モスクワより古い
プスコフは903年に年代記に現れた。モスクワが登場する一世紀前だ。長い歴史の中で、この街は幾多の動乱を経験してきた。
エストニア・ラトビア国境に程近いプスコフは、交易の中心地であり、古代ルーシの重要な防衛拠点だった。他の古代都市と同じく、プスコフは18世紀初めサンクトペテルブルクが築かれたことで強大な地位と戦略的重要性とを失った。
第二次世界大戦中、プスコフは3年間ナチスに占領された。歴史的な建造物は破壊され、博物館の宝物は掠奪された。
現在、プスコフは散歩や食事に相応しい現代的な街になっている。大きな堤防や古い貴族の邸宅のレストランを訪れれば、忘れられない思い出になる。現地の文化に触れて後悔することはない。
印象的なクレムリン、過去の栄光の証し
最初に訪れるべきは街のクレムリン、またの名をプスコフ・クロムだ。『ゲーム・オブ・スローンズ』、特にウィンターフェルの場面の撮影にうってつけの場所だ。市内最古の場所であるクレムリンは、プスコヴァ川とヴェリーカヤ川の実に絵になる砂嘴の高台にある。
立地や環境に加えて最も印象的な特徴が、最大で高さ8㍍、幅6㍍の城壁だ。壁の上の通路は歩く(そして感動的な川の写真を撮る)ことができ、壁の内部にレストランもある。
クレムリン内の必見スポットは中世の遺跡だ。14世紀、プスコフは古代ルーシの独立共和国の一つであり、ヴェーチェと呼ばれた集会場があった。
要塞内で最も魅力的な白い建物は、17世紀建立の至聖三者大聖堂だ。ここには、なんとロシアで最も高く最も大きいイコノスタシスがある。
激動の時代を目撃してきた古代の教会群
文字通りあらゆる所に古代の教会がある。実際、数が多すぎてすべてを訪れるのは不可能だ。写真を撮って、どの教会が何という名称だったかを覚えておくだけで疲れてしまう。
プスコフの古代の大聖堂、修道院、建築群のうち10箇所がユネスコの世界遺産に登録されている。その中で最古のものは12世紀に遡るミロシュスキー修道院だ。
世界遺産に登録されている教会の中で他に訪れるべきは、14世紀建立の鐘楼を持つ天使首ミハイル教会と15世紀建立の丘の聖ワシリー教会だ。
プスコフの西にイズボルスクの町と要塞がある。13世紀、この町は何度もリヴォニア騎士団の攻撃を受けた。だがより興味深いのは、この地が神聖と見なされていることだ。城壁からそう遠くないところに、丘の脇から泉が湧き出る場所がある。正教徒はこの水が神聖だと信じており、水を汲むために歩み寄る。
もう一つの必見スポットが、アレクサンドル・ネフスキーと氷上の戦いの記念碑だ。氷上の戦いは、ロシアとエストニアの国境にあるペイプス湖(ロシア名チュード湖)で起こった戦闘である。公アレクサンドル・ネフスキーがここでリヴォニア騎士団を破り、多くの騎士が凍った湖の底に沈んだ。
映画『アレクサンドル・ネフスキー』で、ソ連の伝説的な映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインは戦いを再現したが、もちろん本物の氷ではなくセットの上だった。
ロシア文学が生まれたプーシキン丘
プスコフから約150キロメートル離れたところに、地上の楽園がある。3つの壮大な屋敷とその公園、ロシアの牧歌的な田園風景を見ることができる。
これらの場所は偉大な詩人アレクサンドル・プーシキンの人生と関係がある。ミハイロフスコエ屋敷は彼の一族のもので、ペトロフスコエ屋敷とトリゴルスコエ屋敷は彼の親戚と友人が所有していた。1824年、彼はここへ流刑となり、2年間で最高の詩と作品を生み出した。