世界で最も寒い国ロシア、年間平均気温は零下5度。
ロシアは広大な国土を有しており、地方によってすべてが違う。黒海沿岸やカフカス地方では雪はめったに降らないが、他の地方では夏であることにさえ気付かないような場所もある。その日は仕事をしていたから、気づかなかったよというジョークがあるほどである。では、ロシアで冬服を一番長く着なくてはいけないところはどこなのだろう?
北極海の多くの島は行政的には西部ムルマンスク州から東部チュクチ自治管区までのロシアの異なる州に属している。これらの島々は、ノヴァヤ・ゼムリャ諸島、フランツ・ヨシフ諸島、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島(北島)、ノヴォシビルスク諸島(新シベリア諸島)などがある。これらの島々は、おそらくロシアでもっとも冬が長い地域で、気温は7月や8月にようやく零度を越す程度である。そしてそれもわずか摂氏2-3度になるだけである。
フランツ・ヨシフ諸島
Gavriil Grigorov/TASS冬がもっとも長いのはフランツ・ヨシフ諸島で、8月末から6月末まで続く。島は、ほとんど1年を通じて雪に覆われ、8月末からは吹雪が続き、長い極夜が始まる。
冬の気温は零下40度より下がることはめったにないが、冷たい風が吹くので島に滞在するのはきわめて困難になる。極域気候と呼ばれるものである。そこに永住している人は多くはいないが、ロシア極地国立公園やウランゲリ島自然保護区といった国立公園で、観光客を魅きつけており、科学調査拠点、軍事基地もおかれている。
ヤクーチア(ヤクート・サハ共和国)はロシア最大、かつもっとも寒い地方である。大きさはインドとほぼ同じだが、人口は100万人以下。その3分の2は首都であるヤクーツクに住んでおり、残りは広大な共和国中の町や村に散らばって住んでいる。そしてすべての人が厳しい気候条件の中で暮らしている。
サハ共和国南部にある鉱山都市ネリュングリ
Andrey Sorokin/Sputnik8月になると、寒くなり始め、初雪も降る。そして9月末までに冬支度をしなければならない。それ以降は5月中旬まで気温が零度を超えることはほぼない。しかし同時に、面白いことに、ヤクーチアには極端な寒暖差がある。たとえば、首都ヤクーツクの冬の平均気温は零下35度であるが、夏の平均気温は18度にもなる(夏に30度まであがることもあり、冬は零下50度まで下がることもしばしばある)。ヤクーチアの融けることのない氷河近くには、信じられないほど素晴らしいリクレーション・エリアがある。地元の人たちは夏にここを訪れて時には写真を撮ったりして楽しむ。
冬にもっとも気温が下がるのはオイミャコンとヴェルホヤンスクで、零下70度まで下がった記録がある。零下45度はここでは平均的な気温である。
レナ川、サハ共和国
Gavril Starostin/TASS「地元の人々は、寒いからと言って家に引きこもることはまったくない」と綴っているのは、幼少期をヤクーチアで過ごしたブロガー、エカテェリーナ・ボリソワさん。「外には常に多くの人がいて、夜になると氷の滑り台に長い行列ができる。若者から高齢者まで誰もが滑ろうとする。そして体が凍えないようにするのです」。
北シベリアのヤマロ・ネネツ自治管区はヤクーチアよりも少し暖かいが、冬の長さは変わらない。冬が一番長いのは、この地方の北部で9月中旬から5月末まで続く(6月までは気温が零度以上になることはない)。
ヤマルの北極圏には、冬の嵐、霧、そして長い極夜が頻繁に訪れるが、気温は「わずか」零下25度〜30度になる程度。住んでいる人はほとんどおらず、大部分はガス田の労働者でサベタのような交代勤務者用集落で暮らしている。
ヤマロ・ネネツ自治管区
Lev Fedoseev/TASS「ここの強風はヘルメットを頭から飛ばし、黄色いベストを体から剥ぎ取る」。サベタを旅した写真家アンドレイ・スタロスチンさんは思い起こす。「最初驚いたことは、すべての階段に、それがたとえ2〜3段であっても手すりがついていることです。しかし、風が吹き始めると、これが絶対に必要なものであることがすぐにわかるのです」。
ほとんどの人が住むのはヤマル半島の南部。この地方の行政の中心、サレハルド市は北極圏上にある。ここの夏はとても短く、気温も5月の零下1度から夏には摂氏10度まであがる程度などで、ほとんど気付かないほどである。そしてその後、10月には再び氷点下に戻る。しかし気温は零下20度ほどなので全般的にそれほど厳しい冬ではない。暑くなる日はほぼないが、サレハルドには世界最北のビーチがある!!
サレハルド
Andrey Trachev/TASSエニセイ川の流氷、ドゥディンカ市
Anton Denisov/Sputnikタイムィル半島やノリリスク市、ドゥディンカ市があるクラスノヤルスク地方北部では、夏の中頃になってようやく雪が消え、気温は6月から9月の間だけプラスになる。7月でさえ13度前後であることが多い(たまには暑くなるときもあるが)。興味深いことに、春になるとエニセイ川に流氷が現れる。これを見るために地元や他州からも人々がやってくる。
それを実際に見た人は、「見渡す限り壮観な眺めで、一見の価値がある。1メートルや2メートルの長さの流氷が動き始め、それぞれが重なりあって岸辺に近づいてくる。同時にエニセイ川の水位は18メートルも上昇する、これは、5階建てのビルと同じくらいの高さだ」と書いている。
モスクワ(及び他のヨーロッパ・ロシア地域)では、季節の変化がある。夏には暑くなり、秋に雨が降り、冬には雪が舞うが極寒になるわけではない(通常だいたい零下10度ほど)。そして春になるとすべてが融ける。しかし、冬にすごく暖かい日が続き、その後冷たい雨が降ったり、6月なのに雪が降って驚かされたりする。
モスクワ
Sofia Sandurskaya/Moskva Agencyサンクトペテルブルクやカレリア地方では、モスクワよりは少し寒く、夏は短い。冬の訪れも早く、通常11月末である。それに加えて、フィンランド湾から吹く風によって実際は零下10度なのに体感温度は零下30度にまでなる。
サンクトペテルブルク
Aleksandr Galperin/Sputnikウラル地方やシベリアでは、10月末から4月末まで冬が続く。逆に冬がもっとも短いのは黒海沿岸。たとえば、アナパやソチなどのリゾート地では、冬は1月のわずか2〜3週間しかなく、気温も摂氏6度〜9度までしか下がらない。
これで雪を本当に見たいと思うのなら、一年を通じてどこに行けばよいのか分かっただろう。
ソチ
Dmitry Feoktistov/TASSロシア・ビヨンドのニュースレター
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