極東ではほぼすべての人が自動車を所有している。しかもそのほとんどすべてが右ハンドルである。その理由は地理的に日本に近いこと。ロシア人が日本の安い自動車を貨物船に乗せて、極東に運んでくるのである。ロシアのほとんどの地域の人が乗っている左ハンドルの車を数千キロも運ぶのにはお金がかかるため、地元の人々はかなり以前から隣国のメーカーの自動車に慣れてしまっている。とくに人気があるのがオフロードカー。郊外へドライブするのにも乗りやすく、道路がない海辺に釣りに行くのにも便利だからだ。
今から20年前、ウラジオストクでは皆が自動車を売っていた。現在は、税金が引き上げられたため、自動車の販売はあまり儲からなくなったが、住民たちは新たな現実に適応しつつある。「グリーン・コーナー」という有名な自動車市場では、自動車だけでなく、自転車や日本のコーヒーなども売られており、密輸のアルコールなどの品も堂々とボンネットに並べられている。
極東では物価が高いが、中国人から買うとなんでも安い。中国とは国境が近いため、ここには中国人がたくさんいる。たとえばロシアの美容院では女性のカットが1,000ルーブル(およそ1,650円)だが、中国人の美容院では300ルーブル(およそ500円)、ロシアのネイルサロンではマニュキュアが1,500ルーブル(およそ2,500円)だが、中国人のネイルサロンだと500ルーブル(およそ770円)といった具合で、なんでも数分の1で済む。
極東の人々は、韓国、日本、中国の製品を好んで買う。韓国コスメ、日本の家庭用化学品、中国製の靴など、彼らはロシアの市場より、アジアの市場に大きく依存している。そしてウイルスの蔓延など不可抗力事態が発生したときには、アジアの商品が消えるため、極東の人々は窮状に陥る。
公園はモスクワっ子やその他の息苦しい大都市の住民のために残しておこう。極東には最高の自然があるため、公園の平らな道を散歩するなんて面白くないのである。そんなことをするくらいなら、海やビーチを訪れたり、列車や船で島や入江、灯台、あるいは火山に行った方がいい。
極東は素晴らしいその自然によって、希少でフォトジェニックな地形をしている。しかしそのような条件下で生活をするのは試練でもある。ここでは多くの人々が巨大な丘に住んでいる。建物の9階にいて、窓から、隣の住宅の2階が見えるなどというのはまったく普通のことである。しかし冬になり、すべてが雪と氷に覆われるころには、職場から家への道は何時間もかかるクエストになる。
都市も村も自然の中に位置しているため、クマが訪ねてくることもある。毎年、地元では、クマが人々の住む場所に現れたり、家畜を襲ったり、街の中、自動車が通るところに走り出てきたというニュース が伝えられている。ここは、ロシアに関するもっとも有名なステレオタイプがただイメージではなく、真実である場所だ。ちなみにカムチャツカでは人口に対するクマの生息数が15人に1頭となっていて、ロシアで1位となっている。どのようにしてクマに遭遇したのかは、事件の数だけストーリーがある。
ロシアの他の地域の人々にとっての珍味は、極東の人々にとっても高価な珍味である。しかしながら、もし他の地域の人々がそれらの珍味を1年に1度や新年だけでなく、それよりは度々口にする。
イクラや有名なカムチャツカのカニはここで収穫されていることから、値段はモスクワの半分くらいとなっている。地元の市場で目にすることができるバケツに入った大量のイクラには驚かされる。とはいえ、ここではイクラが安くて、極東の人々はパンに乗せて毎日朝食に食べているというのは神話である。ベニザケのイクラの値段は1キロ、2,900ルーブル(およそ4,700円)くらいである。
ヨーロッパはあまりに遠く、航空券代は(もちろんモスクワかウラルで乗り換えが必要)数ヶ月分の給料に等しい。そんなわけで、極東の人々が一生に1度しかヨーロッパに行ったことがないとしてもそれは普通のことである。休暇には、アムール川のすぐ向こうにあるアジアに行くことが多い。国境を接している都市ではビザなし渡航が可能となっている。
極東では希望する者全員に無償で数ヘクタールの土地が分配される。もっともその土地は、果てしないタイガの中、交通機関もインフラもない場所なのだが、それでも手づかずの自然と美しい山々があり、その光景は素晴らしい。実際はすべてが側から見たようなものではないかもしれないが、極東の人々はその神話を吹き飛ばそうとはしていないようだ。
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