ヤマル半島のツンドラに暮らす先住民族(ネネツ人、セリクプ人、ハンティ人など)は伝統的にトナカイ飼育を行なっている。だが、トナカイがのんびりと雪に覆われた草原の草を食んでいるだけでなく、自動車顔負けの速さでレースをしているなど、想像できるだろうか。このスプリンターたちはヤマル半島で毎年行われる変わったレースに参加している。
毎年春、ヤマロ・ネネツ自治管区は最大の祭りの日がやって来る。「トナカイ飼いの日」だ。遊牧民が自分たちの伝統と料理、競技を携えてツンドラから街にやって来て、都市住民と出会う。最も見応えのある競技がトナカイ橇レースだ。北極圏唯一の都市サレハルドで2022年3月末に行われたトナカイ橇レースの様子を紹介しよう。
まず、トナカイ飼いは群れで最も速いトナカイたちを捕まえ(これ自体が大冒険だ!)、彼らを適切な順番に橇につながなければならない。それから調教を始める。トナカイ飼いの日のレースは単なるショーのようだが、実際はかなりきつい挑戦だ。
スタート前、「トナカイ飼いの日」の観客はトナカイ橇のパレードを楽しむ。北方民族が最高のランナーたちの装飾を披露する。そして一連のレースが始まる。
橇を引くトナカイは3~6頭だ。トナカイ橇の御者(「カユール」)は「ホレイ」と呼ばれる長さ3メートルの専用の棒を使って橇を操り、口笛でトナカイを誘導する。
レースの距離はわずか600メートルだが、スタート地点の100メートル手前から助走を始め、ゴールを遥か越えた所でようやく停止する。トナカイが停止するためにはかなりの距離が必要で、観客は離れて見ていなければならない。突進するトナカイは行く手にあるものにほとんど気付かないからだ。
トナカイたちは時速60キロメートルまで加速し得る。まるで車だ! 橇を操るには、トナカイ飼いは多くの経験が必要だ。
カユールにとっては観客も厄介だ。トナカイが騒がしい群衆に驚いてコースを外れかねないからだ。
2022年には計77チームが参加した。うち21チームは女性が御者だった。トナカイ橇レースは女性も男性も参加できる唯一の遊牧民スポーツだ。
アレクサンドル・サリンデルが出場2年目にして優勝し、スノーモービルを手に入れた。女性ではニーナ・ラプタンデルが優勝し、新しい橇を贈られた。
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