベンチャーズ、フォーメーションエイト、真格基金とともに、ハイパーループ・ワン・プロジェクトへ投資した。スペースXやテスラ・モーターズの創始者であるイーロン・マスク氏の参加のもとで創出された新たなテクノロジーは、将来、減圧されたチューブ内を時速1200キロ近い特殊なカプセルで貨客を移動させることを可能にする。
2016年5月のネバダでの最初のテストでは、カプセルの時速は、120キロ程度にとどまった。それでも、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、プロジェクトを支持し、ミハイル・ソコロフ運輸相は、極東での貨物輸送のためにテクノロジーを導入することを約束し、中国からロシア経由で欧州へコンテナを一昼夜で運ぶことができるようになると語った。
投資会社「フリーダム・ファイナンス」のロシア証券市場運用管理責任者、ゲオルギー・ヴァシチェンコ氏は、投資の額は、不明であるが、おそらく1億ドル(約105億円)以下であろう、と述べる。
国内企業への投資のために創設されたRDIFが外国企業への投資を行ったことには、疑問の声も上がっており、MFXブローカーのアナリスト、アントン・クラスコ氏は、「私は、RDIFによる外国投資の例を他に知らない」と語る。
RDIFは、プロジェクトへ関心を示す理由として、テクノロジー自体のユニークさを挙げており、同基金のキリル・ドミトリエフ会長は、「ハイパーループ・ワン・プロジェクトへのわれわれの投資は、先端技術がロシア市場へ参入する道を拓くものであり、RDIFは、国際的なパートナーとともに、ロシア国内のみならず中東やアジアの市場においてもプロジェクトを支援していく」と本紙に語った。
同氏は、ハイパーループ・ワンのテクノロジーは、コンテナ輸送に利用されたのちに旅客輸送に利用されるとし、「われわれは、国営鉄道企業『ロシア鉄道』と最初のパイロット・プロジェクトについて協議しており、近くロシアでこのテクノロジーのテストを開始したい考えである」と述べる。
報道写真
2016年6月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ペテルブルグ国際経済フォーラムの枠内でテクノロジーの開発者らと会い、面会後、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、大統領はプロジェクトを支持した、と述べた。
その後、モスクワ市政府は、首都におけるハイパーループ利用の構想を立案することで会社側と合意した。
プロジェクトの実現には、アルカジー・ドヴォルコヴィチ副首相の親友とみなされているジヤヴトジン・マゴメドフ氏の輸送グループ「スムマ」が参加する。同副首相は、再三、輸送分野における現代的テクノロジーの導入を主張しており、先に、早くも2018年のサッカーW杯の開催時には無人運転バスがモスクワの通りを走ることを約束した。当のモスクワ市の代表らは、ハイパーループ・ワン導入の見通しを、とりわけ旅客輸送に関しては、極めて慎重に評価しており、マラート・フスヌリン副市長は、「このテクノロジーについて何かを具体的に語ることは、それが貨物輸送の面では興味深いものであるとはいえ、時期尚早である」とタス通信に語った。
ロシアのミハイル・ソコロフ運輸相は、ハイパーループ・ワンは、中国北部の省からロシア極東の港スラヴャンカへの貨物輸送にとってはアクチュアルであるとし、同氏の評価によれば、プロジェクトの額は、300億~400億ルーブル(約500億円~670億円)となり、同プロジェクトには、「シルクロード」基金を含む中国の投資家らが参入しうる。
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