トナカイは群れになり、その場で回転しながら、かなりのスピードで、そしてみな同時に前進する。この輪舞は、ツンドラでも、そして囲いの中でも見ることができる。
実は、群れがこのような動きをしているのは、トナカイが不安である証拠なのだという。たとえば、野生の動物が近くにいるのを感じたとき、あるいは夏、血を吸う羽虫に咬まれたときなどである。クルクルと回転しながら、トナカイたちはリーダーの行動を待ち、心を落ち着かせる。暑い日には、12時間、疲れ果てるまでノンストップで動きつづけることもある。普通、トナカイは時計回りとは逆の方向に回る。
北方のトナカイというのは、群れを作る動物で、互いの動き、あるいはリーダーの動きを真似る。その方が安全だからである。外側の輪にいるトナカイたちが、輪舞の間に中心に寄ってくることもある。グループの規模は、一番小さいもので20頭から成るという。
トナカイ飼育者らも、トナカイを囲いに追い込んだり、ソリにつけるのに必要なトナカイを捕まえるためにトナカイを舞わせることができる。トナカイのリーダーを数頭、輪になるよう歩かせると、残りのトナカイもリーダーの後について同じように歩くのだそうだ。